2012/05/22(火)モノクロの赤外線写真

 「酸化セリウム」の先生が、ライカMモノクロームを買うかどうかは、赤外線写真が撮れるかどうかにかかっています。もし IR カットフィルターが装着されていて、赤外線写真が不可だったら買う可能性はほぼゼロです。
 IR カットフィルターは、カラー写真の発色を整えるためだから、モノクロ専用機には装着していないと思いますが・・・

 撮像センサーの感色特性にも因るでしょうね。赤外感度が低い場合はフィルターは不要ですが、赤外線写真には向かないことになります。逆に赤外感度が高い場合は、視覚に近づけるために IR カットするかもしれません。可視光線のほとんどをカットしない限り赤外効果は出ないくらいだから、わざわざカットするまでもないのでは?
 現時点で詳しいスペックは不明ですが、モノクロ専用を謳う以上、ライカが赤外線写真のことを考慮していないなんて、考えたくもない話です。

 ライカのホームページには、「20種類以上のモノクロフィルムの特長を再現する機能も備え、モノクロフィルムの雰囲気を画像にもたらすことができます」というほかに、「各種モノクロフィルムを複数分析してそれぞれの質感を再現しており、ISO 32からISO 3200までの人気フィルムの特性をリアルに再現できます」とあります。感色性についての具体的な記述は見当たりませんでした。

 「酸化セリウム」の先生が愛用していたのは、コニカミノルタの赤外白黒フィルムでした。ブローニーを 100 本入りの元箱で買っていました。とうの昔に製造中止で、もちろん手元にはもう残っていません。
 「デジカメで赤外線写真は撮れん」と、嘆いてました。天体写真用に改造されたボディーは使えるかもしれません。ただし H α線以外の赤外領域は、あまり期待しないほうがよさそうです。

 今回発表のライカMモノクロームには、もうひとつの興味があります。独特の味とか空気感などと評されるライカレンズの特性が、フィルムと同じように再現されるかどうかです。
 結果はどうあれ、たとえデジタル式でも、モノクロ写真の文化が継承される端緒になればと思います。

2012/05/21(月)モノクロセンサーでカラー写真

 いままで市場に出た民生機のデジタルカメラは、すべてカラー写真を前提にしています。エフェクト機能でついているモノクロモードは、カラー情報を破棄するだけでした。
 今回ライカから発表されたモノクロ写真専用のデジタルカメラは、写真を撮ることについて、フィルム式とデジタル式の違いと類似性を再認識させてくれた気がします。

 違いのひとつは、デジタル式は「フィルム」を選べないことです。デジタルだから当然の話ですが、ここで言う「フィルム」とは撮像センサーのことです。ボディーごと替えるしかありません。
 フィルム時代でもそれは似たようなものでした。途中で抜かない限りフィルムは替えられないから、ボディーを複数用意していた人は結構いました。ネガとリバーサルとか・・・

 カラーリバーサルフィルムには、発色カプラーを含む内式と、現像時に加える外式がありました。内式の代表格はエクタクローム、外式はコダクロームです。外式の濃厚なねっとりとした発色は、内式にはない独特の雰囲気がありました。ベルビアが登場するまでは、コダクロームが作品志向の人たちにとって欠かせないフィルムでした。

 発色現像をしなければ、コダクロームはモノクロフィルムと同じです。つまり、モノクロセンサーに三色分解フィルターをかけてカラー化するのは、外式と同じ発想です。
 とはいっても現像のときに3回発色させるのと、撮影時点で3回露光するのとでは、手間がまったく違います。現像は自分がするわけじゃないし・・・

 それでもフルサイズで 1800 万画素のモノクロセンサーから得られる単色カラー画像を重ねた写真は、中判センサー並みのクオリティーになるのではないかと想像しています。
 それと発色ですね。三原色に分解された画像データから合成される画は、ベイヤー配列のセンサーで撮られたものとは、ひと味もふた味も違うはずです。ここまでくると、カメラの性能というよりは、画像ソフトと処理技術の問題だと思いますが・・・

 ところで、今日の金環食は運よく晴れて見えました。予想どおり皆既日食みたいには暗くならなかったですね。金環食寸前にトイレに行ったら、暗くて電気を点けたので、かなり光量は落ちていたみたいです。何事も実体験してみることです。

2012/05/20(日)3色カラー分解の話

 デジタル黎明期には、商品撮影する場合、モノクロセンサーにカラー分解フィルターをかけて多重露光をしていました。ドラム式スキャナーと同様、業務用途はクォリティーが第一です。モデルなど動く被写体には使えませんが、ブツ撮りで高画質を得るには有効な方法でした。

 先日発表されたライカMモノクロームは、モノクロ写真専用機です。ではカラー写真が撮れないかというと、そんなことはありません。もちろんカメラ本体にはその機能はありませんが、三色分解フィルターをかけ、最低3回露光して合成すれば、カラー画像が得られるはずです。
 カラー分解には市販の BP(バンドパス)フィルターを使います。単純に、赤・緑・青の3種類です。かなり濃いフィルターです。フィルターの露光倍数や各色の露出をどうするかなど、結構複雑な要素が絡んできます。画像処理するソフトによっても違ってくると思います。

 もしカラーフィルムと BP フィルターを使って三色分解する場合は、フィルターの露出倍数を加味した適正露出の 1/3 で、3回多重露光すれば、フィルターなしと同じ結果になるはずです。ところが・・・
 実際にはカラーバランスが崩れます。たいていは赤っぽい画になるようです。おそらく G の要素が足りないからだと思います。カラーフィルムの感色性は、人間の色感覚に近づけてあるので、理屈の上では均等に 1/3 ずつ露光すればいいはずですが、そうならないのが三色分解の難しいところです。

 モノクロセンサーは、人間の色感覚など考慮されていないので、三原色を均等に露光すると G の要素が不足します。1/3 ずつではなくて、G を 1/2 にすれば、ベイヤー配列と同じ比率になります。(実際の配分比率は別)
 このあたりは画像処理ソフトによって違ってくると思われます。いずれにしても、普通のカラー写真が欲しいのなら、こんな面倒なことはせずに、市販のデジカメを使えばいいことです。わざわざモノクロセンサーで三色分解するのは、普通の発色ではない画像を得るのが目的です。
OK キャンセル 確認 その他