2009/03/19(木)鏡の撮影はアオリを使う

 映り込みのある被写体で、やっかいなのは鏡です。四隅を直角にするために正面から撮ると、カメラがバッチリ映ってしまいます。

 コマーシャルの商品撮影では、アオリのできるカメラを使います。
 カメラが映らないよう正面横にセットし、レンズとフィルムの位置を平行移動させます。「スライド」といいます。
 鏡とフィルム面を平行にするのがミソです。画面の縁のほうに見えていた鏡が、スライドすることで真正面にきます。不思議ですね。

 まともに正面から撮影したときと違うのは、鏡のフレームが厚みのある状態で写ることです。少し横にずれた位置から見ているからです。ずらす位置を右にするか左にするかで、見えているフレームの側面が左右に変わります。それによってメインライトの位置をどちらにするか決めます。
 
 斜めに構えて、台形になった鏡をアオリで矯正する方法もあります。「スイング」です。
 アオリによる形の矯正(あるいは誇張)は、レンズ側でなくてフィルム側をスイングさせて行います。ピント面を鏡の面に合わせるために、レンズ側もスイングさせる必要があるので、複雑なアオリ操作が必要です。
 スライドのほうが簡単ですね。

 デジタル式でアオリのできるカメラは、一部の業務用だけです。デジタル一眼レフなら、斜めから撮影して、あとで画像処理で形を矯正するのが、最も簡単な方法です。
 鏡の部分に白ケント紙を貼って正面から撮影し、画像処理でその部分を鏡と入れ替えるやり方もありますが・・・

 写真に写った鏡の部分は、別の情景を映り込ませたものです。
 まず、大きな白壁を用意します。その壁をライティングして映り込ませるわけです。鏡のフレームよりも明るく照明された部分は白く、暗めに照明された部分はグレーに写ります。

2009/03/18(水)飲み物の撮影技術2

 ジュースの缶から中身をグラスに注ぐシーンを撮影するときは、缶自体を加工します。何本も用意して実際に注ぐよりも、イメージどおりのシーンを効率よく撮影できます。

 空の缶の底に穴を開けて、チューブをつなぎます。
 ラベルの向きを考えて、プルキャップの位置がよい缶を選びます。缶を斜めに浮かせた状態にセットし、底の隅に穴を開けます。チューブをつないだ部分をトリミングして画面の外にすれば、宙に浮いた缶からジュースが注がれるシーンが体現できます。上をトリミングするか、横を切るかで、穴を開ける位置が変わります。

 缶を固定する方法は色々あります。一番簡単なのは、後ろの壁から棒を出して缶を固定する方法です。支える棒が缶の後ろに隠れるので、宙に浮いた感じを演出できます。
 チューブに沿って斜め上から棒を出し、後でトリミングしても構いません。背景との距離を取りたい場合は、このやり方がお奨めです。チューブを棒に固定できるので便利です。

 細いチューブでは、ジュースがチョロチョロしか出ません。チューブの太さをどうするかがミソです。チューブの先端にロートを取り付けて注ぎ込みますが、空気抜きの穴を開けるかどうかで、ジュースの出方が変わります。
 まるで科学実験ですね。一度データを握れば、次回からは加工が楽になります。

 動きのある被写体では、スローシャッターは使えません。タングステン照明ではなく、ストロボを使います。
 ミルクの「王冠」を撮るのと違って、何万分の1秒である必要はありません。閃光時間が比較的遅めの業務用ストロボでも実用できます。

 ライティングは、ジュースの透明感を出すために、後方からの照明が有効です。バックグラウンドライトを入れて、背景を白抜きにするのが一般的な方法ですが、グラスが背景に溶け込まないように注意します。
 グラスの輪郭を出すには、黒ケント紙を両サイドに置いて映り込ませるのがよいでしょう。

2009/03/17(火)飲み物の撮影技術

 長時間に及ぶ撮影では、本物の氷だと融けてしまいます。
 ジュースに入れる氷は、アクリルかガラス製のものを使います。撮影用にいろいろな形の「氷」が出ています。お値段はしっかりしていますが、一生ものです。融けてなくなることはありません。

 本物の氷と違うところは融けないことですが、それ以外に決定的に違うことがあります。水に浮かずに沈むことです。偽物の氷は、グラスの底から上のほうまでたっぷり入れないと、沈んで見えるという欠点があります。
 いかに本物の氷のように見せるか・・・入れ方にも工夫が必要です。

 もうひとつ、「氷」に気泡をつけないようにすることです。本物の氷は気泡がついてもすぐに消えます。氷自体が融けるからです。偽物の氷についた気泡は消えません。炭酸飲料は手強い相手です。

 ジュースなどの飲み物は、実物のままだと写りが悪いことがあります。透明感が目で見た感じと写真とで異なるからです。
 水で薄めて視覚に近づけます。赤ワインなんかも薄めたほうが実感が湧きます。コーヒーは薄めてアメリカンにするよりも、醤油を薄めたほうが実物に近い表現が得られます。
 撮影に使った飲み物は、あとで飲めませんね。

 飲み物の入ったグラスや瓶の後ろに鏡やレフ板を仕込んで、透明感を出す方法もあります。栓がしてある新品のワインを薄めるわけにはいきません。後ろから光を当てて透明感を出すのが、簡単で経済的な方法です。

 デジタル時代になって、あとから画像処理で飲み物を変えることができるようになりました。オレンジジュースをグレープジュースにするわけです。
 喫茶店のメニュー程度なら、この方法を使えば撮影カット数が省略できます。
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