2008/10/05(日)葬儀用の合成写真

 葬式の祭壇に飾る遺影写真は、デジタル時代になる少し前から、回線を使って全国と修整画像をやりとりする業者が市場を握りました。しかし、それ以前は長い間、地元の写真店が請け負っていました。

 葬儀屋から持ち込まれた写真を複写して、四つ切のプリントにします。エアブラシで背景を消してから額装すれば、遺影写真になります。
 仕事が丁寧なところは、もう一度複写してからプリントしていました。あとで焼増しの注文があっても、すぐに対応できます。

 エアブラシを使わないところもありました。大抵は写真館です。
 一旦四つ切程度に引伸ばした写真を切り抜いて、背景のない亡くなったひとだけの元原稿を作ります。ライティングした背景の前に、切り抜いた人物の原稿を置き、撮影します。
 実体の人間ではなく、写真を人物に見立てて撮影するわけです。輪郭を馴染ませるために、切り抜いた写真の切り口を黒く塗るのがミソとか。職人芸ですね。

 亡くなったその日にお通夜という場合もあるから、かなり忙しい仕事です。複写-現像-プリント-切抜-撮影-現像-プリントと、いくつもの工程を数時間のうちにこなさなければなりません。
 預かった元の写真が、結婚式の集合写真だったら、相当な手間がかかります。顔が小さいうえに、大抵は絹目の印画紙なので顔に格子状の影が出ます。重なった隣のひとも消さないといけないし・・・
 アナログ時代の葬儀写真は、かなりの技術が必要でした。

 デジタル時代になって、背景消しや修整は楽になりました。そのかわり、地元の写真店は葬儀写真の仕事を失います。「ブラシ屋」という職業は、姿を消してしまいました。
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