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2012年03月06日の記事

2012/03/06(火)超望遠レンズの分解能

 前回の例え話、口径 80mm の望遠鏡で合成焦点距離 10000 mm というのは、実はオーバースペックです。焦点距離の短いアイピースを使い、撮像面との距離を離していけば、拡大率はどんどん上げられますが、一定の線を越えたあたりから像がボケていきます。分解能の限界を超えるからです。

 天体望遠鏡の性能で重要なのは、倍率ではなく口径の大きさだということは、少し光学理論をかじったことのある人なら知っていると思います。メーカーが宣伝に使っている最高倍率がオーバースペックだということも・・・

 人間の眼で2つの点を分離して見ることができるのは、角度にして 60 ″(1度の 1/60)程度と言われています。一方、天体望遠鏡のカタログに使われている分解能は、「ドーズの限界」という経験則に基づく数値です。115.8 ″を有効開口径(mm)で割った値が分解能の限界となります。口径 80mm の対物レンズは 1.4475 ″です。

 これらの数値を元にすると、口径 80mm の望遠鏡は 42 倍程で人間の眼の限界と同じになります。実際には、像がだんだんボケていくのと、より大きく見られるのとの見合いで、この2倍から4倍程度の倍率までは有効とされています。口径 80mm なら 80~160 倍あたりが限度となります。ただし、これは眼視での話です。

 では、写真撮影の場合は、口径の何倍までの焦点距離が分解能の限界かというと、明確な答えを出すのはかなりやっかいです。経験則から割り出された「ドーズの限界」を基準にするとしても、撮像素子(あるいはフィルム)の解像力が絡んでくるからです。

 仮にニコン D800E(フルサイズ・3600 万画素)に、口径 80mm、合成焦点距離 10000mm のレンズをつけたとします。写る範囲は、角度にして 740×495 ″になるはずです。7360×4912 ピクセルだと、1素子あたりわずか約 0.1 ″です。
 2素子あればふたつの点を解像できるとして、1素子あたり 0.72375 ″で口径 80mm の分解能と同じになります。焦点距離に直すと 1382mm です。
 解像力を測る白黒の線は2素子あれば分離できますが、ふたつの白点を明確に分離するには、間にもう1素子必要との考え方もあります。この場合は倍の 2764mm となります。

 これらはローパスフィルターなどは無視した単純計算の数字で、あくまで参考値です。それでも口径 80mm のレンズで、合成焦点距離 10000mm は、分解能の限界を超えているのは間違いないようです。
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