2012/02/29(水)針穴写真機を自作する

 きりのいいところで次の話題に移ろうと思ったら、今年は閏年で2月は 29 日までありました。4年に一度の誕生日を祝っている人もいることでしょう。もう1日、ピンホールの話題にお付き合い願います。

 デジカメの高感度化で、針穴写真が見直されるのではないかとの予感がする一方で、長時間露光による針穴写真独特の味がなくなるのでは?との危惧もあります。動くものをすべて消し去るシュールな画像は、ウジェーヌ・アッジェの世界に通じるものがあります。(アッジェはフランスの写真家で、その作品は「死体なき殺人現場」と評された)

 どうしても長時間露光したい人は、ISO 感度の設定を上げずにおけば済むことです。高感度化で、撮影領域が広がったと考えればいいでしょう。ピント(焦点)の概念がない独特のパンフォーカスっぽい映像は、デジカメのエフェクト機能では出せない味があります。

 ピンホールによる像の投影は、レンズとは原理がまったく異なります。撮像面の任意の点から穴を通して見える世界は、直線的な延長線上の1点でしかありません。画面の隅から見える世界は、やはり穴の向こうにある対角線上の1点となります。撮像センサーにほぼ直角に光が当たるのは、画面の中央部分だけに限られます。

 これはデジタル式の撮像センサーにとって、かなり厳しい条件です。ピンホールの位置を撮像面から離せば緩和されますが、写角が狭くなる上に、F 値がさらに暗くなります。穴を大きくして明るさを稼げば、そのぶん画像が甘くなってしまいます。
 針穴の目安は、135SLR のフランジバックで 0.2~0.3mm くらいです。ミラーレス機だと 0.2mm 以下になります。それと、穴をあけた部分の厚みは限りなく薄いのが理想です。

 ピンホールカメラは、一度自分の手で作ってみるといいでしょう。自作といってもボディーキャップに穴をあけるだけです。たかが穴とは言いながら、このノウハウが難しいのですが、まず大きな穴をあけておき、そこにピンホールをあけたパーツ(例えばアルミ箔)を貼り付ける方法なら、何度でもやり直しができます。

 ベローズを使えばズームレンズになりそうですが、撮像面までの距離が変わると、適正な穴の大きさも変わります。穴の大きさが異なるパーツをいくつか用意しておいて、その都度取り替えることになります。

2012/02/28(火)ピンホール画像を手持ちで撮る

 写真用品メーカーのケンコーから、「ピンホールレンズ 02」という名前で、針穴写真用のパーツが出ています。レンズとは名ばかりで、小さな針穴があいたボディーキャップです。42mm 径 1mm ピッチのねじ込み式だから、M42 マウントですね。
 本体が 4,600 円。カメラマウント P が別途要るそうで、ニコン用とキヤノン EOS 用が各 2,500 円です。M42 アダプターがあれば不要ですが、この辺の言い回しというか表示が曖昧なのが、ちょっと不親切な気がします。(このパーツを買う人に説明は不要かも)

 「レンズ」のスペックは、50mm F250 となっています。ピンホールに焦点という概念はないはずですが、135SLR のボディーに装着したときの写角が 50mm 相当ということでしょう。フランジバックから考えれば、そんなもんです。
 開放絞り値が F250 ということは、穴の開口径は 0.2mm で、商品名末尾の「02」と符合します。F250 と言われてもピン!ときませんが、一般的な大判レンズの最小絞り値 F64 をさらに4段絞った値とほぼ同じです。

 前回、高感度対応のデジカメなら手持ちで撮れそうだと言いました。果してそうでしょうか? 数値が出揃ってきたところで、検証してみたいと思います。
 まず、日昼晴天下の露出を ISO100 で 1/250 秒 F11 と仮定します。焦点距離 50mm のレンズで手ブレせずに撮れるシャッター速度を 1/60 とすると、絞りは F22 になります。
 そこから F250 までは、絞りのステップで7段です。ISO 12800 まで感度を上げれば、1/60 秒 F250 で撮影できる計算です。(やりましたね)

 1万を超える ISO 感度を何に使う?と思案していましたが、いつもピーカンとは限らないから、針穴写真を手持ちで撮るには、もう一桁上の高感度が欲しいくらいです。
 学生時代は、トライ X を ASA いくつまで増感できるかを仲間内で競っていました。いまでいう ISO800 まではコンスタントに増感できましたが、ISO1600 以上にするのは至難のワザでした。針穴をあけたボディーキャップの出番がないわけです。

2012/02/27(月)デジカメで針穴写真

 高校を出るまで住んでいた実家は、南側の雨戸が戸板で、節の抜けた穴から差し込む光が、すりガラスに外の景色を投影していました。朝目覚めたときに、すりガラスのあちこちに、逆さまになった景色が映る様は、幼心に不思議に感じたものです。

 投影像は光の直進性によるものです。光が小さな穴を通るとき、レンズがなくても像を投影する仕組を利用して作られたのが、初期のカメラ・オブスクラでした。遠近感が自然で、画家が写生のときに使っていたと言われています。
 光や音など波の性質があるものは、小さい穴を通るとき回り込む性質があります。回折現象です。ピンホールの画像が甘いのは、この性質も影響していると考えられます。

 ピンホールカメラ(針穴写真機)には、レンズと違って焦点という概念はありません。ピント面がないのです。穴を大きくすれば明るくなる代わりに像は甘くなります。穴を小さくすれば暗くなって像がはっきりしてきますが、お世辞にもシャープな画像とは言えないレベルです。
 穴の大きさと投影面までの距離には、一定の法則があって、距離が近くなるほどピンホールの直径を小さくしないと、像が甘くなります。

 ミラーレス機の登場で、パンケーキレンズがもてはやされていますが、究極のパンケーキはピンホールではないかと思います。ボディーキャップに針穴をあければ、画像が写ります。
 昔、PENTAX SP のボディーキャップに針穴をあけて、使っていました。レンズがない状態でもファインダーを覗けば景色が見えます。
 135 SLR のフランジバックだと、穴の直径は 0.3mm 以下にしないとボケボケになります。ボディーキャップのセンターをドリルで削って薄くし、最後に針で突いて小さな穴をあけます。この最後のプチッ!がキモでした。

 当時のフィルム感度では、手持ちの撮影は無理でした。最近の高感度化したデジカメなら、手持ちでも何とか撮れそうです。画質を云々するレベルの画像ではないから、思いっきり最高感度でいけばいいでしょう。
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