2012/06/07(木)単焦点レンズの倍数系列

 ズームレンズがまだ普及する前は、単焦点レンズを何本か揃えるのが夢でした。交換レンズは高くて、そんなにたくさん買えなかったから、標準レンズのほかにワイドを1本、望遠を1本追加するのが最もポピュラーな組合せです。ワイドは 28mm、望遠は 135mm が売れ筋でした。

 レンズを3本持っていた人は、まだいいほうです。標準レンズ付で買ったまま、交換レンズを買わない人が多かったと言います。昔も今も同じですね。交換レンズの購入比率が一番高いニコンですら、2本台だという話を聞いた記憶があります。
 レンズ交換式の一眼レフを持っていることが、時代のステータスだったわけです。交換レンズを持っているかどうかは、二の次でした。

 趣味で写真を撮る場合、どのレンズを購入したらいいかは、カメラ雑誌などで盛んに議論されていました。まず 28mm と 135mm があれば、広角と望遠効果が楽しめます。それで足りない場合は 21mm と 300mm まで跳ぶことで、少ない本数で広い範囲がカバーできるという説がありました。

 もうひとつの説は、広角は標準の 0.7 倍、望遠は2倍の比率で揃えるというものです。広角は 35mm と 24mm、望遠は 100mm と 200mm という系列です。こちらのほうが実戦的かもしれません。
 実際には、ポートレート写真を撮る人は、大口径の 85mm を基準にしたり、スナップ写真が得意な人は、ワイド系を 35mm と 28mm の2本で固めたりと、人それぞれでした。

 ワイド側まで含む標準ズームの普及で、これらの倍数系列はあまり意味がなくなりました。ズーム2本あればほとんどカバーできます。高倍率ズームなら1本でも可能です。
 レンズ交換ができるカメラを購入したのに、交換レンズを買わないユーザーが増えているそうです。標準レンズが単焦点の 50mm だった時代でもその傾向はあったから、ズームレンズ全盛時代では当然かも?

 写真を撮るためのレンズの要素は、焦点距離だけではありません。開放 F 値やディストーション、最短撮影距離など、ズームレンズでは満足できない部分があります。写真が趣味の人にとって、自分の好みに合う単焦点レンズがどれかは、昔も今も変わらないテーマだと思いますがねぇ。
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