2009/01/25(日)振袖のロケーション
こうしたロケは、もともと写真スタジオを持たない呉服店が、記念写真のサービスをするために行なっていました。どちらかというと、その土地では一、二を争うような大手の呉服店が多いですね。
背景スクリーンの前で撮るよりも、写真集向きのカットが撮れます。他店との差別化にもなるから、スタジオ設備を入れた後でも、ロケにこだわるお店があるのは肯けます。
以前話題にした、綿菓子・みたらし等のイベントをやっていたカメラ店と、どこか似てますね。お祭り好きというか、イベントが好きなんだと思います。
「和の文化を大切にする」という趣旨からか、お茶会を一緒に開いたり、母娘できもの姿の記念撮影をしたりと、嗜好をこらしています。スタジオで撮影サービスをするよりも手間暇が掛かるから、やっぱりイベント好きでないとできないでしょうね。
呉服店が写真スタジオを構えた時点で、写真館とのコラボ解消というケースが多いと聞きます。外注から内製化すれば、利益率が一気に向上します。呉服店は商売人だから、「利益」という誘惑には勝てないようです。
ただし、ロケーションフォトは、スタジオ写真と違って、誰がシャッターを押しても結果は一緒・・とはいきません。カメラマンが何人か要るし、呉服店単独でこなすのは難しいと思います。
こうしたロケーションフォトを請け負うのは、地元の写真館か写真店です。大店は気位が高いから、写真撮影も専門店でないと・・という意識が強いからでしょう。専門店同士のコラボレーションが続けば、お互いが潤います。
呉服店と写真館・・この両方とも接してきた立場でいうと、両者には決定的な違いがあります。呉服店の主人が皆商売人であるのに対し、写真師のほとんどは職人気質だ、ということです。
この水と油ほどの違いが、ときにはトラブルの原因になります。コラボレーションは、双方の利点を生かすためのビジネス上の契約です。お互いの言い分を十分すり合わせる努力が必要ですね。
2009/01/24(土)廃れる背景スクリーン
ブライダル写真集で、野外ロケのカットを多用したものをよく目にします。海外挙式やリゾート婚は、野外ロケが中心です。
近ごろでは、建物の一部を利用して、立体的な背景で撮影する屋内ロケが、盛んにおこなわれるようになりました。ビル構造のホテルや式場では、野外ロケする場所がないからでしょう。
写真のデジタル化で、大光量の照明が必要でなくなったことも追い風になっています。
結婚式場の写真室は、集合写真と型モノ写真に特化しつつあります。
台紙貼りの記念写真でも、立体背景を使ったカットを目にするようになりました。布製のバックスクリーンは、次第に使われなくなる傾向です。
スタジオ設備の工事をしているスクリーン屋の社長は、「バックスクリーンを新調する施設が激減した」といってました。工場を維持していくのは大変のようです。
数年前までは、安い韓国製のスクリーンが入ってきて、日本のスクリーンメーカーは苦戦を強いられていました。価格が半分以下では対抗できません。
日本と韓国では製法が異なります。使う顔料が違うとか・・・
それ以上に異なるのが、絵の雰囲気です。ちょうど、同じ仏教でも日本と韓国のお寺が違うのとよく似た話です。チマチョゴリには合っても、振袖には合わない・・ということが、ままありました。
スタジオ用の背景スクリーンは、キャンバス地を横位置に寝かして製作します。巾は3m前後ですが、長さが6~7mあるので、縦のまま画くことができないからです。90°傾けた状態で画くというのは、すごい技術ですね。
需要の激減で、こうした職人芸が廃れていくのは残念です。
2009/01/23(金)子供写真館の模倣
振袖レンタルショップや呉服店が、こぞってスタジオ設備を導入した時期には、子供写真館を真似て参入する業者もありました。
呉服は斜陽産業とみて、成長産業の子供写真館に業態変更をしようとしたわけです。実際に勝ち組になれた業者は少数でした。
子供写真館のメインイベントは七五三です。いまでは年中行事という声も聞こえますが、やはり秋が本番です。ほかの時期は、神社が七五三をやってないし・・・
子供相手のスタジオは、1年分を3~4ヵ月で稼がなくてはなりません。いいように見えて、業界紙などでもてはやされている割には、結構きつい商売です。誘いに乗って参入した呉服店で、辛酸をなめたところはたくさんあります。
成人式の振袖だけに限ってみても、呉服店はスタジオ事業に参入しやすい業態です。振袖の商戦は、成人式が終わった次の週から春までがピークです。(最近では前の年の暮れからスタートするようですが・・)
5月の連休あたりから前撮りを始めれば、子供写真館が一番干上がっている時期にスタジオをフル稼働できます。お客から注文を取った写真集が市中を巡り、広告塔の役割を果してくれます。一石二鳥ですね。
子供写真館に業態変更しなくても、呉服店の本業にスタジオ写真を取り込むことで、業績のアップが図れるという、ツボを心得た考え方をする経営者は賢明です。
ついでに、子供写真館に奪われた、七五三の需要を取り戻そうとする呉服店もあります。皆さん、商売人ですからね。
問題は、子供写真館に対抗して、基本撮影料を安く謳うところが多いことです。同じ土俵にのって「おとり商法」まがいの宣伝を打つことが、自店のイメージアップにつながるとは思えませんが・・・