2009/01/19(月)素人のスタジオ写真

 前述の呉服店をはじめ、撮影が本職でない業種が写真スタジオを構える時代です。写真のデジタル化が、その傾向に拍車をかけています。

 成人式にしても結婚式にしても、晴れの日には晴れの衣裳がつきものです。晴れの衣裳があるから、記念写真の需要があるわけです。衣裳と写真は一体ですね。

 成人式の記念写真は、呉服店・貸衣裳店で撮るケースが増えました。ほとんどと言っても過言ではありません。振袖は、衣裳が先で写真は後ですからね。
 振袖成約の「10大特典」とやらのなかに、必ず記念写真のサービスが入っています。ユーザーが好むと好まざるとにかかわらず、振袖を頼んだ店で記念撮影もすることになります。
 街の写真館で撮影するのは、お姉さんか母親の振袖をお下がりで着るひとくらいになりました。

 それでも、呉服店で撮影したのに改めて写真館で撮影するひともいます。呉服店の写真が気に入らなかったからのようです。
 ある街の写真館では、こうしたお客さんが多いとか・・・
 「よそで撮ってもらったけど気に入らないので・・」というと、写真館のオヤジさんが「○○屋さんでしょう!」と間髪いれずに言った、なんて噂話もあります。ある呉服卸の社長から聞いた話です。

 自分の傘下の呉服店がこう言われてはいけないと、スタジオ撮影の講師を頼まれたことがあります。十数店舗のグループを対象に、5回ほど行ないました。
 毎回熱心に通うひともいれば、一度来たきりでドロンのひともいます。呉服屋さんは皆商売人だから、写真撮影は振袖を売るための手段か、儲けるための道具といった認識です。シャッターを押せば写る・・くらいにしか思っていないひともいます。
 記念写真の重みを伝えるのは、容易なことではありません。

2009/01/18(日)仮設スタジオの照明

 以前、スタジオ設計を頼まれたことのある呉服屋さんから、成人式当日の仮設スタジオの相談がありました。
 2階のスタジオを着付けスペースで使うから、1階で撮れるようにしたい・・という相談です。行ってみると、数十組分の振袖が、2階のスタジオに所狭しと並んでいました。とてもここで写真は撮れません。

 スタジオのストロボ設備は、天吊りのパネル型だから、外して使うわけにはいかないし・・・
 その店にある予備の機材は、蛍光灯を使ったスクープライトだけです。外光の入る室内で蛍光灯照明というのは、いただけません。
 輝線スペクトルを補正すると、外光に補正色が被るし、照明パワーも足りません。全部で4灯ありましたが、立ちポーズと座りポーズの2箇所をカバーするのは無理です。何でこんなものを買ったんでしょうね。

 この蛍光灯ライトは、ある有名なカメラメーカーの営業マンの勧めで購入したそうです。色温度が太陽光に近いから・・といった、単純な発想だったようです。何もわかっちゃいませんね。
 そもそも、スタジオ照明のことをカメラメーカーの営業マンに聞くこと自体が間違いです。一部上場の大手メーカーだから信頼できる・・という甘い考えがアダでしたね。
 何ともならないので、せっぱつまってこちらにSOSしてきたわけです。

 スタジオ開設時に非常用にと、予備の電源部を持たせていたのを思い出しました。330Wsの予備の電源部に、こちらで用意した発光部を2灯つなげて、ストロボ照明で撮ることにしました。
 ストロボなら、2灯あれば何とか撮れます。

 当日のカメラマンは?と聞くと、社長が自分ひとりで撮る由。ライトの位置をその都度変えるのは、呉服屋さんには無理のようです。立ちと座りの2スパーンを2灯とも動かさずに・・というのは、怖いもの知らずの要望ですね。
 何とかセッティングしましたが、成人式当日はちゃんと撮れたでしょうか?

2009/01/17(土)ミックス光源の補正

 光源の種類が1つなら、フィルターワークかホワイトバランスの設定で、ノーマルな発色にすることができます。難しいのは、ミックス光源での撮影です。

 窓のない室内の撮影で、光源が混ざっている場合は、補正が可能です。
 蛍光灯とタングステン光源で、スイッチが別々になっているなら、どちらか一方だけ点灯し、補正をかけて撮影します。次にもう一方だけを点灯し、それ用の補正をかけて撮影します。

 フィルムでの撮影には、多重露光できるカメラで2重露光します。光の回り具合で、単純に1絞りアンダーを2回露光すれば適正露出・・とはいかないので、テストは欠かせません。
 デジタル画像は、あとで画像ソフトを使って合成することができます。(フィルムでもデジタルデータ化すれば可能ですが・・・)

 窓のある室内で、外光が混ざる場合は、補正が外光に被るので、この方法は使えません。窓を塞ぐか、夜になるのを待つか、あるいは人工照明をストロボにするなどして撮影する必要があります。
 それと、人物など動く被写体は、多重露光ができません。動きのある被写体は、ストロボ照明で撮ることになります。

 銀塩写真の時代には、フィルムの特性を生かしてミックス光源の撮影をしていました。蛍光灯の輝線スペクトルが出にくいものとか、タングステン光の発色が自然に近いものとか・・プロの連中はよく研究していました。
 ネガのNCで撮影して、あとから透過原稿にデュープする・・なんて裏ワザを使うひともいましたね。見抜けるクライアントは、まずいません。

 「酸化セリウム」の先生は、期限切れのフィルムを冷蔵庫に飼っていて、ここぞというときに使っていました。カラーバランスのズレを利用するわけです。「3年モノのベルビア」なんて・・まるでワインみたいですね。

 蛍光灯の輝線スペクトルをキャンセルできる撮像板が開発されれば、太陽光と蛍光灯のミックス光源で楽に撮影できるのですが・・・
 フィルムの時代から目標にしてきた、人間の目に近づける努力は、これからも続くでしょうね。
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