2009/03/08(日)商品写真は拘りの塊
腕時計を撮るプロは腕時計しか撮らないし、オーディオ機器では、ウッドとメタルで撮影するカメラマンが替わることがあります。
なぜそうなるのかは、商品写真に対する拘りが、極めて高いからです。他社より少しでもよく見えるように、納得のいくまで追求する姿勢がなければ、第一線では活躍できません。
例えば、缶ビールの写真を撮るとします。
新聞や雑誌の広告に使う写真だと、用意するビールが1~2本ということはありません。最低でも1カートン用意します。
キズの問題だけではなく、プルキャップの位置が違うからです。製造工程上、ラベルの印刷とプルキャップの位置は、ランダムに変わります。一番見栄えが良いものを選ぶために、何十個かを用意するわけです。
プロの裏ワザといっても、特殊なテクニックだけではありません。こういう素材の選定への拘りが大事な要素です。
缶ビール以外に缶飲料のほとんどが、こうした下準備をして撮影されます。瓶ビールでも、王冠の向きがランダムだから同じです。
新聞広告だと、カラーでなくてモノクロ写真になる場合があります。ラベルはカラー印刷されていますが、モノクロでは色がつきません。目で見た感じを出すために、フィルターワークが必要です。
赤い色は、レッドのフィルターをかければ白く写ります。逆にシアンをかければ黒く写ります。どの色をどの濃度で表現するかは、フィルターワークでコントロールします。
あとからデジタルで画像処理をすれば、ある程度のコントロールは可能ですが、デザイナーの手をできるだけかけさせないのが、一流の写真家の仕事です。