2017/06/29(木)ニンニクが体にいいってホント?

 世の中サプリメントブームで、体にいいとか健康に役立つとか、いろんな情報が蔓延しています。ニンニクの効用を調べようとググッていると、やたらと黒にんにくの通販サイトがヒットします。ホントは黒にんにくじゃなくて、生のニンニクの効用を調べたいんだけどね。

 普通のニンニクと黒にんにくは、元は同じでも全くの別物です。カカオマスがチョコレートになるのと同じメイラード反応で、元々あったニンニクの主成分(アリインやアリシン)がすべてほかのポリフェノールやアミノ酸、糖分などに変わってしまっているからです。黒にんにくと豚肉を一緒に調理してもビタミン B1 の誘導体(アリチアミン)の生成は期待できません。アリチアミンになる元のアリシンがもうないからです。

 それでも黒にんにくの販売元で、こうした事情を詳しく説明することは稀です。ニンニクはスタミナ源だという一般消費者が持つイメージを壊したくないとの思惑があるからでしょう。黒にんにくに含まれる S-アリルシステインなどの抗酸化成分は、健康維持に役立つかもしれません。でもアリシンの抗菌作用とかビタミン B1 の誘導体を作る効果は期待薄です。黒にんにくは生のニンニクとは全く別の食品なのです。

 それにも関わらず黒にんにくの販売サイトの中には、ジャンボニンニクは西洋ネギの仲間でニンニクとは別種だと強調する傾向が見受けられます。一般のニンニクと別物なのは、ジャンボニンニクじゃなくて黒にんにくの方なのに、そんなことはお構いなしです。個人的な見解ですが、ジャンボニンニクよりも黒にんにくの方がニンニクからは遠い存在だと思います。

 生のニンニクは、調理法に注意が必要です。元々の主成分(アイリン)は無味無臭で、切ったりすりおろしたり刺激を与えることで、酵素(アリイナーゼ)の働きでアリシンに変わります。アリシンは不安定な物質で、揮発性の含硫物質(硫化アリル)などに変化しニンニク独特の臭いを発します。これも時間の経過とともに別の物質に変化します。

 注意したい調理法は、生のニンニクを加工せずにそのまま油で素揚げなどして熱を加えることです。80 度以上になると酵素が分解して、アリインはアリシンに変化できません。アリシンができなければ臭いの元になる硫化アリルが発生せずに無臭化されますが、体内のビタミン B6 が酵素の代わりに作用して消化中にアリシンに変わります。食後 12 時間から 18 時間後に体中から硫化アリルが発散してニンニク臭にまみれることになります。(もう最悪!)

 生ニンニクは摂取量にも注意が必要です。大量摂取は、胃を荒らしたり、腸内の善玉菌まで殺して特定のビタミンが作れなくなったり、さまざまな障害を起こす危険性があります。アリシンの殺菌能力はかなりのもんだそうです。O-157 にも効く…なんて喜んでいる場合じゃありませんね。

 生のニンニクは確かに健康に役立つ食品の頂点に位置しますが、摂取方法を間違えると健康障害を引き起こす可能性もあります。薬効が強いからでしょう。我が家では生ニンニクのほかに、アホエンオイル、琥珀ニンニク、黒にんにくなどに加工して、必要に応じて使い分けるようにしています。

 その点、ジャンボニンニク(無臭ニンニク)は、アリイン由来のアリシンの含有量が少ないのか、スタミナ食品としての効果は期待薄な反面、健康障害を引き起こす心配はほとんどありません。ビタミン B1 の誘導体アリチアミンができにくい代わりに、肝臓に効果があるとされるサポニンが多く含まれています。どちらがいいとかじゃなくて、要は使い分けですね。
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