2011/09/30(金)仰角の微調整

 カメラ用の三脚にポータブル赤道儀を載せる場合は、雲台の上に取付けるのが一般的なやり方です。ティルトで緯度に相当するぶん傾けて使います。
 水平方向の微調整は比較的楽にできますが、仰角の修整は重みでテンションが掛かるので、微調整が難しくなります。パーン棒を締めたときにズレが生じるのも悩みの種です。

 仰角だけ微調整できる装置があれば、三脚と雲台の間に噛ませることで簡易赤道儀として使えます。調べた範囲では、市販品でそういう装置は見当たりませんでした。
 どうしてないんでしょうね。どうやら、ちゃんとした赤道儀を使いなさい・・ということのようです。

 旅行するときに赤道儀一式を持って行くのは億劫です。かくなるうえは、自作するしかなさそうです。車で行くとは限らないので、あまり大きくて重いものはダメです。カメラバッグに入る程度の大きさでないと・・・
 天体グッズの自作は機能重視で、見た目の体裁や携帯性に欠けるものが多いですね。そうなる理由はなんとなくわかりますが・・・

 最も単純な構造は、水平にした蝶番の開閉角度をネジの押し引きで調節する方法です。国内旅行なら 25~45 度開けばカバーできます。沖縄(那覇市)が約 26 度、小笠原(村役場)が約 27 度、北海道(札幌市)は約 43 度です。新幹線で行ける範囲でよければ、31~41 度で済みます。
 問題は、遊びのないしっかりした蝶番が見つかるかどうかです。あとは開閉する仕組ですね。長さのある「高ナット」を回転させてネジの押し引きで調節するのが簡単なような・・・

 こうしてみると、極軸合わせなしで、三脚に固定するだけで日周運動を補正する PENTAX のアストロトレーサーは、やはり画期的ですね。K-5 か K-r を持っているならイチオシです。うるさ型の天文マニアでなければ、ですが・・・

2011/09/29(木)厄介な極軸合わせ

 GPS を利用して正確な撮影場所を記録したり、手ブレ補正機構と併用して日周運動のズレを修整したりと、デジタル技術の発展には目覚しいものがあります。
 それにも関わらず、地球の自転軸と赤経軸を合わせるのは、旧態依然とした方法がとられています。北極星を目印にするやり方です。

 実際には、北極星は天の北極から少しズレていて、天の北極の周りを回っています。時角計算からそのときの位置を割り出して補正するか、近くの暗い星との位置関係から天の北極を探すことになります。
 このとき使われるのが、極軸望遠鏡です。人間の目と勘が頼りです。

 もし北極星が見えない場所だったら、極軸望遠鏡は使えません。緯度がわかっていれば、仰角はほぼ合わせられるし、方位磁石があれば、おおよその北は判断できるでしょう。でも、赤経軸を正確に天の北極に合わせるのは無理です。
 南向きのベランダに赤道儀を設置する場合がこれに相当します。望遠鏡を使って、星のズレる方向を頼りに調整するしかありません。

 東西方向の修整は南天の星を使います。仰角の修整は東か西の星を使います。「上にズレたら西だったっけ・・」と頭で考えてもややこしくなるだけです。天体望遠鏡は倒立像だし、天頂プリズムを使えば左右逆像です。
 実際に架台を少し動かしてみて、ズレが大きくなるようら逆方向に修整するのが間違いないやり方です。それぞれ数回ずつ修整してやれば、ほぼ天の北極に合わせることができるはずです。

 カメラ用の三脚にポタ赤を載せたとき一番困るのは、雲台に上下と左右の微動装置がついてないことです。この問題を解消する適当なパーツが見つからないのが悩みの種です。ビクセンのは安いけど弱そうだし、マンフロは高いし・・・
 LPL からアングル微調雲台 L1261-5 というのが1万円前後で出ています。ライフル射撃の観的用スコープに使う HPT-3 と同型のようです。精度は良さそうだけど、ちょっと小さいですね。

 ミザールから K 型微動マウント(カメラ用三脚取付仕様)というのが1万5千円ほどで出ています。7cm 屈折が同型マウント付の三脚とセットで、2万円以下で売られているのを見てしまうと、ちょっと割高な気がします。(望遠鏡本体は一体いくらなの?)

2011/09/28(水)掌サイズのポタ赤

 前回は PENTAX のアストロトレーサーを採りあげましたが、趣味で星野写真を撮る場合は、ほとんどの人が赤道儀を使っています。望遠鏡の鏡筒に相乗りさせたり、ポータブル型赤道儀(いわゆるポタ赤)にカメラだけ取り付けたりして撮影します。きちんと調整すれば、露光時間が長く取れるのと、追尾精度が高いのが特長です。

 日周運動を追うには、赤経軸の回転だけで十分です。地球の自転と公転分(1日に約 361 度)に合わせて回転する装置があれば、星を自動追尾できます。これが「ポタ赤(せき)」です。
 赤緯軸がない割には価格は高めです。微動で修整する必要がないよう、精度を上げてあるからでしょう。ケンコーから出ているスカイメモ R は、架台まで入れると 10 万円ほどします。

 そんな中で、小型・軽量・格安のポタ赤があります。地方の天体望遠鏡専門店アイベルが発売元の CD-1 です。直販価格は 34,800 円。本体 110x85x145mm、重さ 1.2kg と掌サイズです。(大きな掌?)
 説明書によれば、標準レンズの露光時間は、極軸と1度の誤差で 8~10 分、2度ズレると 4~5 分となっていました。

 回転軸を地軸にいかに正確に合わせるかで、ポタ赤の精度は左右されます。本体付属の極軸調整筒(ただの細パイプ)では、1~2度の誤差はやむをえないでしょう。この筒の中に北極星が入るよう角度を調節します。
 別売の極軸望遠鏡を使えば据付精度を上げられますが、それでも角度で 10~20 分までがせいぜいのようです。

 別に CD-1M+ という機種があります。こちらは恒星時速を 0.5・2・16 倍に変速できます。0.5 倍は、地上の景色と一緒に撮るときに使います。星が点で写せる露光時間は減りますが、地上の景色のズレを抑えられます。
 天体望遠鏡専門店にしては気の利いた配慮ですね。
OK キャンセル 確認 その他