2012/10/28(日)カメラはテレビの轍は踏まない?

 テレビ番組で評論家が、日本のカメラ産業は中韓に抜かれないと豪語した背景には、フィルムからデジタルへの転換を見事成し遂げた実績が挙げられます。危機を乗り切った経験があるカメラ産業は、世界トップの座にあぐらをかいていた薄型テレビとは違う、との言い分です。

 日本のカメラメーカーがアナログからデジタルへの転換ができたのは、世界市場を握っていたからだと思います。海外に競争相手がいないことで開発時間にゆとりができたとみるべきでしょう。薄型テレビのように外国勢が猛追していたら、ひとたまりもなかったかもしれません。
 フィルム式の 135SLR ボディーを流用し、一回り小さな APSC フォーマットでしのげたのは、一眼レフメーカーにとってはラッキーでした。

 当時のデジタル一眼レフで注目したいのは、CONTAX N デジタルです。なんと!フルサイズの CCD を採用していました。キヤノンの EOS-1Ds が同時期、ニコンはまだフルサイズ機が出せていない時代です。価格は約 80 万円でした。
 2002 年発売の N デジタルは、3年後に京セラがカメラ事業からの撤退を発表し、短命で終わりました。もし京セラがカメラ事業から撤退していなければ、国内カメラメーカーの動きは少しは違っていた可能性があります。あるいはシェアを握っていないメーカーが及ぼす影響など微々たるものだったかもしれませんが・・・

 京セラやコニカミノルタは撤退しましたが、ほかのカメラメーカーは踏みとどまることができました。吸収合併や資本提携があったものの、いままで蓄積した技術が海外に流出しなかったのは幸いでした。
 将来的なユーザー獲得を期待して、いままで利益の出ないコンデジ市場で不毛な価格競争を続けてきた国内メーカーは、いま岐路に立たされています。スマホが写真人口の拡大に寄与するとすれば、スマホを制する企業が次のステップを握るかもしれないからです。

 1万円前後で買えるコンデジが、同じブランドの一眼レフ購入に結びつくと考えるのは、ちょっと論理的な飛躍があるように感じます。ただし、スマホのカメラブランドが低価格のミラーレス機にまで影響を及ぼす可能性は十分あります。それを死活問題とみるメーカーもあるでしょう。

2012/10/27(土)日本のカメラ産業は中韓に抜かれない?

 ほんの少し前まで薄型テレビは日本の家電メーカーが世界のトップだと思っていたのに、いまや韓国勢に抜かれて青息吐息の状態です。家電各社の大幅赤字の要因にもなっています。部品を組み立てるだけで製品が作れることは、パソコンで経験済みです。液晶テレビも同じ轍を踏むと予測できなかったのは不覚でした。

 この前テレビを見ていたら、日本のカメラ産業は世界トップで、将来にわたって中韓に抜かれることはない、と評論家が豪語していました。本当でしょうか?
 その評論家が挙げた根拠のひとつは、カメラはレンズも含めたシステムで成り立つ精密機器という点です。日本企業のノウハウは、そう簡単に真似されたり抜かれたりするものではない、との言い分でした。確かにそれは言えていますが・・・

 ウォークマンが iPod にやられたように、スマートフォンのカメラ機能では海外メーカーが主導権を握る可能性が大です。というか、世界的にはすでにそうなっています。スマホがすべてのカメラに取って代わることはないとしても、裾野の部分を海外メーカーに押さえられる可能性は十分あります。それを狙っているのが、スマホでリードする韓国のサムスンなど海外勢です。
 APSC フォーマットのミラーレス機サムスン NX100/200 は、ソニーの NEX シリーズに比べて見劣りしますが、伏兵として要注意です。国内メーカーがこの分野でもう少し稼ぎたいと欲をかいているうちに、価格戦略でスカッとやられるかもしれません。

 デジカメのサンプル写真の評価をみてもわかるように、高画質とは何かをきちんと判断できるユーザーは意外と少ないものです。フルサイズに比べて設計基準が緩い小型フォーマットで、そこそこ写るレンズを作ることは、昔ほど難しいことではないでしょう。
 大手一眼レフメーカーがフルサイズ化に踏み切ったのは、ミラーレス機の台頭だけではなく、ミラーレス市場に外国勢が参入してくるのを見てのことだと推察します。

 テレビ番組で評論家は、ニコン・キヤノンは車でいえば F-1 みたいなもんだ、と言っていました。F-1 の分野で生き残れても市場の大半を取られては、勝ち組とは言えないでしょう。国内メーカーにとって気の抜けない時代の到来です。

2012/10/26(金)すぐに壊れる?家電製品

 写真のデジタル化で、カメラは電気製品みたいな位置づけになってしまいました。家電メーカーが参入しているし、カメラメーカーだと思っていたキヤノンあたりは、電機メーカーを自称しています。株式市場の業種区分も精密機器ではなくて電気機器です。カメラメーカーは企業規模が小さくて、旧態依然の保守的なイメージがあるからでしょうか?

 カメラメーカーが家電製品に係わったのは、小型映画の主流がビデオカメラに変わったころです。OEM で自社ブランドのビデオデッキをこぞって発売しました。家で使っていた PENTAX は確か日立製でしたかね。
 懇意にしていた修理マンの話では、家電品のつくりが粗雑なのにはビックリしたそうです。こんな作り方で何年も持つわけがないと言っていました。カメラとは全然違うそうです。

 1年も経たないうちに次から次と新製品を出すのが家電メーカーのやり方です。すぐに旧式になってしまうから、ある程度使ったら壊れても仕方ないというスタンスなんでしょうね。
 カメラでそんな設計をしたら一発でアウトだと言ってました。考え方の違いに、かなりのカルチャーショックを受けたみたいです。

 そんな経験をしたせいか、カメラが電子化されると、普及型のコンパクトカメラは家電製品に近いつくりになります。日付機能のボタン電池がユーザーレベルで交換できない点を指摘したら、「5年は持ちますよ」という返事が返ってきました。(いつからそんな思考回路になったんだい)

 銀塩の時代は、新しいフィルムが開発されると、どのカメラでもその恩恵を受けることができました。いまのデジタルカメラは撮像センサーがはめ殺しです。短期間で新機種と入れ替わってしまうから、製品寿命はずいぶん短くなりました。
 フィルムカメラと同じような感覚で嗜好性を求めると高いものにつきます。デジタルバックが交換できる中判カメラはいいとして、撮像センサー固定の一眼レフに見え味のいい光学式ファインダーを求めるのは、贅沢の部類に入るのかもしれません。
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