2008/06/10(火)モノクロ写真と暗室

 銀塩のモノクロ写真を処理するためには、暗室が必要です。フィルム現像はダークバッグで詰めて明室でもできますが、プリント作業は暗室で行います。
 最近では、写真愛好家でも自前の暗室を持っているひとは、珍しくなりましたね。

 このブログでたまに登場する「酸化セリウム」の先生は、自宅に広い暗室を持っています。引伸機は3台置いてあります。メインはライツ社のフォコマート2cです。モノクロ愛好家には垂涎の名機ですね。
 酸化セリウムを使ってコンデンサーレンズを磨く・・といっていたのは、ダーストの138です。機関車みたいに2本レールの上に乗っているラボ機です。もう1台はオメガでしたかね。

 引伸機だけで一体いくらするんだ!という内容ですが、廃棄処分品やオークションの出物なので、大したお金は使っていないようです。捨てる神あれば拾う神ありで、必然的に価値のわかるところに集まってきたわけです。
 私の持っていた全紙のバットや現像タンクも、この先生のところに預けてあります。家族の目から見るとオヤジの次に邪魔なものでも、この先生にとっては宝の山です。

 広い暗室に立派な設備を持つ先生の悩みは、モノクロ印画紙が手に入りにくくなったことです。大好きだったアグファのブロビラがなくなったときは、落胆してましたね。コダックがモノクロ印画紙の製造を止めたときは、「自分は使ってないから」と平静でしたが・・・
 「現像液は単薬を調合すればいいが、印画紙を作るのはちょっとなぁ」と嘆いてました。

 そんな親を尻目に、写真学校に行っている御曹司は、デジカメとインクジェットプリンターでモノクロ写真に没頭しています。このひとには暗室は必要ありません。

2008/06/09(月)モノクロ写真の将来

 銀塩のモノクロ写真は、一般のひとが利用することはほとんどなくなりました。皆無といっても過言ではありません。学校の写真部でもいまはデジタルでしょうね。暗室にこもって・・なんてのは、昔の話になりました。

 ヨーロッパではモノクロ写真が盛んで、各国にモノクロ専門のメーカーがありましたが、ここへきて急速に衰退しています。ヨドバシやビックには、いまでも輸入もののモノクロ印画紙が置いてありますが、種類も数も少なくなりました。時代の流れですね。

 写真がアートだというひとは、モノクロームに対する執着が強いですね。時代を越えて残るのは、きちんと処理されたモノクロだけですから当然かもしれません。カラー写真は、ポップアートに過ぎないというひともいます。
 アメリカ映画の大作「風と共に去りぬ」は、RGB三色に分解したモノクロフィルムで保存されているそうです。銀塩画像で耐久性を云々するなら、やはりモノクロームということですかね。

 モノクロームのアート性が、色をなくすことで画像のイメージが増幅される・・という意味なら、別に銀塩である必要はありません。デジタルでインクジェット出力でも可能です。インクジェット出力は、専用の紙以外でもプリントできるので、素材を変えて新しい表現を楽しむひともいます。
 少し前までは、銀塩プリントの模倣だったけどね。

 いかに写真プリントに近づけるか・・から、いかに写真プリントを越えられるか・・に変わってきたようです。モノクロームのアート性が、単なる銀塩素材の耐久性の問題だけでないとすると、その鍵を握るのはデジタル技術なのかもしれません。

 

2008/06/08(日)カラー写真の寿命

 写真集の「寿命」が短いという話をしました。退色や劣化ではなくて、存在価値がそれほど長く続かないという意味です。
 若い世代にはいささか人気のない型モノの記念写真は、時間の経過とともにその存在価値が上がっていく性質を持っています。時代を越えて残るのが記念写真です。

 時代を越えて・・というものの、カラー写真が数十年の耐久性を持つようになったのは、まだ最近の話です。子供が結婚適齢期を迎えた親の新婚時代には、耐久性のあるカラー写真はありませんでした。(高耐性のアゾ染料を使ったチバクロームというのもあるにはあるけどね)
 当時の写真は退色して、かなり色褪せているはずです。

 一般庶民がカラー写真を楽しめるようになってから、まだ50年経っていないと思います。団塊の世代が幼少のころは、モノクロ写真がほとんどでした。カラー写真だと思い込んでいたのは、当時の親が大枚はたいて「人着」させたものです。
 「人着」とは、人工着色のことで、モノクロプリントに筆で色をつけたものです。肌の色と草木の緑くらいで、元の色が判断できない部分は、モノクロのままでした。プリント代よりも高くついたようです。

 長期保存をいうなら、モノクロプリントが一番です。もともと色がないので退色の心配がないのは当然ですが、色素ではなく銀で画像を形成しているので、百年以上の耐久性があります。
 江戸時代の写真が残っているので、実証済みです。当時発明されたのがカラー写真だったら、坂本竜馬も近藤勇もどんな風貌の人物だったか不明だったでしょうね。

 ひとは皆流行に流されます。結婚式の写真がモノクロだった世代は、いまでも手元にきちんとした写真が残っているはずです。カラー写真になってからの世代は、残念ながら変退色して無残な状態です。
 数十年の歳月を経て、初めてわかることなので、仕方ないかもしれませんが・・・
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