2011/12/22(木)デジカメで赤外線写真
「それでは困る」という人たちがいます。天体写真を撮っている人たちです。銀河系内の星雲の多くは、Hα線で輝いています。人間の眼にはほとんど感じない赤い光です。波長は 656.3nm で、赤外線の少し手前ですが、IR カットフィルターの影響を受けます。
フィルム時代には赤感度の高いものが好んで使われました。とかく赤っぽいといわれたコニカがよかったみたいですが、いまはもうありません。
それならと、デジカメの IR カットフィルターを外す人が現れました。ついでにローパスフィルターもなくしてしまえば、シャープネスが上げられます。
ところが、この改造にはいくつか問題点があります。
屈折系の光路にある平面フィルターを除去すると、ピントの位置がズレます。代わりに同じ厚みの素通しか別のフィルターを入れる必要があります。
この部分はメーカーの機密事項で、正確な情報が得られないのが悩みの種です。外しにくい機種もあるようだし・・・
IR カットフィルターを外してしまうと、通常の撮影ではカラーバランスが崩れるので、天体写真か赤外線写真専用になってしまいます。普及型デジイチの中古を買ってきて、改造する人が多いようです。もちろん、メーカーのメンテナンスは受けられなくなるので、壊れたらその時点でアウトです。
これだけのリスクを負ってでも改造する人が結構いるみたいで、それを専門に請け負う業者も現れました。ローパスフィルターを素通しのフィルターか、赤外領域のみカットするフィルターに換装してくれるところもあります。
2011/12/21(水)赤外線で写真を撮る
そうしないと普通の景色とあまり変わらない風景が写るだけです。フィルム時代には、赤外領域まで感じるインフラレッドフィルムがありました。
「酸化セリウム」の先生が愛用していたのは、コニカのインフラレッド 750 というモノクロフィルムでした。毎年1回だけ限定販売されました。このとき買っておかないと、次は1年後です。
ブローニーを 100 本入の元箱で購入していました。有効期限は1年ないので、買ったらすぐに冷蔵庫行きです。このフィルムは特殊だったせいか、コニカが写真事業から撤退する以前に製造を打ち切られています。
感光特性は変わっていて、赤から赤外領域(680~800nm)と、500nm より短い波長の2ヶ所に感度のピークがありました。その中間(緑・黄)の感度がスッポリ抜けた形です。赤外専用フィルターでなくても、例えば黄色のフィルターでも赤外線写真が撮れました。青い光だけカットすればいいわけです。
赤外線は露出計で測れないから公称感度はありません。商品名の 750 は感度ではなく、赤外線感度のピーク波長(750nm)を表わす数字です。
感度はやや低めで、日中晴天下でも 1/60 秒 F5.6 くらいだったと思います。太陽光のない曇天雨天では、ほとんど撮影不能でした。
露出のほかにやっかいな問題があります。ピントの位置がズレることです。可視光の合焦位置から少し手前に戻してやらないと後ピンになります。単焦点のレンズには赤外補正マーク(R)がありますが、ズームレンズには普通はついてないので山勘で合わせることになります。
赤外フィルターを通した光で運よくオートフォーカスが働けば、多分それでピントは合っていると思いますが・・・
赤外線フィルムは、いまでもヨーロッパ系のローライやイルフォードのものが手に入りますが、コニカやコダックのものとは感光特性が違うようです。
2011/12/20(火)赤外線はなぜ見えない?
生物の中には、紫外線が見えるものがいます。虫は紫外線を感じるそうで、例えば花なんかは、人間とはまったく違う見えかたをしているのではないかと言われています。蜜がある場所を知らせるサインは、紫外線でないと見えないんだとか・・・
「太陽あるところに紫外線あり」です。紫外線を出さない照明の謳い文句に「虫が寄りつきにくい」というのがありますが、多分このことを言っているんでしょう。
人間の眼は、水晶体やガラス体が紫外線を遮断するので、網膜には届かない仕組みになっています。紫外線は有害光線だからです。
一方、赤外線の一部は網膜まで届きます。1000nm 以上の波長まで光を受けているのに、700nm を過ぎたあたりから色として感じないのは不思議ですね。
どうやらこれは、近赤外線で物を見るメリットがないのが理由みたいです。700nm 近辺の波長(赤)とあまり見えかたが違わないので、いつしか見えなくなったという説が有力です。
近赤外線を感じるよりも、その能力を他の波長に充てたほうがよかったからでしょう。550nm (緑)のあたりに感度のピークがあるのは、その結果なのかもしれません。
4000nm 以上の遠赤外線は別名を熱線というように、眼で見えなくても肌で温度を感じることができます。焚き火が暖かいのは遠赤外線を出しているからです。
それより波長の長い電磁波(百万 nm = 1mm 以上)は、光ではなく電波の領域です。電気的な道具を使わないと、見ることも感じることもできない世界です。天文台の電波望遠鏡が見ているのは、この近辺の電磁波でしたね。