2009/03/16(月)撮影用の水滴はグリセリン

 ビールやジュースの撮影に欠かせないのが水滴です。グラスについた水滴が、冷えたビールを演出します。

 冷えたビールをグラスにつげば、確かに水滴がつきます。ただし、煌々とライトを照らしたスタジオでは、水滴はすぐに消えてしまいます。
 商品撮影で使う水滴は、実は本物ではありません。ライトを当てても蒸発しないグリセリンを使います。香水を吹き付けるアトマイザーにグリセリンを入れて、グラスに細かい霧を吹き付けていきます。一気に付けないで、「水滴」を育てていくように何回も吹き付けるのがコツです。

 アトマイザーとの相性で、グリセリンを水で薄めて使うこともあります。あとで水分が蒸発することを念頭において、あせらずにじっくり吹き付けます。
 ビールの泡の部分は水滴が付着しないのが本当なので、泡の部分には紙テープを巻いて、グリセリンが掛からないようにします。グラスを持つときは、この紙テープのところを持って作業します。
 グラスからこぼれないようにビールを少しずつ注ぎます。泡はすぐに消えてしまいますが構いません。本物の泡は使わないからです。

 置き位置が決まったら、紙テープを外します。本物の泡が消えたところで、シェービングクリームを入れます。最初は細かい泡ですが、時間が経つと泡が合体して、それらしい状態になります。
 シェービングクリームは、メンソールが入っていると緑がかって見えます。これも泡が育っていく過程で蒸発して、そのうち白い泡に変わるので心配いりません。

 こうして作った撮影用のビールは、かなり長時間の撮影でも使用に耐えます。水滴が消えることはないし、泡が減ったらもう一度作り直すだけです。
 唯一の欠点は、撮影が終わったあとで飲めないことです。(冷えてないしね)

2009/03/15(日)車ごと撮れる写真館

 昔から交友のある写真館で、車が撮れるスタジオを造ったところがあります。車に乗ったまま、スタジオの中まで乗りつけることができます。

 乗りつける・・といっても、中で方向転換できるほど広いスタジオではありません。車輪にキャスター付きの台車を履かせて、人力で車の向きを変えます。
 この写真館(館主はアトリエと呼んでますが・・)の先生は、高級輸入車のファンクラブとも交流があって、車好きの人物です。倉庫を改築して、車ごと写真が撮れるスタジオを造りました。

 車の写真を撮るために何が必要かは、この先生はよく理解しています。人物専門の写真館にしては珍しく、コマーシャルフォトの知識も豊富です。
 自分が撮りたいのは車の商品写真ではない、といいます。車のオーナーが愛車と一緒に写りたい・・という要望に応えて、このスタジオを造ったそうです。車好きの人間だから、お客の気持ちがわかるんでしょうね。

 周りをグルリとディフューザーで覆う撮り方はしないようです。あくまで、「人と車」の記念写真が目的です。
 それでも、4m四方のスカイライトをどうやって作るかを考えている・・と言ってました。角度が変えられないと意味がないとも・・・
 パイプフレームにテント地を張るのがいいか、それともほかの素材が・・・ 飛んでる人間の考えることは、常人の発想を超えていますね。

 この先生には師匠がいました。すでに他界されましたが、生前はある自動車メーカーの写真の仕事を請け負っていました。当時はどこもやっていなかったカラー写真の自家処理をしていたので、機密保持の意味合いもあったようです。企業からも信用された人物でした。
 「車ごと入れるスタジオが夢だ」と、この師匠から直接聞いたことがあります。跡取りの御曹司は、諦めて普通の写真館をやっていますが、愛弟子がその夢を実現しました。動機と目的はどうあれ、立派な弟子です。

2009/03/14(土)車の撮影は至難の技

 自動車の撮影には、かなり大掛かりなセットが必要です。全体が光沢のある鉄板とガラスでできているので、映り込みをコントロールするのは至難のワザです。

 車の商品撮影は、全体をディフューザーでスッポリ覆い、その外側からライトを当てます。光が当たっている部分と光のない部分を作って、映り込ませるわけです。
 カメラも映り込むので、ディフューザーに穴を開けて、そこからレンズを覗かせます。ちょうどいいアングルが、映り込みのない場所ならいいですが、そうとも限りません。
 デジタル処理で後から消すこともできますが、フィルム時代は大変苦労したようです。

 ディフューザーは、撮影専用のものを使います。シーツやペーパーバックでは、色温度の低下が激しいので不都合です。白のペーパーバックを透過したストロボ光は、ほぼタングステン光と同じ色温度まで低下します。
 車の撮影は、映り込みを目で確認しながらだから、普通はタングステンライトを使います。ペーパーバックをディフューザーにしたら、光量は落ちるし、色目は真っ赤です。使い物になりません。

 スタジオ照明は、「光の筆で絵を描くようなもの」といわれています。絵心のないひとは、プロのCM写真家にはなれません。
 全身曲面で映り込みのある車の撮影は、その最たるものでしょうね。

 自動車は、無人の状態では車高が上がっています。カメラ位置はローアングルにするのが普通なので、見た目のバランスがよくありません。人が乗っている状態が、理想的な車高です。
 自動車メーカーのカタログに載っている写真は、わざとウエイト(おもり)をかけて、車高を低くしています。何十キロもある石をボンボン積み込んで、人が乗っているのと同じ条件にするわけです。

 石を積むことくらいは素人でもできそうですが、やはり車の商品写真は、その道のプロに任せたほうがよさそうですね。
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