2009/01/13(火)塵も積ればソフト系

 ずいぶん昔の話になりますが、知り合いの写真屋さんに頼まれて、結婚式の写真を撮ったことがあります。「どうしても断れないお客さんだが、当日は誰も手が空いてないと」いうので、渋々引き受けました。

 自宅を出るところから・・というのは、田舎でもすでに珍しいケースです。行ってみると、玄関に大きな板根の衝立が飾ってある立派なお屋敷でした。
 挨拶すると、いきなりご祝儀です。撮影業も悪い商売じゃありませんね。

 花嫁の支度ができると撮影開始です。
 当時は色打ち掛けに角隠し・・和婚が主流でした。お金持ちの家だから、ひょっとしたら衣裳はレンタルじゃなくて、嫁入り道具として誂えたのかもしれません。

 撮影は、和室の広間で行いました。和装は畳の日本間が一番ですね。
 室内だから、グリップストロボにパラソルをつけて補助光として使いました。お金をもらう以上、直焚きじゃ申し訳ありません。立ち姿、後ろ姿、座り姿と、ひと通り押えておきます。

 花嫁のアップも押えておかないと・・・ カメラバッグからNikkor 100mm F2.5を取り出して、レンズ交換です。
 ファインダーを覗くと、全体がボヤーンとしています。「あれっ?」と思ってレンズを見ると、フィルターにしっかりホコリが積もっていました。レンズキャップをせずに、長いあいだ机の上に放置していたからなぁ・・・

 普通なら慌ててフィルターを拭うところですが、「ちょっと待て!いい雰囲気じゃん」と閃きました。そのまま撮影続行です。
 ときどきフィルターに「ハァー」と息を吹きかけて、ソフト効果を強調です。最後にフィルターを外して、ソフト効果なしのカットを撮って終了しました。

 あのフィルター、掃除せずに外してそのままとっておけばよかったなぁ。

2009/01/12(月)手作りのフィルター

 タバコのセロハンがソフトフィルターの代わりになるなら、他にも利用できそうな素材がありそうです。フィルターの自作も写真の素養のひとつです。

 昔からよく使われた素材に「紗(しゃ)」があります。ソフトフォーカスのフィルターとして最もポピュラーなもののひとつです。
 写真館向けのプロ用機材には、紗のフィルターセットもありました。結構高かったですね。お金を稼ぐ道具だから、仕方ありませんが・・・

 このセットが高いからと、自作を思いついた写真屋がありました。作るのを手伝って欲しい・・といいます。店員に生地屋まで買いに行かせて、最小単位で何種類かの黒紗と白紗を用意してもらいました。
 スタジオで実写テストを行います。使うレンズの焦点距離や絞りによって、描写が変わります。いまと違ってフィルムでの撮影だから、結果が出るまでに時間が掛かります。

 最終的に「使える!」と判断したのは、2種類くらいでした。安く済んだかどうかは疑問ですね。まぁ、何でも自分の手でやってみようというのは立派ですが・・・
 紗は光のロスがあるので、露出補正(+)が必要です。スタジオ機材はTTLじゃないから、うっかり忘れると露光不足になります。カメラマンが複数いるスタジオなら、ソリッドのソフトフィルターを使ったほうが無難ですね。

 紗が使えるなら、他にも使えそうな素材が身のまわりにありそうです。ストッキングとか蚊帳とか・・・(いまどき蚊帳はないか)
 デジタルなら結果はすぐに見れるから、アレコレ試してみるといいでしょう。使い古しのUVフィルターにポマードを塗ってみたり、鼻の脂をつけてみたり・・ この方法なら、部分的にソフト効果を出すことができます。

 ストッキングは、暗室でのモノクロプリントでよく使いました。粒子がザラついた原板だと、露光中にレンズの下で一定時間ゆらゆらさせることで、粒状感をコントロールできます。
 ポートレート写真のプリントには有効なテクニックでした。

2009/01/11(日)ソフト系フィルター

 フィルターワークのひとつに、ソフトフォーカスがあります。
 パソコンの画像処理でもできますが、フィルターと同じ効果を出そうとすると、ある程度のテクニックが必要です。時間もかかるしね。

 ソフトフォーカスといっても、ただボカせばいいわけではありません。ピントが合っていて、なおかつボケてなければ、ただのピンボケ写真です。
 ソフト効果を出すには、いろいろな方法があります。
 一般的なのは、光学フィルターの表面に凹凸をつけて、画像を散らすやり方です。デコボコ式と、小さなレンズをランダムに貼り付けたタイプと、2種類あります。cokinのセットに入っていたのは、デコボコ式でした。

 フィルターの表面に切り傷をつけて、光を散らすやり方もあります。デュートは、同心円状に切り傷をつけたフィルターで、ハイライト部分だけにハロ(にじみ)が出ます。
 そういう意味では、クロススクリーンも同じ原理です。切り傷の方向に光芒が出ます。ハイライト以外は普通に写るから、ソフトフィルターと思っているひとは少ないですが・・・

 レンズの球面収差を利用して、ソフト効果を出すやり方もあります。フィルターワークというより、レンズ自体にソフト効果を持たせています。
 ベス単(ベスト判単玉)のレンズを流用するひともいますが、専用の交換レンズが何本か出ています。PENTAXが熱心でしたね。6x7用まで出しています。
 1枚もののクローズアップレンズを交換レンズとして利用する手もあります。ケンコーからパーツが出ていました。ACクローズアップは、2枚重ねだから、ソフト効果は望めません。安物のシングルレンズに限ります。

 ここ一番のシャッターチャンスで、ソフトフィルターが手元にないときは、タバコのセロハンを使う手口もあります。結構ボケるので、ぜひお試しを・・・
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