2008/02/14(木)集合写真 その5

 集合写真は人数が多くなるほど難しくなります。横に広がれば被写体との距離をとらなければなりません。後ろに下がれない場所なら、超広角レンズが必要です。前後何列かに並ばせると、被写界深度を深くするために絞り込む必要があります。屋内なら、ストロボでの撮影で露出不足になる可能性が高くなります。後ろのひとの顔がきちんと見えているかも注意しなければなりません。

 写真屋さんが出張して撮影する集合写真は、普通はせいぜい50名までです。学校のクラス写真が一番多いですから・・・。機材もそれに合わせて用意しています。雛壇や椅子なんかも自前で用意するところが多いですね。
 たまに、企業の記念行事やパーティーなどで、百名を超える集合写真を頼まれることがあります。使う機材が替わります。フィルムのフォーマットはロクキュー判(6x9cm)からシノゴ判(4x5インチ)になり、ストロボはグリップタイプから電源部別タイプになるはずです。「写し」が少ない写真屋さんだと機材の用意がないので、クラス写真と同じ撮り方をしますが、結果の差は歴然です。

 アマチュアが集合写真を撮る場合は、人数を少なくして撮ると失敗の確率が低くなります。結婚式なら、新郎側と新婦側の親族を分けて撮るとか、友人は別に撮るなどすれば、セッティングが楽になります。雛壇なしで50人も並ばれたら、プロでもきちんと撮れません。

 寺社仏閣に行くと、雛壇のそばにベレー帽を被ったおじさんがよくいます。営業権を持っている地元の写真屋さんです。観光バスの客などを相手に商売していますが、別の副収入があります。修学旅行で訪れた学校には専属の写真屋さんが付いているので、同業者から雛壇の使用料を取るわけです。業界では「シャッター料」というみたいですね。
 雛壇を使わなければ、お金は要りません。人数の少ないクラスなら、雛壇なしでも撮影できますから、地元の写真屋さんも少子化で大変ですね。

2008/02/13(水)集合写真 その4

 身内の結婚式のときの話です。そこの一番上の娘が今年成人式だったので、もう20年以上も前のことです。都内の教会で挙式しました。当時は、いまみたいにあちこちに挙式専門のチャペルなどなかったので、本物の教会で式を挙げました。列席者で賛美歌を歌えるひとは、いなかったですね。

 集合写真は、教会の中でした。地元の写真屋さんらしい年配のおじさんが、撮影を担当しました。カメラはマミヤプレスでした。写真屋さんが集合写真によく使うタイプです。「引き」があまりなかったので、レンズは65mmだと思います。6×9判ですから、かなりワイドなレンズです。20年以上前といっても、もうすでに珍しくなったフラッシュバルブを使っていました。マグネシウム入りの球です。「プリントごっこ」を使ったことのあるひとなら知ってますよね。
 よく見るとシンクロコードがカメラに差さっていません。教えてあげようかナ、と思いましたが、スカでもフィルム1枚ダメになるだけです。「ハイお撮りします、動かないでください」と言ってシャッターを切りました。ちゃんと光るではありませんか! (余計なことを言わなくてよかった…)

 ハンドシンクロという技法です。スローシャッターにしておいて、シャッターを切ってからフラッシュバルブを手動で発火させるやり方です。(よい子はマネをしないでください)
 多分、その写真屋さんは、そこの教会で撮り慣れているのでしょう。あとでもらった集合写真は、後ろに見事なステンドグラスが神々しく輝いてました。教会内部も写っていますが、同じ明るさではステンドグラスが壁画みたいになってしまいます。壁よりも明るく描写することでステンドグラスの透明感を出したわけです。ひとつ間違うとステンドグラスの色が抜けてしまいます。いかにもプロ!という仕事でしたね。

 こういう写真は、場数を踏んだひとにしか撮れません。いくらウデ自慢のアマチュアでも一発で決めるのは無理でしょう。フラッシュバルブと違ってストロボはシャッター速度に左右されませんから、自然光との比率計算は単純ですが、スローシンクロは結構難しいテクニックです。カメラをオートで使っているうちは、こうしたテクニックとは無縁です。

2008/02/12(火)集合写真 その3

 屋外での集合写真は、ストロボなしでも撮影可能です。しかし、写真屋さんは大抵ストロボを使っています。理由はいろいろありますが、日中の屋外でもストロボを併用したほうが写りがよいからです。
 フィルムでの撮影は、太陽の光が当たっていないと色が濁ります。日陰で撮ると、光の当たり具合はよいのですが、青みがかった発色になります。
 直射光が当たっている場合は、発色はよいのですが、顔に影が出て見苦しくなります。ストロボを使うことで、影を打ち消す効果が出ます。これはデジタルでも同じことが言えます。

 フォーカルプレーンシャッターのカメラは、同調速度という制約があって、あまり早いシャッター速度だとストロボの光が画面全体に当たりません。シャッター幕が開ききる前に後幕が閉まりかけてしまうからです。
 同調速度はカメラによって違いますが、1/125秒以下なら大丈夫です。ストロボが不発でも自然光だけで写るように露出をセットします。ISO感度を落として、F11程度まで絞り込んでも同調速度を超えるようなら、ストロボの使用を諦めます。ワイドレンズの絞り込みすぎは、画質低下の原因になりますから。

 室内での撮影は、ストロボ使用が原則です。窓際の明るい場所は、明暗の差が激しいので、集合写真には不向きです。なるべく均質な光で明るい場所を選びます。被写体とカメラの距離(プロ用語で「引き」)は、大きく取れたほうがよいのですが、あまり離れるとストロボの光が届かなくなります。難しい問題です。
 外付けの大きなストロボなら楽に撮れますが、カメラに内蔵のストロボでは厳しいですね。画質が悪くなるのを承知でISO感度を上げて撮ることも選択肢のひとつです。照明自体にアラがあるよりも、多少の画質ダウンがあっても自然で均質な照明を心がけたほうが、よい結果が得られます。ISO400程度なら問題ないはずです。ISO1600まで上げると画質はかなり落ちます。
 シャッター速度を落としてもストロボの光量は変わりません。閃光時間が極端に短いからです。その代わり、その場の照明の光が効いてきます。これが結構バカにできない効果を生みます。シャッター速度は1/30秒程度までは落とせますが、それ以下で切る場合は、「フラッシュが光ってもしばらく動かないでください」と一声かけておくべきでしょう。いくらしっかりした三脚を使っても、被写体が動いてブレてしまいますから・・・

 デジタルカメラは、撮影結果をその場で確認できるので、並び始めたころに捨て撮りして撮影結果を確認しておくとよいでしょう。並んでしまってからでは、皆さんカメラに注視しますから、「このひと大丈夫かしら・・」と不信感を助長することになります。テストはさりげなく・・・これが基本です。
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