大判カメラのピントグラスは擦りガラスだから、あまり細かいところまでは見えません。画面上にアラがあるかどうかは、被写体を直接肉眼で確認することになります。
ところが、肉眼には個体差があって、目で見えてなくても写真に写ることがあります。デジタル写真なら、撮った後でピクセル等倍に拡大して、モニター上でチェックすることができますが・・・
大判カメラの場合は、一旦ピントグラスを外し、ルーペで空中像を見ながらチェックする方法が有効です。撮影レンズが対物レンズ、ルーペが接眼レンズの役割を果たします。
望遠鏡で拡大して見ているのと同じで、肉眼で見えない細かいところまでチェックできます。ルーペで覗く角度を変えれば、画面の隅々まで見えます。ただしピントグラスと同様、倒立像です。天体望遠鏡と同じ原理だからです。
この方法は、「酸化セリウム」の先生から教わりました。ブツ撮りのときに使うテクニックです。料理の集合写真だと、片隅のグラスについたホコリや指紋まで、鮮明に見えるそうです。ご飯に立体感がないときは、竹串を箸代わりに米を一粒ずつ立てていったというから、半端じゃないですね。
フィルム時代は、原板をレタッチするのは大変でした。完全原稿にするために、細心の注意を払ったと言います。
細心の注意を払って被写体をチェックしても、フィルムにゴミがついていたらアウトです。カットホルダーにフィルムを詰める作業は神経を使います。
カットフィルムの装填は暗室で行います。引き蓋でフィルムを扇いでから閉める癖は、先生の最後の「おまじない」ですね。
シャッターを切る前に解決できる問題はすべて解決しておく・・それがプロの仕事だ、というのが先生の口癖です。デジタルになっても基本は同じだとか・・・
デジタル写真は、後から画像処理でと考えがちですが、それは間違いだそうです。画像処理でしかできないことは仕方ないとしても、撮影段階でできることは、きちんとやっておかないと、自分が請け負った意味がないという考え方です。偉いですね。