2012/10/13(土)デジタル画像の評価の仕方

 フィルム時代のレンズテストは、MTF 検査機が導入される前は実写による解像力検査が中心でした。コピーフィルムなどの超微粒子フィルムでテストチャートを撮影して、顕微鏡でフィルム上の本数を数えます。どのメーカーも 1mm に何本解像できるかを競っていました。

 チャートは白地に黒の線で描かれていますが、フィルム上で白とグレーでも識別できれば1本には違いありません。目を凝らして数えます。前の晩に呑みすぎて二日酔いだと検査結果が変わってしまうし、きちんと本数は数えられてもコントラストが評価されないのが難点でした。

 デジタルカメラの画像は、格子状に整然と並んだピクセルの集合体です。パソコンのモニターで等倍かそれ以上に拡大すれば、素人でも容易にチェックできます。そんな事情からか、ネット上にはデジカメの画質を評価するコメントが氾濫しています。中には神経質な書き込みも・・・

 ピクセル等倍に拡大して画像を観ることは少ないと思います。4K2K のモニターテレビで近寄って観賞するならいざ知らず、縮小表示したり小型プリントにしたりするぶんには、ピクセル等倍でのチェックは無意味です。
 写真画像の評価は、あくまで出力サイズとそれに見合った観賞距離でするのが順当でしょう。せいぜい A4 サイズまでしか出力しないのに、A2 サイズにしたときの四隅の解像力が云々・・などというコメントを気にすることはないわけです。

 ディストーション(歪曲収差)は、出力の大小に関わらずモロ出ます。一般的に広角レンズは外に膨らむ樽型、望遠レンズは中にしぼむ糸巻型になります。単焦点レンズは比較的よく補正されていますが、ズームレンズは全焦点域で補正するのが難しく、両端で出ることが多いようです。
 ディストーションが大きなレンズでも中心線は直線です。なるべく目立たないような構図にするか、ワイド系は単焦点にするか、あるいは画像処理で補正することになります。

2012/10/12(金)デジタルカメラのサンプル画像

 このところデジタルカメラの話題が多いのは、2年に一度のフォトキナがあったせいもありますが、そろそろ使い物になりそうなカメラが出てきたのがきっかけです。画素数的にはフィルムの解像度に追いついたとはいえ、画作りについては画像処理でごまかしている機種がまだ氾濫しています。サンプル写真は要チェックです。

 ひと口に「画質」といっても、いろんな要素があります。解像力もあればコントラスト、カラーバランスや彩度、ダイナミックレンジなど、評価の基準はさまざまです。個人的な好みもあるから、高画質を定義するのは難しい問題です。
 デジタルカメラのサンプル写真を見て、よく写っているかどうかは、見る人によって評価が変わります。RAW データを後で現像したのか、カメラで内部処理した JPEG かでも結果が大きく変わります。

 RAW データでの撮影が基本なのはわかっているつもりですが、日常の記録写真まで RAW モードで撮ることは稀でしょう。JPEG での出力が優れているに越したことはありません。世間一般に出回っているサンプル写真は JPEG モードでの「撮って出し」が多いようですが、それでも参考になります。
 妖しいのは、メーカーサイトに載っている作例見本です。いかにもスタジオでライティングして撮られたような写真は、無視したほうがいいでしょう。アマチュアがきちんとライティングして撮影することなど日常的にはないからです。

 あと気をつけないといけないのは、マクロ写真です。これもきちんとセッティングして撮られている可能性が大です。近接撮影の描写がいいからといって、遠景の風景もバッチリ写る保証はありません。やたらとマクロ写真のサンプルが多い機種は、ほかのサイトに出ているサンプルもあたったほうがよさそうです。

 個人的には、人物写真の肌の描写を重視しています。建築物や風景の写真を拡大して見ても本来の質感がどうかはわかりづらいものです。人の肌ならおおむね的確に判断できます。
 細かく解像できているかどうかより、質感に違和感がないかを見ています。いまだに肌の描写がのっぺりしたヌメリ感のあるサンプル写真が多いですね。これを「滑らかな肌」という人もいるようですが・・・

 前回紹介の X10 と X-S1 は、人物写真のサンプルが見当たりませんでした。ポートレート写真向きでないとしても、記念写真で人物は撮るでしょうに・・・

2012/10/11(木)意欲的なネオ一眼 X-S1

 コンデジ並の撮像センサーなのに、高画素と高ズーム比をウリにしているネオ一眼は、レンズ設計に無理があることもあって、写りはパッとない機種が多いみたいです。とくに広角側はオマケ程度に考えておいたほうが無難です。海外向けに価格を抑えなければならないのも画質的にさえない一因です。

 そんな中で、FUJIFIM X-S1 は意欲的なカメラです。X シリーズの X10 といえば、誰しも高画質のコンデジとの認識があると思います。それと同じ 2/3 インチ EXR CMOS センサーをベースにしたネオ一眼タイプが X-S1 です。
 基本ベースが同じなら、光学 26 倍ズームの X-S1 よりも光学4倍ズームの X10 のほうが、無理がないぶん写りがよくて当然です。常用カメラとしては X10 のほうが向いているでしょう。ここで取り上げたのは、あくまで「ネオ一眼の中では」という意味です。

 コストを抑えるために低画素の取って付けたような EVF が多い中で、144 万ドット・視野率 100% ファインダーは立派です。センサーサイズが大きいにもかかわらず、画素数は 1200 万画素に抑えられていて、高感度特性も期待できます。
 ちなみに同社の FinePix SL300 は、1/2.3 インチ、1400 万画素、光学 30 倍ズーム、EVF 20 万ドット(視野率 97%)と、他社機と似たようなスペックです。比べてみれば X-S1 が、高画素・高倍率だけがウリの月並みなネオ一眼と一線を画しているのがわかります。

 同社には、X マウントのレンズ交換式ミラーレス機 X-Pro1 と X-E1 がありますが、どちらも高級機に属するカメラです。その下のクラスとしてレンズ一体型の X10 と X-S1 を位置づけているようです。
 デジタル一眼レフを持たないメーカーだから、こうした意欲的なネオ一眼が出せたのかもしれません。ニコンやキヤノンでは政策的にできない芸当です。
 24mm から 600mm 超までをカバーし、高感度に強く写りがいいレンズ一体型カメラがあれば、普及型の一眼レフは出番がなくなります。自分で自分の首を絞めるようなことはしないでしょう。
OK キャンセル 確認 その他