2012/11/27(火)高画素化で単焦点が復活

 ズームレンズ全盛で、単焦点レンズはマイナーな存在に押しやられましたが、ここへきて復活の兆しが出てきました。デジカメの高画素化が要因のようです。モニターでピクセル等倍にして鑑賞する人が増え、レンズのアラがよくわかるようになりました。

 フォーマットサイズの小さな撮像センサーは、高画素化により解像力が上がったことで、レンズの解像力が相対的に低くなる傾向があります。ズームレンズよりも単焦点レンズのほうが画質が良いという一般常識が、再認識される環境が整ってきました。
 それはそれでいい傾向ですが・・・

 モノクロ写真時代のように解像力至上主義が復活するのではないか、との危惧もあります。一般的にレンズ設計で、解像力とコントラストは二律背反の関係にあります。解像力を上げればコントラストが低下し、コントラストを上げれば解像力が落ちる・・・
 わかりにくい概念ですが、例えば白黒のテストチャートを写したとします。細かく解像するレンズは薄いグレーの紙に濃いグレーの線になり、白地に黒い線で写るレンズは細かい線が解像できない・・そんな感じです。

 モノクロ写真は現像・プリント段階である程度コントラストが調整できます。解像力の高いレンズが良いレンズとされてきました。それに一石を投じたのはカールツァイスです。カラーリバーサルフィルムのような現像処方が一定の感材では、コントラストの高いレンズが評価されました。
 カラーフィルム全盛時代には、解像力とコントラストのバランスを重視するようになります。 MTF という概念が定着したのもそのころからです。

 デジタル画像は、コントラストの調整が簡単にできます。解像力の高いレンズで撮影し、画像処理でコントラストをコントロールする方向に向かうのではないかと推察します。レンズマウントが同じでもデジカメ用のレンズはフィルム撮影に向かない可能性があります。逆に、フィルム時代のレンズは、コントラストは高いものの、等倍鑑賞したときに解像感に欠けるかもしれません。

 いずれにしても、ズームレンズよりも単焦点のほうが、収差が少なく解像力の高いレンズ設計がしやすいのは事実です。同じ明るさならコストダウンでき、同じコストをかければより明るいレンズができます。
 撮像センサーの高感度対応で、無理してまでレンズを明るくする必要性は薄くなりつつあります。明るさを抑えれば、より高画質で低コストのレンズ設計が可能です。超解像技術を使ったデジタルズームの登場で、単焦点レンズの利用価値はますます高まると踏んでいます。
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