2009/01/22(木)基本撮影料のまやかし
かつては1ポーズいくら・・だったのが、基本撮影料+写真代という表示が主流になりました。
子供写真館は、比較的安く設定した基本撮影料を前面に出して、広告を打つところが多いのが特徴です。数千円の料金を提示して集客し、実際にはプリント代を足して数万円を売り上げる・・というやり方です。
一種のおとり商法ですが、一向に改善される様子はありません。広告のどこかに小さく写真代を謳っていれば、公取にお咎めを受けることはないからでしょう。
全国チェーンの「スタジオ・ア○ス」の基本撮影料は、3,150円です。これに写真代が加わります。六切1枚が5,040円です。
衣裳を着替えたら、1枚は買わないといけないシステムなので、七五三の衣裳とドレスを着たら、最低2枚は注文しなければいけません。親や祖父母と一緒に撮ったカットもあるから、最終的には数万円を支払うことになります。
「子供には財布が6つある」と言われています。両親と祖父母の計6人が、ひとりの子供の面倒を見ている・・という意味です。
財布がいっぱいあると、多少のことは、「お爺ちゃんが出してやるから・・」ということになります。孫はかわいいし・・・
子供のかわいい表情をいかに引き出すか・・ 子供写真館のスタッフは、この1点に絞って研修センターで特訓を受けます。かわいい表情が撮れれば、それが売上利益につながるからです。
名古屋界隈では、「基本撮影料ワンコイン」を謳う子供写真館があります。シーズンオフの基本撮影料が500円という謳い込みです。周りの競合相手を押しのけて「一人勝ち」との評判です。
それに対抗して、基本撮影料100円のスタジオまで登場しました。そのうちDP受付の「現像料無料」に倣って、基本撮影料無料が現われそうな気配です。
2009/01/21(水)子供写真館は別業種
写真館から振袖の記念撮影を奪い取った以上、呉服店にも世代を継いで、記念写真の大切さを継承してもらいたいと思います。
振袖よりも前に、写真館が奪われたジャンルがあります。七五三の記念写真です。
世間一般では、子供写真館も「写真館」と同類だと思われているようですが、実際には別の業種です。世代を越えて写真を残す・・という継承性が希薄だからです。
スタジオ写真は、一旦照明設備をセットすれば、あとはシャッターを押すだけできれいに写ります。常に適正露出だから、誰がシャッターを押しても結果は一緒です。違うのは、振り付けと表情くらいです。
このカラクリに気づいた一部のひとが、子供をターゲットに撮影業に進出してきました。カメラマンは、経験を積んだプロではなくて、この前まで保母さんをやっていたような素人が大半です。
違いが出るのがポーズと表情くらいなら、無愛想なプロよりも保母さんのほうが向いています。子供の扱いについては、「プロ」ですからね。
全国チェーンの子供写真館では、スタジオ写真の経験者を採用することは、まずありません。子供の扱いに慣れた若い女性を雇って、研修センターで特訓します。
研修では、写真の原理やライティングなどの技術的な講義はありません。いかに子供をあやして笑顔を引き出すかと、そのチャンスを逃さずにシャッターを切るかの2点に絞って特訓します。
撮影業は、技術を売る商売ではなくて、接客業だというのが、子供写真館の基本的な考え方です。街の老舗写真館よりもそちらのほうが繁盛しているから、ビジネスとしては間違った方向ではありません。
スタジオ写真は技術が要る・・こうした世間の誤解に乗じて、「プロ」という名の上にあぐらをかいてきた旧来の写真館は、その裏を突かれたわけです。
写真館で、やたらと「プロの技術」を謳うところがあります。「プロ」とか「技術」とかをことさら強調する店で、腕のいいところは少ないですね。
本当に「いい仕事」をする写真師は、写真を見ればわかる・・というスタンスで、言葉による派手な宣伝はしないものです。
2009/01/20(火)最後に残るのは型物写真だけ
いまの若い世代は、旧来の型モノ写真よりもデジタル編集の写真集に魅力を感じるひとが多いから、当然といえば当然ですが・・・
業者の「欲」が、それに拍車をかけています。台紙貼りの型モノ写真よりも、写真集のほうが売上利益が高いので、どうしてもそちらを勧めるからです。
市販の写真集を真似たカジュアルな写真は、それほど「寿命」は長くありません。プリントの耐久性の問題ではなく、映像への飽きが早いからです。25歳を過ぎても、振袖の写真集を開いて喜んで見ているひとは、少ないでしょうね。
写真師は、長い年月を重ねて和装の型を育んできました。時間の経過とともに価値が増幅するのが、型モノ記念写真の特徴です。
自分がお婆ちゃんになって、孫に「これが二十歳のときの写真だよ」と素直に見せられるのは、やはり型モノ写真だけでしょうね。写真集の画像は、いまはトレンドでも数十年後にはカビ臭い写真になっているはずです。
写真スタジオを構えた呉服屋さんには、時代を越えて残る記念写真の在り方をくどいくらい説明するようにしています。和の文化の継承を唱えるのであれば、型モノの記念写真を軽視すべきでない!という論理です。
でも、実際にはなかなか理解されません。皆さん商売人だから、どうしても目先の欲に走って、金額の高い写真集の注文をとるのに躍起です。お客の志向に迎合して、型モノ写真を外してでも写真集を勧めるお店が多いですね。
本当は、型モノの台紙貼り写真の注文をとったあとで、写真集をオプションで勧めたほうが、売上は上がるはずです。
「朝三暮四」は最終結果は同じ・・という諺ですが、最初に多いほうを取ってしまうと、残りの少ないほうは取れないかもしれません。
呉服の業界は、どちらかというと斜陽産業です。和装離れが進んで、成人式の振袖が最後の砦となりました。レンタルに特化した新手の業者が参入し、過当競争になっています。
将来の展望が開けない状態のなかで、「時代を越えて残る写真を!」と声を大にして提唱しても、目先の欲が優先して受け入れられない傾向があるのは残念です。