2009/03/22(日)刀剣の撮影
関市に在住のアマチュア写真家で、定年後に刃物の撮影を職業に選んだひとがいます。日本刀が好きで、どうしても刀の写真を撮りたかったそうです。
家庭で使う包丁と違って、日本刀には反りがあります。ライティングが難しい被写体の代表格です。
刀剣を紹介する本には、きちんと撮影された写真が載っています。出版社お抱えのカメラマンが、現地まで行って撮影しているようです。
大きな箱を持ってくるという話は聞きますが、撮影現場を見た人は誰もいません。刀の所有者すら、立ち会うことができないと言います。企業秘密なんでしょうね。
本物の日本刀は、モロ!鉄です。鉄の鏡ですね。
模造刀の多くは、表面がクロムメッキされていて、模様はありません。本物の刀は、鉄を何回も折り返して鍛錬してあるので、渦のような複雑な模様があります。研いだ痕は波状になり、繊細な表情をしています。
切っ先(ボウシというそうです)は、本体とは別の角度を持っています。全身を何とかうまくまとめても、ボウシの部分がきちんと表現できません。
面倒だから・・と、ダーリングスプレーを吹くのはご法度です。刀は、あとで拭き取ることが難しいからです。最悪の場合は研ぎ直しです。
本職の研ぎ師は、力を入れすぎないよう、自分の親指を傷つけてから研ぐと言います。そんな繊細なものに、パラフィンの粒を吹き付けるのは無茶ですね。
前述のアマチュア写真家は、苦労の末に、自分が納得できる刀の写真が撮れるようになったと言います。そこに行き着くまでに、何年か掛かりました。
2009/03/21(土)光り物の商品撮影
料理の撮影では、スプーンやフォークがその代表格です。
全体をディフューザーで覆って撮影すればいいわけですが、料理のメニューを次々替えて撮るのには不便です。
普通は、ダーリングスプレーを使って、金属表面の照りを抑えます。ダーリングスプレーは、細かいパラフィン(蝋)の粒を吹き付けるボンベで、プロ機材のショップで売っています。
フランス製とアメリカ製で、粒子の大きさが違う・・とかいう話をしているプロがいました。確かフランス製のほうが細かい・・と言っていた記憶があります。好みの問題ですが・・・
昔、ゴルフ道具の撮影を頼まれて、安請け合いしたはいいけど往生した写真屋がありました。ゴルフクラブの撮影を簡単に引き受けるとは、怖いもの知らずの典型です。アイアンセットなんかは最悪ですね。
撮影結果はNGで、くたびれもうけだったとか・・・
受けるほうも受けるほうですが、頼んだほうにも責任があります。街の写真屋で撮れるシロモノではありません。経費をケチって安く済まそうとしたスケベ根性がアダでした。
光り物は、商品撮影のなかでは難物の代表格です。平面的な包丁なんかは、比較的簡単な部類に入りますが、日本刀のように曲線的な刃物は、素人では撮れません。
刀剣の撮影は、それ専門のカメラマンがいて、特殊な箱に入れて撮影するそうです。撮影現場には、クライアントでも入れてもらえないとか・・・
知ってしまえば簡単な原理でしょうが、それが知れてはオマンマの食い上げです。写真師は手品師と似ているところがありますね。
2009/03/20(金)袋入の菓子を撮る
袋の表面が複雑な曲面になっていて、ライトの位置を変えてもなかなか解消できません。
アマチュアは、反射を抑えるというと、すぐにPL(偏向)フィルターを想いうかべますが、単純な平面でないから使えません。アチラを消してもコチラが消えない…という事態に陥ります。
透明体の撮影は車と同様、全体をディフューザーで覆って行いますが、ライティングが難しいので素人の手には負えません。
周りを黒ケント紙で覆えば反射はなくなります。あとは照明をどうするかです。点光源を使えば、光の反射は最小限に抑えられます。映り込んでも小さな点で済みます。
影の処理は、下地を無反射の黒にすればごまかせますが、中の商品に強い影が出るので、照らす位置には制約があります。
一番簡単な方法は、薄曇りの日に屋外で撮ることです。空全体が巨大なスカイライトになります。映り込みがあったとしても、均質で柔らかい光だから、強い照りは出ません。
多少の映り込みがあっても、透明な袋に入っているというのがわかって、違和感は少ないはずです。
袋入の菓子は、商品の単価が安いので、町工場レベルの企業では、商品撮影に多額の費用をかけることはできません。近所の写真店に依頼する企業が多いようです。
商品写真に不慣れな写真屋や写真館では、思ったような仕上りは期待できないでしょうね。自前で撮影するのとあまり変わりません。
そのうち嫁入りの菓子撒きでもあったら、菓子を並べて記念に撮りますか。うまく撮れれば、近所の菓子工場から撮影の依頼がくるかもしれません。