2009/04/15(水)メディア変換と写真店

 写真店は、デジタル画像データのメディア変換に消極的だと苦言を呈しましたが、もともと画像のメディア変換は写真店の得意分野です。

 8mmフィルムからVTRメディアへの変換は、写真店以外では扱うところはありませんでした。アナログ画像の扱いが得意だった写真店は、頭に「デジタル」の字がついた途端に、不得意な存在になってしまったようです。

 ほとんどの写真店は、メディア変換を総合ラボに頼っていました。その総合ラボが衰退したり、廃業したりで、頼るところがなくなってしまいました。
 写真の自家処理でひと儲けした写真店も、特殊な処理はラボ頼みでした。ラーメンとギョーザ(現像とプリント)以外は、自分で調理する能力は なかったわけです。

 頼りにしていた総合ラボは、銀塩写真の処理で食べていた企業です。デジタルデータの扱いには不慣れで消極的でした。
 RAWデータのデジカメ画像のプリント依頼がきたら、右往左往していた状態でした。「未現像のデータが来た!」と、もう大騒ぎです。「現像所」なのに・・・
 当時の銀塩プリンターは、RAWデータからのプリントはできませんでした。お手上げです。

 いまでは笑い話ですが、当時はこれが実態でした。世の中のスピードに企業側がついていけない状態が続きました。業績の低迷が、新しい分野への投資を阻みます。
 拒否反応からか、デジタル画像の取り扱い方を語ろうとすると、写真店の人から嫌な顔をされた経験があります。デジタルかぶれの「裏切り者」という白い目で見られたこともあります。

 お客様不在の姿勢が、客離れを加速します。自店に来る客にしか目がいかないから、店に来なくなった客のことには思いが及びません。公然とデジタル写真を批判し、それに同調する保守的な意見にしか耳を貸さない状態が続きました。
 もう、裸の王様ですね。裸のままで生きていければいいのですが・・・

2009/04/14(火)メディア変換で商売

 写真がアナログからデジタルに変わる時代は、ひとつの商機でもあります。
 巷の写真店が衰退したのは、銀塩写真にしがみついて、この新しい時代の流れに乗りそこなったからだと思います。

 一方、銀塩写真の加工手段を持たなかったひとは、デジタル写真の登場で業績を伸ばしました。少ない設備投資で、写真を自家処理することができます。フィルムと現像処理の要らないデジタル写真は、大幅なコストダウンになりました。
 写真自体が衰退したのではなく、銀塩という手法が廃れただけの話です。写真のデジタル化で儲けたひとは結構います。

 デジカメが普及し始めたとき、何軒かの写真店に、デジタル画像のメディア変換をメニュー化するよう提案しました。真剣に耳を貸すひとはいませんでした。まだ、現像・プリントで食っていける・・と思っていたようです。
 「いま1日数十本あるフィルム現像がゼロになる日が来るんだよ」と言うと、皆さんキョトンとした顔をしていました。

 時代は変わって、フィルム現像は1日数本にまで減りました。これでは処理液の維持ができません。ノーリツ鋼機から1日6本あれば液の維持ができる現像機が出ているようですが、新たに設備投資できる店は少ないでしょうね。
 デジカメからのプリントだけでは、食べていけない写真店が多いようです。

 写真画像のメディア変換に早くから力を入れていれば、フィルム現像に代わる収益源を確保できたと思います。
 銀塩の原板からデジタルデータに変換する。デジタル画像をメディアに記録し、別の媒体に変換する。デジタル画像を編集し、オリジナルのプライベートなソフトを作製する・・・ 考えられるメニューはいくらでもあります。

 店の人からは、「そんなことをする客はいない」という声をよく耳にしました。客がいないのではなく、そういうことをする店がないだけの話です。
 写真の本質は「記録」です。きちんと保存すれば永久不変のデジタル画像ですが、何もしなければ消逸霧散してしまいます。顧客の大切な思い出を守るという、写真店の社会的使命を忘れては、存在価値がありません。

 何も知らないでデジカメに乗り換えた人が大半です。銀塩からデジタルに変わって、頼れる写真店がなくなってしまったのは不幸でした。

2009/04/13(月)写真のスライドショー

 静止画の写真画像をデジタル編集して、動画風に見せるスライドショーが、写真スタジオの新しいメニューとして注目されています。

 出始めのころは、CD-Rに静止画像のデータをコピーしただけでした。家庭でプリントされては、焼き増し注文が期待できません。パソコンのモニターで観賞できる程度の画素数にするか、焼増し注文をもらった画像だけをコピーして渡していました。
 どちらかというと、デジタル媒体で商売するというよりも、写真集など付加価値のある商品を勧めるためのサービス品として利用されていました。

 その後、静止画像をデジタル編集して、スライドショーが簡単に作れるソフトが登場します。文字を合成したり、何コマかをランダムに表示したりして、見映えを競いました。音楽を入れれば、ビデオ感覚で楽しめます。
 提供する媒体はCD-Rで、パソコンのモニター画面で見ることを前提にしていました。そのうちDVDも登場します。

 DVDになってから、家庭のテレビで見られることが課題になります。大型パネルテレビの普及が後押しします。DVDプレーヤーの普及も追い風となりました。
 CD-Rに焼くのと違って、DVDソフトの制作には時間と経費が掛かります。単なるサービス品ではなく、販売商品として捉えるスタジオが増えました。

 写真業界は、印画紙にプリントしてなんぼ・・の業界です。直接目で見えないデジタル媒体でお金をもらうというのは、長年の商習慣になじみません。
 デジタルソフトが商品になるのは、業界外の衣裳店や呉服店が、スタジオ写真事業に参入するようになったからだと思います。彼らにとって、「写真を焼くこと」と「DVDに焼くこと」の区別はありません。提供するすべてのメニューが商品です。

 DVDからブルーレイにメディアは移行しつつあります。新しいメニューを開発する原動力は、業界外のスタジオの「商魂」でしょうね。
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