2012/06/13(水)直進ズームと回転式

 フィルム時代の一眼レフ用ズームレンズには、ズームリングを回す回転式のほかに、フォーカスリングを前後して大きさを変える直進式(摺動式)がありました。どちらも一長一短です。
 ご多分に漏れず、どちらがいいかの論争が、カメラ雑誌などに掲載されました。古くは「バヨネットマウントかスクリューマウントか」、「開放測光か絞り込み測光か」、「絞り優先かシャッター速度優先か」なんてのもありましたね。

 オートフォーカスになる前は、直進式が多かったように思います。ピント合せとズーミングの二つの操作を一つのリングでできるのは、速写性があって便利でした。摺動部分が複雑で、コスト的には回転式より高くついたみたいです。それでもスナップ写真やスポーツ写真の愛好家は、直進式を支持していました。

 カメラを三脚に据えてじっくり撮る風景写真では、直進式のメリットは少なかったと思います。マクロ撮影のときに、レンズの重みで勝手にズーミングしてしまうなど、デメリットのほうが目立ちました。
 最長側にして机の上に立てると、自動的に最短側にしぼんでしまうレンズもありました。逆に、肩からカメラを下げていると、知らない間にレンズが伸びきってしまいます。ロックボタンを付ければいいという問題ではないような・・・

 一眼レフの AF 化で、ピントリングを回す必要がなくなりました。手で操作するのはズーミングだけです。直進式にする利点がなくなり、回転式に統一されました。
 ズームレンズを使うなら AF 機という考えがあって、MF ズームは2本残っているだけです。そのうち1本が望遠系で直進式です。個人的には回転式のほうが好きでした。

 カメラを構える前に、レンズの焦点距離を先に決める習性がついていたので、直進式に魅力は感じませんでした。レンズの焦点距離を決めて、自分が動いて被写体との距離を変えるのが撮影の基本です。その場で画角が変えられるズームレンズは、写真をズボラに撮るメタボな道具になりがちです。

 性能的にずいぶん良くなったとはいえ、ズームレンズは「暗くて重くて大きい」のが難点です。小型軽量化が進み、量産効果で価格は安くなりましたが、明るさと描写力は単焦点レンズにかないません。速写性を重視する撮影や、機材の総量を抑えたいとき以外は、いまでも単焦点レンズを重用しています。
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