2008/02/08(金)レンズの解像力

 フィルム全盛時代のレンズの評価は、現在とは少し基準が違っていました。日本のカメラメーカー・レンズメーカーは、長い間「解像力」をレンズの評価基準にしてきました。1mmの幅のなかに何本の線を見分けることができるか、という基準です。100本/mmよりも200本/mmのレンズが高解像度なわけです。

 解像力のテストは、実写したフィルムを顕微鏡で覗いて測っていました。白と黒の線を数えるのですが、「白とグレー」や「グレーと黒」でも1本には違いありません。昨日遅くまで一杯やってて二日酔いだと、数えるのに誤差が生じる可能性があります。人間の目で見て測るわけですから・・・

 ドイツの有名な光学メーカーでカールツァイスというのがあります。ライカと同様、カメラ愛好家ならよく知っているCONTAX(コンタックス)というカメラブランドを持っていました。日本は当時のYASHICAが業務提携し、CONTAXブランドの一眼レフを発売しました。いまから30年以上前の話です。
 カールツァイスのレンズ設計は、解像力よりもコントラストを重視したものでした。ニッコールを筆頭に解像力一本で押してきた日本の光学メーカーとの間で、「解像力かコントラストか」という論争が巻き起こります。解像力を上げるとコントラストが低下するという、二律背反の要素があったからです。最終的には、コントラストを重視しながら解像力を高める、という方向に落ち着きました。

 レンズの解像力をテストするには、その倍くらいの解像力があるフィルムが必要だったようです。ミニコピーのような「無粒子」に近い超微粒子フィルムを使ったのでしょう。
 時代は変わって、撮像板を使ったデジタルカメラが主流となりました。アナログのフィルムと違って、撮像板は画素数が決まっています。画素数を大きく超える解像力は無意味です。ただ、ここへきて撮像板の高画素化が進んでいます。1200万画素のAPS-Cサイズだと、1mmあたり約180画素ですから、かなり高い解像力が求められます。デジタル一眼レフは、135サイズのフィルムにほぼ追いついた感じがします。

2008/02/07(木)特許とコスト

 キヤノンは昔から他社から特許を買うのが嫌いなメーカーだ、という印象を持っています。自社開発の技術を使ってコストを安くあげたいという意識が強い、というのが正確な言い方かもしれません。コンパクトカメラのAF(オートフォーカス)技術もそうでした。
 世界初のAF機「ジャスピンコニカ」は、アメリカのハネウェル社の特許を使っていました。ミラーを使ったこの方式は精度が悪く、無限から最短距離までを数段階しか区別できず、測距ミスも多かったそうです。キヤノンは「オートボーイ」から赤外線を使った測距方式を採用し、ハネウェルの特許を使いませんでした。(自動巻上げに必要なコアレスモーターは、ミノルタの開発技術だったそうですが・・・)
 ハネウェル社は、これに「いちゃもん」をつけて、「ピントが自動であること自体が特許侵害だ!」と言い出し、日米貿易摩擦にまで発展しました。アメリカの言い分は、本音を訳せば「このままだとハネウェルは潰れる!落とし前をつけろ!」というものでした。まるでヤクザみたいな論法です。当時、赤外線方式に切り替えていた日本のカメラメーカーは、渋々「罰金」を払うことになりました。アメリカ向け輸出が多かったミノルタは、一括払いして当期赤字になったそうです。(その代わり少し負けてもらったみたいですが・・・)

 一眼レフのAF化のときもキヤノンは自社開発にこだわりました。ミノルタは特許を公開して売ったので、他社はミノルタの方式を採用しました。「一社だけではカメラ業界の発展は実現しない」というのがミノルタの言い分でした。キヤノンは追随せず、超音波モーターの開発を待ってEOSを発売します。しばらくは、ミノルタとキヤノンのトップ争いが続きましたが、最後はキヤノンが制しました。企業規模とコストの差だと思います。

 デジカメの撮像板を自社生産できる企業は限られています。スーパーCCDハニカムを持っているFUJIFILMも、普及機のCCDは他社から買っていました。デジタル一眼レフの普及に合わせ、キヤノンはCMOSを自社開発することでコストダウンを達成し、競争力と利益を手にしたわけです。
 デジカメは電子部品で構成されているので、自社部品比率の低い商品です。撮像板を他社から買っているメーカーは、レンズと外装以外はほとんどすべて他社製、というケースも珍しくありません。価格競争の激しい商品なので、売っても売っても儲からないという事態に陥りやすいわけです。技術開発が遅れると、名門のカメラメーカーのなかでも、カメラ事業から撤退する企業が出てくるかもしれませんね。

2008/02/06(水)CCDとCMOS

 デジタルカメラの撮像板には、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)とCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)があります。デジタル画像の黎明期には、CMOSは省電力の普及版として、CCDの下位に位置付けられていました。しかし、現在ではデジタル一眼レフの高級機にも採用されています。CCDとCMOSの違いについて詳しく知りたいひとは、WEB上で情報を入手することができますので、ここでは技術的な話は割愛します。
 前にチラリと触れたニコン党とキヤノン党の話になりますが、ニコンはCCDでキヤノンはCMOSを採用してきました。どちらが優位か論争のタネになりそうなテーマです。なにか薄型テレビの液晶とプラズマの論争に似てますね。
 ミノルタファンとして客観的な立場に立てば、どちらも一長一短で、「こっちの勝ち!」ということはできません。後継のソニーは何故か上位機種のα700はCMOSを採用してますが、新製品のα200とα350はCCDを採用してるし・・・。そういえば、ニコンから昨年11月発売のD3とD300はCMOSでした。今月発売のD60は普及機でCCDを採用しています。
 一眼レフにCMOSイメージセンサーが採用されているのは、カメラ側のフォーカルプレーンシャッターで露光されるので、苦手な電子シャッター機能が必要でないことが挙げられます。撮像板の面積が大きくなり高画素化されたことも有利に働いています。要するに、一眼レフでコストダウンを図るにはCCDよりもCMOSのほうが有利なわけです。

 一般的な撮影にCCDとCMOSのどちらが向いているか雌雄を決することは、まだ難しいと思います。ただし、特殊な用途になると、向き不向きがあるようです。
 知り合いの写真作家の先生は、モノクロの赤外フィルムをよく使っていました。数年前にコニカミノルタは、年に一度発売していたモノクロの赤外フィルムを生産中止にしてしまいました。コダックからも135サイズが出てましたが、その先生が使っていたのはブローニーサイズだったので、諦めるしかありませんでした。
 デジタルカメラでテストしたところ、CCDは赤外領域にも感光しましたが、CMOSはダメだったそうです。感光特性の違いです。そういえば、天体写真マニアの間では、FUJIFILMのFinePix S3proがよく使われていました。散光星雲はHα線で輝いているので、赤外領域まで感度があるほうが良く写ります。フィルム時代には、コニカのISO400が「赤感度がいい」と、よく使われてましたね。

 高額になりがちな高級一眼レフのコストダウンに寄与するなら、CMOSでもよいと思います。でも、その利点をメーカーが自分の利益のために独り占めするのであれば、消費者としては納得いきませんね。
http://f42.aaa.livedoor.jp/~bands/ccd/ccd.html%3c/a
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