2012/10/04(木)デジカメは「写真機」か?

 十数種類ある古物の分類の中に「写真機類」が単独項目で設定されているのは、中古カメラのビジネスがひとつのジャンルになっているからでしょう。昔から中古専門のカメラ店があります。戦後 20 年くらいまでは、カメラは高級品でした。露出計も付いてないようなカメラが、大卒の初任給の何倍もしたそうです。戦前のライカは、家が1軒建つくらいしたとか・・・

 カメラが大衆化するのは、電子化で露出が自動になってからです。ヤシカ・エレクトロ 35 は、長時間の自動露出ができたので、夜景がきれいに撮れると評判になりました。1970 年の大阪万博で大ヒットしたそうです。
 ピントが自動になるよりも、カメラにストロボが内臓されるほうが先でした。ピッカリコニカの後にジャスピンコニカが登場しています。一眼レフで本格的なオートフォーカスが実現したのは、1985 年に発売されたミノルタα 7000 からです。まだ 30 年も経っていないというか、もう 30 年近くにもなるというべきか・・・

 写真のデジタル化でカメラも変わりました。ミノルタのαシステムは現在ソニーが引き継いでいます。光学式ファインダーを備えたαは1機種もなくなりました。固定式の半透過ミラーは AF センサーに光学情報を送るためのものです。もう一眼レフとは言えないかもしれません。
 オールドファンからは、光学式ファインダーの復活を望む声が上がっているようですが、おそらく後戻りすることはないでしょう。「見え味」を除いて光学式の優位性がないからです。全視野がクリアな光学式ファインダーはコストが掛かります。ましてや視野率 100% となると高い技術力が求められます。それに対価を払う人はいまや少数派です。

 「酸化セリウムの先生」がよく口にする、「デジカメは写真機ではなく電気製品だ」との指摘は当たっていると思います。電気製品に精密な光学式ファインダーは贅沢であり不釣合いに感じます。日常的な記録はスマホのカメラ機能で済ます時代です。
 それでも、写真機と呼べるデジカメの存在意義はあると思います。フィルムが撮像素子に置き換わっただけの従来型のカメラを求める人が、一定数いるからです。デジカメは電気製品と写真機に、さらに二極化されていく気がします。

2012/10/03(水)銀塩カメラが古物でなくなる日

 商売で中古品を扱う場合は、古物商許可証の取得が必要です。なくてもヤミで売り買いはできますが、何かあったときに許可証がないと、当局からコッテリ絞られます。
 許可証を持っていても古物台帳がきちんと記載されていないと、これまたコッテリ絞られます。お婆さん一人で切り盛りしていた中古カメラ屋で、古物担当の警察官が「今回はお目こぼしだが次回はダメだからね」と怒鳴り散らしてました。あのバアさんにきちんと帳面をつけろというのは無理難題でしょう。

 古物商の申請をするときには、扱い商品を決めないといけません。十数種類の分類の中に「写真機類」というのがあります。これで申請して古物商許可証の交付を受けても、それ以外の中古品を扱うことは不可です。パソコンも扱うなら「事務機器類」、ゲーム機まで手を広げるなら「道具類」も併せて申請します。

 「金券類」も古物の扱いですが、商品券や郵便切手などは中古品とは違うから、古物という言い方は変な気がします。古物の定義を調べてみたら、「一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、又はこれらのものに幾分の手入れをした物品を『古物』といいます」となっていました。新品でも古物なんですね。

 電話をかけるためのテレホンカードは古物ですが、趣味で収集されたコレクションは対象外だそうです。同様に、郵便物を送るための切手だと古物で、趣味の切手は古物にならないんだとか・・・
 「その物本来の使用目的に従って取引されたものではない場合は古物でない」との解釈です。古銭なんかも除外品です。警視庁のサイトによれば、そのほかに、庭石、石灯籠、空き箱、空き缶類、金属原材料、被覆のない古銅線類が、古物の対象外となっていました。

 庭石が対象外なら、庭の木を引き抜いて誰かに転売しても古物取引にはならないはずです。外構工事業者に古物商許可証は無用のようです。リサイクル関係も製品として転売しない限り同様です。
 許可証を持っていないカメラ店でもジャンク品は除外品だから販売できます。本来の使用目的に従った取引ではないからです。もしフィルムがこの世から姿を消したら、銀塩式の中古カメラは本来の使用目的である写真撮影ができなくなり、古物ではなくなります。まさか日本刀や火縄銃みたいに、美術品や骨董品の仲間入りということはないでしょう。

2012/10/02(火)古物商の行商と制限

 手元にある「古物商許可証」を開いてみると、許可番号、公布日、都道府県公安委員会名と印、その下に「氏名または名称」と生年月日、「住所または居所」となっています。法人の場合はその下に代表者の名前と住所が記載されます。個人の場合は関係ないのですが、法人は代表者が変わると届出が必要です。
 最後に「行商」という項目があって、私の場合は「する」に丸がしてあります。行商しない人は「しない」に丸なんでしょうね。(都道府県で違うかも)

 相手先に出向いて古物の売買をすることがあるようなら、行商する旨を申請します。スタジオ設備は相手先まで出向かないと撤去できないので、「行商する」で申請しました。行商で申請すると定期的な更新が必要だという話を昔聞いた記憶がありますが、そんなことはないそうです。とくに難しい手続きはありませんでした。

 カメラの大売出しでは、よく下取セールを謳い文句に使います。中古カメラの専門家を招いて、無料で査定してくれる店もあります。そこがカメラ店の店内ならいいのですが、どこかの展示場を借りていた場合はいろいろと問題があります。行商の認可を取っていても、そこでカメラを買い取るのは御法度だからです。
 中古カメラを売る分には問題ありません。買い取ることがいけないわけです。その根拠は・・・

 警視庁のサイトによれば・・・古物商以外の一般の方(法人も含む)から、古物を「買い受ける」「交換する」「売買の委託を受ける」「これらの契約をする」ことは、「自身の営業所」、「相手方の住所等」でなければできません。出店先での買い取り等は、その契約行為の一部も含めて違反となります・・・となっています。

 出展先、つまり展示場やデパートの特設売り場でカメラを買い取ることは法に触れることになります。デパートの場合は、常設のカメラ売り場があれば、そこが買い取る形にすればクリアできかもしれません。「自身の営業所」での取引と見なせるからです。でも、カメラ店が臨時に借りた展示場では認められないでしょう。そこでは下取セールを打ち出せないことになります。

 実際には、展示会で下取交換の商談をしても、御用になることはまずないみたいです。もしあったとすれば、同業他社がチクったんでしょうね。警察も含めて、役所は事なかれ主義だから・・・
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