2012/10/19(金)高級コンデジの適正価格は?

 レンズ交換式のミラーレス機の売れ行きが伸びている一方で、レンズ交換ができない高級コンデジに関心が寄せられています。理由は写りの良さです。フィルムに代わる撮像センサーがカメラに内臓されているデジタルカメラは、相性のいいレンズと一体型にするのが、画質の向上を図るのに都合がいいようです。
 デジタル式は、レンズの性能のほかに撮像センサーの性能や画像処理エンジンなど、画作りに関するほとんどの要素をカメラ側が負っています。使用するレンズが特定されていれば、それだけ画作りが追い込みやすくなります。

 いま注目されている高級コンデジの筆頭は、SONY SX-1 でしょう。撮像センサーがフルサイズであること、カールツァイス 35mm F2 単焦点レンズを搭載していること、推定売価が 25 万円と高額であることなど、話題性には事欠きません。サンプル画像が出回ってきて、その描写力に高い評価の声があがっているようです。
 もっとも、あの価格とこれだけ贅沢なスペックで写りが悪かったら、終わってますが・・・

 フォーマットサイズは APSC ですが、独特の発色と描写で注目されているのが、シグマの DP シリーズです。同社独自の3層構造センサーを採用しています。フィルムでいうとコダクロームやベルビアみたいな、ねっとりとした濃厚な色のりが特徴です。高感度特性が悪いとの指摘がありますが、コダクローム 25/64 やベルビア 50 だと思えば、腹を立てることではないでしょう。実用感度は ISO 200 以上あります。

 少し前の発売になりますが FUJIFILM の X100 も高級コンデジに属します。こちらも APSC で、ミラーレス機の X-Pro1 や X-E1 に先がけて発売されました。光学式と電子式のハイブリッドファインダーが特徴です。
 いずれの機種も普及型の一眼レフがセットレンズ付きで優に買える価格です。ちょっと高い気がしますが、高級コンデジの適正価格はどのくらいなんでしょうか?

 フィルム式の高級コンパクトカメラは、実売価格で 10 万円前後していました。撮像センサーや画像処理エンジンがない代わりに、フィルムを巻き上げる小型の特殊モーターを内臓していたし、見え味のいい光学式ファインダーも必須です。フィルムサイズはすべてフルサイズだったので、レンズ設計の難しさでは APSC フォーマットの比ではありませんでした。
 レンズのコストを考えると、高級コンデジはちょっと割高な気がしないでもありません。画質重視の一部アドアマ層を対象にしている点は同じだから、似たような価格帯になるのかもしれませんが・・・

2012/10/18(木)3層構造とベイヤー配列

 シグマが採用している3層構造の FOVEON 撮像センサーは、1点で RGB のカラー情報を得ることができます。フィルムに近い構造です。偽色の心配がないので画像を散らすローパスフィルターは不要で、シャープな画像が得られるのが特徴です。
 現行品の merrill シリーズは 4600 万画素と謳っていますが、センサー表面の素子を数えると 4800x3200 で 1536 万です。1536 万画素×3層で 4600 万画素ということです。

 FOVEON 以外の撮像センサーは、4素子で RGB+G のカラー情報を得ています。いわゆるベイヤー配列と呼ばれる方式です。ほとんどのデジカメがこの方式を採用しています。
 画素数が 1/4 に落ちないよう、近隣の色データから補完してそのままの画素数で出力する仕組みになっています。1素子で1色しか感じないので、色データを補完するときに本来の色とは違う偽色が発生する可能性があります。ベイヤー配列の画素数表示は、4倍に水増しされていると言えなくもありません。

 こうしてみると、3層構造センサーのほうが有利にみえますが、不利な点も多々あります。高感度特性が劣ること、発色のコントロールが難しいことなどです。
 このうち発色については、その独特の出方に魅力を感じる人が多いようです。ただし、期待通りに発色するかどうかは、出たとこ勝負みたいなところがあって、RAW 現像に慣れていない初心者には不向きとされています。

 前回話題に採りあげたように、高画素化がさらに進むと、3層構造ではなくて平面構成で RBG のカラー情報を4素子で捉えて1ピクセルで出力するカメラが現れるかもしれません。
 仮に 9600x6400 で 6144 万画素の撮像素子があれば、画素数を 1/4 に落としても3層構造センサーの 4800x3200 と同等か、それ以上の画質を得ることが可能なはずです。(発色の好みは別問題)

 FOVEON センサーの高感度対応や画像処理エンジンの進化速度より、ベイヤー配列センサーの高画素化のほうが開発速度が速そうな雰囲気です。現在の FOVEON センサーがフルサイズ化されたとしても、いずれ抜かれる日が来るような気がします。

2012/10/17(水)高画素化でローパスレス

 シグマが採用している3層構造の FOVEON センサーを除いて、市販のデジタルカメラに使われているカラー撮像センサーは、ほとんどがベイヤー配列です。RGB+G の4素子一組でカラー情報を得る方式です。グリーン(G)が倍の2素子になっているのは、緑感度の高い人間の眼に近づけるためです。
 カラー情報を得るのに4素子を使うとなると、撮像センサーの画素数が 1/4 に減ってしまうように思われますが、実際には近隣の色データから補完して、そのままの画素数で出力する仕組みになっています。

 元は1素子で1色しか感じないので、データ補完すると本来ない偽色が発生する可能性があります。そこで撮像センサーの前にローパスフィルターを置いて画像を散らし、偽色とモアレ(干渉縞)が出ないように工夫しています。その結果、画像が少し甘くなります。
 実際には撮像センサーのサイズが小さいコンデジには、ローパスフィルターは使われなくなりました。高画素化で撮像センサーの解像力が高くなったため、レンズの解像力のほうが相対的に低く(画像が甘く)なり、ローパスフィルターでボカす必要がなくなったからです。

 高画素化がこのまま進むと、フォーマットの小さいカメラだけでなく、一眼レフでもローパスレスの機種が増えると予想されます。現に、Nikon D800 と PENTAX K5-2 にはローパスレスの機種が別に用意されています。さらにフォーマットが大きい PENTAX 645D もローパスレスです。このクラスになると、使い方はユーザーに任せようということでしょう。ローパスフィルターのない(あるいは効果を落とした)機種は、確かに解像力が高くシャープです。

 コンデジ並みの画素ピッチでよければ、フルサイズの画素数は1億画素を優に超えます。仮に 9600 万画素の撮像センサーなら、ベイヤー配列(RGB+G)の4画素を1ピクセルとして扱っても 2400 万画素の画像データが得られます。現行機種と同じ画素数ですが、偽色の発生がないためローパスフィルターは不要で、シャープな画像が得られます。さらに、広いダイナミックレンジと高感度特性の向上が期待できます。

 実際には、画素数を 1/4 に落とすような贅沢なやり方はせずに、高画素機にするはずです。そのほうが一般消費者に対するインパクトがあるからです。それでも現行機種よりも画質を向上させるゆとりがありそうです。
 高画素化に批判的な意見をよく耳にしますが、メーカーとしては開発の手を緩めることはないでしょう。結果として画質の向上につながるなら、お好きにどうぞ・・といった心境です。
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