2012/08/28(火)ズームレンズとAF機能

 個人的な主観でいうと、写真を撮る行為は、構図を決めたら露出を測り、ピントを合わせてから、いい瞬間を狙ってシャッターボタンを押す・・というのが一連の流れです。
 この中で、とくに難しいのは露出です。日中の景色なら天気の加減をみて、山勘でも何とか写りますが、朝夕や室内の露出を決めるには露出計が必要です。昔は自動露出どころか、露出計が内蔵されてないカメラがありました。カメラの進歩は、「露出計内臓」→「自動露出」→「オートフォーカス」の順番でした。

 ズームレンズは、かなり前からありましたが、初期のものは写りが悪いほかに「高い」「暗い」「重い」の三拍子が揃っていて、一般にはあまり普及しませんでした。使われたのは、ズーム機能にお金を出す価値のある業務用途か、金持ちの道楽くらいでした。
 ズームレンズが一般に普及するのは、レンズ設計にコンピューターが利用されるようになってからです。それまで計算尺を使って設計していたのが、電子化で開発が一気に進みました。「このレンズを作るのに計算だけで2万年」なんて話をよく聞かされたものです。

 カメラの電子化が進むと、露出だけでなくピント合わせも自動化されます。一眼レフのセットレンズは AF 化される少し前に、単焦点の標準レンズからズームレンズに変わっていました。当時は 35-70mm が主流です。オートフォーカスとズームレンズの組み合わせは、購買層の拡大とともに写真の世界を一気に広げました。
 一眼レフを使って写真を撮るのは、決して難しいことではなくなりました。写真の大衆化です。この流れは、デジタル化された現在まで引き継がれています。

 いまどきマニュアルフォーカスのデジタル一眼レフなどありません。ましてやマニュアル露出のカメラなど皆無です。(現行品のマニュアル機はフィルム式のニコン FM10 のみ)
 写真を撮るのに高いハードルだった露出とピント合わせが自動化され、高倍率ズームの登場でレンズ交換も不要になりました。
 人物写真では、カメラが勝手にトリミングして構図を提案するところまできています。風景写真では、ピントの位置や絞りの組み合わせを変えて、被写界震度の違うコマを同時に記録するなど、さらなる自動化が進むかもしれませんね。

2012/08/27(月)身近にあったバリフォーカルレンズ

 バリフォーカルレンズ(可変焦点レンズ)というのは、あまり聞きなれない名前です。焦点距離を変えてもピント移動しないものをズームレンズ、ピント移動するものをバリフォーカルレンズと言います。カメラ用のレンズは、ほぼすべて一応ズームレンズということになっています。

 バリフォーカルのほうが、設計に無理がないぶん高性能でもコストが抑えられると言われています。それを逆手にとって、高性能・低価格を売り文句にしたレンズがありました。バリフォーカル・ヘキサノン AR35-100mm F2.8 です。
 当時(40 年前)は、広角から望遠までをカバーし、大口径のコンスタント F ナンバーなんて、夢みたいなスペックでした。ズームレンズでは無理・・・という暗黙の了解がありました。コニカの一眼レフ用ということもあり、あまり数は出なかったようです。

 一眼レフが AF 化されると、レンズ単体だとバリフォーカルではないかと思えるものが現れます。常時 AF 機能を働かせることで、ズーミング中のピントのズレをカメラ側で補正するやり方です。撮影者は普通のズームレンズと同じ感覚で使用できるから、問題ないのかもしれませんが・・・

 最初に気づいたのは、ミノルタのαxi シリーズが出たときです。発売前にデモ機を借りることができたので、テスト撮影してみました。カメラを構えた時点でピントが合うアイスタート方式を採用していました。カメラを構えている間は、常に AF 機能が働きます。
 xi レンズは電動ズームでした。これで評判を落として EOS に抜かれたという人もいます。いまなら動画用に重宝されるでしょうが、当時は不評でした。ズーミングするとピントが一瞬外れるときがあります。アイスタート機能を切って試してみると、かなりピント移動します。(これってバリフォーカルじゃん!)

 発売前のデモ機だったので、製品版と仕上り具合が違ったかもしれません。それでも、常時 AF 機能を働かせれば、多少のピント移動があってもズームレンズで通ってしまうのには驚きました。
 AF 機能がついた監視用カメラのレンズは、きちんとバリフォーカルレンズと表示しています。なじみがないと思ったら、意外と身近なところで使われているんですね。

 単焦点はマニュアルフォーカス、ズームレンズはオートフォーカスというのが、自分の撮影スタイルです。単焦点が AF でもいいのですが、当時のツァイスレンズはマニュアルしかありませんでした。一般的に単焦点のほうが高画質です。あえてズームにするときは、速写性重視で AF 機を使うことにしていました。

2012/08/26(日)レンズの収差をソフトで補正

 フィルム式からデジタルカメラになって変わった点はいくつかあります。デジタルならではの特徴のひとつとして、レンズの収差をソフト側で補正する方式が挙げられます。樽型や糸巻型の歪曲収差を補正して、歪みのない直線的な表現が可能になりました。
 ビオゴンでなくてもディスタゴンでいいわけです。フィルム時代の銘レンズは、デジカメだと周辺光量が不足したり、画面の周辺が色被りしたりして、まともに使えないものがあります。収差を補正するための特殊な光学系が必要なくなれば、レンズ設計の自由度が高まります。

 交換レンズは、自社のカメラで使う分にはソフト側で補正できますが、最近はマウントアダプターを使って他社のボディーに装着する人もいます。使い物にならないレンズが続出するかもしれません。これでは困ります。
 とくに m4/3 を含む 4/3 規格は、同じ陣営ならどのメーカーのボディーとレンズを組み合わせても、きちんと写るのが建前です。互換性が保証されないとシステムの信頼性がなくなってしまいます。

 一方、レンズが交換できない一体型は、互換性の問題がないのでメーカーの自由裁量です。かなりの機種がソフト側で補正する方式を採用していると思われます。要はきちんと写ればいいわけで、これでレンズの設計が簡素化され、小型化とコストダウンが図れれば、ユーザーにも大きなメリットになります。
 カメラに詳しい人は、撮像センサーが CCD か CMOS か、フォーマットサイズはいくつかなど、細かいところまでチェックしているようですが、一般ユーザーは 1/2.3 インチだからどうこういうことはなさそうです。それよりも高倍率ズームのほうに興味があるみたいです。超ワイドから超望遠までの高倍率ズームは、小さなフォーマットと補正技術で成り立っています。

 焦点距離を変えてもピントがズレないのをズームレンズと呼んでいます。焦点距離が変わるとピント位置も変わってしまうのをバリフォーカルレンズと言います。レンズ一体型のカメラは、バリフォーカルでもズームレンズのように見せることが可能です。AF 機能を常時働かせれば、ズーミングによるピントのズレを自動的に補正できるからです。
 設計上の制約がなくなればコストダウンが図れます。30 倍ズーム付のカメラが2~3万で買えるなんてのは、フィルムの時代には考えられないことでした。
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