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2009年01月20日の記事

2009/01/20(火)最後に残るのは型物写真だけ

 ブライダルに限らず、振袖の写真でも写真集が流行りです。
 いまの若い世代は、旧来の型モノ写真よりもデジタル編集の写真集に魅力を感じるひとが多いから、当然といえば当然ですが・・・

 業者の「欲」が、それに拍車をかけています。台紙貼りの型モノ写真よりも、写真集のほうが売上利益が高いので、どうしてもそちらを勧めるからです。
 市販の写真集を真似たカジュアルな写真は、それほど「寿命」は長くありません。プリントの耐久性の問題ではなく、映像への飽きが早いからです。25歳を過ぎても、振袖の写真集を開いて喜んで見ているひとは、少ないでしょうね。

 写真師は、長い年月を重ねて和装の型を育んできました。時間の経過とともに価値が増幅するのが、型モノ記念写真の特徴です。
 自分がお婆ちゃんになって、孫に「これが二十歳のときの写真だよ」と素直に見せられるのは、やはり型モノ写真だけでしょうね。写真集の画像は、いまはトレンドでも数十年後にはカビ臭い写真になっているはずです。

 写真スタジオを構えた呉服屋さんには、時代を越えて残る記念写真の在り方をくどいくらい説明するようにしています。和の文化の継承を唱えるのであれば、型モノの記念写真を軽視すべきでない!という論理です。
 でも、実際にはなかなか理解されません。皆さん商売人だから、どうしても目先の欲に走って、金額の高い写真集の注文をとるのに躍起です。お客の志向に迎合して、型モノ写真を外してでも写真集を勧めるお店が多いですね。

 本当は、型モノの台紙貼り写真の注文をとったあとで、写真集をオプションで勧めたほうが、売上は上がるはずです。
 「朝三暮四」は最終結果は同じ・・という諺ですが、最初に多いほうを取ってしまうと、残りの少ないほうは取れないかもしれません。

 呉服の業界は、どちらかというと斜陽産業です。和装離れが進んで、成人式の振袖が最後の砦となりました。レンタルに特化した新手の業者が参入し、過当競争になっています。
 将来の展望が開けない状態のなかで、「時代を越えて残る写真を!」と声を大にして提唱しても、目先の欲が優先して受け入れられない傾向があるのは残念です。
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