2008/09/12(金)政治家の顔写真
「酸化セリウム」の先生のところにも、選挙ポスター用の顔写真を頼みにくる政治家がいます。
ずいぶん前に、若手候補者の顔写真を撮ったときは、かなり手間暇をかけました。一度撮影したあとで原板をチェックしていて、「どうも気に入らない」と、自分から再撮を申し出たそうです。
写っているのが「ただの若造」にしか見えなかったのが、不満だったと言ってました。
いろいろ考えた結果、政治家に必要なものは、きちんとしたきれいなメイクではなく、エネルギッシュを感じさせる脂ぎった照りだという結論に達しました。要するに「アブラギッシュ」でなければならないわけです。
2度の撮影で使ったフィルムは、ブローニーで100本を超えたとか・・・
選挙ポスターがよかったのか、この若手候補者は国会議員に当選です。
地方の選挙は別として、国政クラスの選挙ポスターは、電通などの大手広告代理店が請け負うのが普通ですが、このときは違ったそうです。当選経験のない若手の候補者だから、ツテを頼って依頼がきたのだと思います。
その後、解散総選挙になるたびに、ポスターの撮影依頼が続いています。コマーシャルフォトから足を洗ったので、広告代理店からの仕事はすべて断っていますが、この政治家からの依頼は受けているそうです。
撮り直しまでやった結果、初当選できたので、意気に感じた以外にゲンを担いでいるのかもしれませんね。
2008/09/11(木)モノクロ写真の印刷
ところが、モノクロ写真は、写っている内容以前に「焼き」が評価の対象になる世界です。プリント結果が命といっても過言ではありません。
「酸化セリウム」の先生が、写真集の仕上りで印刷屋とひと悶着やったのは、この世界の話です。
モノクロ写真は、「黒の締まりと白の抜け」といわれるように、トーンとコントラストのバランスが重要です。プリント原稿にできるだけ近い結果を出すようにするのが、印刷屋の腕の見せ所です。刷った直後とインクが乾いた後とで結果が変わります。
今回の騒動は、この読み違いも関係しているようです。
モノクロ印刷は、刷った時点ではトーンが沈みがちです。紙にインクが馴染んで乾燥すると、反射率が変わって明るくなります。その分を見越して濃い目に印刷したのがアダになったみたいです。
経費をケチって、本刷りと別の機械でテスト刷りしたのも影響したようですが・・・
モノクロ写真に精通した本職のプロが撮影した場合は、かなり綿密な打合せが必要です。会報などの記録写真ならある程度ラフに扱っても問題ありませんが、作品として提出された写真は、本人が納得できる結果でないとクレーム問題に発展します。
予算とコストの関係で、ややもすると手抜きが生じます。経費を抑えるのもテクニックのひとつですが、結果が悪ければ手抜きといわれても仕方ありません。
窓口になった担当者が、写真家と知り合いだったのが、かえって中途半端な結果を招いたのかもしれません。プロの仕事に甘えは禁物です。
2008/09/10(水)能楽堂の色温度
能楽堂は照明が普通の舞台と違うので、カラー写真に不向きな被写体です。狂言師の好みによって、タングステン光の照明を暗く落とすことが多いからです。
照明を暗くするには、通常スライダックで電圧を落とします。狂言師によっては60Vか65Vまで下げることがあるそうです。当然、色温度も下がります。
狂言や能は、焚き木程度の明かりで見ると雰囲気が出ます。2000K台の照明下でフィルム撮影は、ちょっと厳しいですね。デジタルカメラの出番です。
ところが、この先生はアナログ人間なので、撮りはじめのころはフィルムで撮影していました。色温度変換フィルターをかけておいて、足りない分をプリント時に再補正するやり方です。
そのうち、色の濁りが解消しきれないカラー写真よりも、モノクロのほうが雰囲気があって狂言に向いていると判断したようです。自分で現像・プリントできるから、仕上りもいいしね。
デジタルカメラは、Finepix S2proを持っていたので、デジタルのカラーデータもたくさんありました。こちらもモノクロに変換して使いました。
御曹司が、モノクロのデジタル写真を研究していたのが役に立ったようです。印刷屋に渡したデータは、完全原稿だったとか。
それが全く違う濃度の刷り上りになったもんだから、先生は「大噴火」です。テスト刷りは良かったのに、製本前の本刷りはかなり濃かったみたいですね。
「あれはあくまでもテスト刷りだから・・」というのが印刷屋の言い分ですが、「何のためのテストだ!」と怒りが収まりません。経費節減のために本刷りとは別の機械でテスト刷りしたのが原因かも?