2008/11/15(土)親族衣裳の今昔
映画版の第1作は1969年の封切りだから、40年近く前の世相を反映しています。
新郎新婦の衣裳は、もちろん和装です。寅さんはじめ、「おいちゃん」やタコ社長も羽織袴姿でした。葛飾柴又の土地柄かもしれませんが、これが当時の結婚式によくある風景だったと思います。
そんななかで、志村喬が演じた新郎の父親だけが、モーニング姿でした。8年間、親子の断絶が続いて、結婚式の場で再会・・というシナリオです。
慶事に湧くゲストのなかにポツンとひとり孤立する、父親役の志村喬を際立たせるのに、モーニング姿は実に有効でした。いまなら衣裳は逆でしょうが・・・
慶事に着るモーニングのベストは、シルバーグレーで、タイもシルバーグレーが正装とされています。
志村喬が着ていたモーニングのベストは、ブラックでした。黒のベストに白襟をつけた略式です。タイはグレーの縞模様でした。
白襟つきの黒ベストは、日本独自の礼装です。海外では黒ベストは葬祭用になります。もののない時代に、冠婚葬祭どちらでも使えるようにと、冠婚には白襟をつけて代用したのが始まりといわれています。
北海大学の名誉教授という設定ですが、衣裳は一般庶民の礼装ですね。
映画に出てくる衣装や小道具は、時代考証がしっかりとされています。
山田洋次監督が衣裳の設定にどこまでこだわったかはわかりませんが、あえて正装のグレーベストにしなかったのなら、さすが!と言うべきでしょう。
和装であれ洋装であれ、寅さんの世界は庶民的なのが一番しっくりきます。
2008/11/14(金)家紋入り婚礼グッズ
家紋入りネクタイは、大抵2~3本のセットになっています。用途別に結婚式は白、葬式は黒、法事はグレーです。
結婚式の集合写真で、白はノーネクタイに見えるのでよくない・・という話題をとりあげたことがあります。でも、家紋入りネクタイの慶事用は、版で押したように白ばかりです。
白トビしても家紋が残るからいい・・という問題ではないと思います。家紋は自由に選べるのに、素材の色や柄が選べないのは残念です。
家紋が自由に選べるというものの、既製品もあります。「丸に違い鷹羽」が多いですね。武家らしくて格好がいいからでしょうか?
とくに自分の家紋がない場合は、既製品で済ますのも手ですが、あえて家紋入りにする意味はないように思います。
ネクタイ以外にタイピンやカフスボタンにも家紋入りがあります。そこまでそろえるのは、よほど家柄にこだわるひとでしょうね。
どうせなら、こだわりついでに「ふくさ」も家紋入りにしないと・・ 手土産を包む風呂敷も家紋入りにしたりして・・・
そういえば、家紋入りの指輪というのもありますね。石のはまっていない彫金の指輪です。いつの時代でも金は富の象徴だから、資産のひとつとして代々継承していくには、いいかもしれません。
家紋が入っていれば、売り払われる可能性は低そうだし・・・
映画「男はつらいよ」の寅さんは、「寅」の字を彫りこんだ指輪をしていました。ハンコの代わりです。映画の小道具のなかでは一番小さい部類のものですが、大事なアイテムです。
寅さんにとっては、家紋の代わりなんでしょうね。いわゆる「私紋」です。
2008/11/13(木)地域差がある女紋
女紋は、母親から継承する「母系紋」が主流で、通い婚の風習があった関西に根強く残るのはうなずけます。源氏物語の世界です。
一方、女性が独自の紋章を使う習慣は、関東が発祥の地という説もあります。関西から嫁いできたひとの風習が定着したケースもあり、複雑な地域模様になっています。
家紋が権威の象徴だったのは、封建時代の公家や武家社会の話です。婚礼調度品に実家の紋章や女紋を入れて、嫁ぎ先が用意したものと区別する風習がありました。
男尊女卑の封建社会でも、女性の持ち物に対する所有権は確立していました。たとえ主であっても、奥方の持ち物を勝手に処分することは、ご法度で固く禁じられています。
財産を持たない一般庶民には、女紋は無用です。家紋も自由には使えませんでした。
一般庶民に家紋や女紋が普及したのは、明治維新以降です。武家が没落したあとで、「著作権フリー」になった家紋は、誰でも勝手に使えるようになりました。
勝手に使えるわけだから、何でもいいわけです。(花びらが16枚の十六八重菊の御紋章は天皇家だけですが・・)
冠婚葬祭で知ったかぶりして家紋を云々するのは、よほどの旧家でもない限りナンセンスですね。母親から継承した女紋を持たないのに、五三桐や蔦は貸衣装そうろうだとか・・・
家紋の歴史と風習に関するWEBサイトはたくさんあります。女紋については、大宮華紋・森本氏の「女紋研究サイト」で詳しく紹介しています。興味のあるかたは、一度ご覧になるといいでしょう。
女紋研究サイトはコチラから http://www.omiyakamon.co.jp/onna-mon/index.html