2009/07/10(金)大判カメラのピント合わせ

 蛇腹式の大判カメラは、レンズが直接投影する像をピントグラスで確認して、フレーミングとピント合せを行います。レンズを通った結像は、倒立した状態となります。

 ピントグラスは、真ん中は明るくハッキリ見えますが、周辺は暗くてよく見えません。6x7cmや6x9cmなら、フレネル式のピントグラスが使えるので、隅まである程度は明るく見ることができます。問題は4x5インチ以上のときですね。

 大判カメラのピントは、ルーペをピントグラスに当てて確認します。磨りガラスを拡大して見ることになるので、あまり高い倍率だとピント合わせができません。4倍くらいが見やすいですね。高くても6倍までです。
 ルーペの先についている透明な袴の一部を斜めに切り落として、周辺部がよく見えるように傾けて使える工夫をしている人もいます。

 被写体の細部を確認したければ、別の方法があります。「酸化セリウム」の先生から教わりました。彼はシノゴのエキスパートです。
 ピントグラスを使ってピントを合わせたら、ピントグラスをカメラから外します。レンズからくる光をルーペで直接見るためです。いわゆる空中像です。

 これが実によく見えます。望遠鏡と同じ原理で被写体を見ることになるから、一部しか見えませんが、拡大像なので目で見るよりも細部が確認できます。周辺部を見るときは、ルーペを傾けると見やすいですね。この方法なら画面の隅までハッキリ確認することができます。

 このやり方を編み出したのは、商品撮影のときに、細かいホコリや指紋がついていないか確認する必要があるからだそうです。目で見るよりもよく見えるので、うっかり見落としそうな細かいホコリや汚れもチェックできます。

 ひとあたり被写体を見回して、OKということならピントグラスをカメラにセットして、もう一度ピントを確認します。
 空中像は、視力によって合焦位置が変わるので、ピント合わせには使えません。あくまで被写体の状態を拡大して見るだけです。

2009/07/09(木)老後の趣味は8×10

 歳をとるとファインダーを覗いてフレーミングしたり、ピント合せをしたりするのが億劫になります。その点、8x10インチのラージフォーマットは、画面が大きくて見やすいですね。
 画像が倒立しているのが難点ではありますが・・・

 現役を引退した写真愛好家には、バイテンは魅力のあるフォーマットサイズです。とにかくフィルム画面がデカイので、画質は並のデジカメが及ぶ世界ではありません。
 デジタルでシステム価格が数千万円(ちょっと前なら億!)はする高画質が、カメラとレンズを含めても数十万円からスタートできるのは、銀塩のなせるワザです。
 まぁ、現像処理をどうする?という問題はありますが・・・

 バイテンのカメラは、ディアドルフが一種のステータスとなっています。アメリカ製の大判カメラです。木製のフィールドタイプなので、8x10のなかでは小型(?)軽量ですが、暗箱だけでは写真は撮れません。
 カメラのほかに、レンズ・カットホルダー・冠布・ルーペ・大型三脚が必須となります。全部合わせると、かなりの量(かさ)と重量になります。

 鶴さんの話では、1日で涸沢まで行って、8x10で写真を撮ってきた強者がいたとか・・・
 定期バスで上高地に入り、重量機材を担いでその日のうちに涸沢まで行くだけでも、ハイシーズンだとかなりの強行軍です。普通は横尾あたりで1泊して・・というのが、一般ハイカーのコースです。

 立山の室堂平で8x10をドッカと構えていたカメラマンがいました。完全に風景の一部になりきっていました。立山連峰の山々を背景に、そのカメラマンを点景にして、ティアラでパチリです。(ごめんなさいね)

 いつか自分もリタイアしたら、ああいう風に8x10をドッカと据えて写真を撮る日がくるのでしょうか? あの雲があそこまできたらシャッターを切るか・・なんて、パイプをくゆらせながら、自然との触れ合いを楽しむ・・・ 夢ですね。

 銀塩手法に固執するつもりはないけれど、8x10をフラットベッドスキャナで読み込んで・・というのは、やはり抵抗があります。そんなアナログ人間を尻目に、若い世代はバイテンとデジタルの融合を模索しています。

2009/07/08(水)8×10判の引伸ばし

 銀塩最後の砦みたいな8x10(エイトバイテン)ですが、結婚式の撮影にはお呼びでないようです。
 昔からやっている写真室でも、4x5(シノゴ)を使っているところは少なくなりました。50人程度の集合写真は、ブローニーで済ますのが普通です。最近では、集合写真までデジタル化したところもあります。

 「酸化セリウム」の先生と話していて、8x10の引伸ばしをどうする?という話題になりました。5x7インチは先生のダーストがあるけど、8x10の引伸機はありません。
 8x10インチは印画紙の六切と一緒だから、密着プリントするのが手っ取り早い方法です。余白か余黒が欲しければ、四切か半切の印画紙に密着焼きします。(余白はマスキングが必要です)

 大伸ばしするには、密着プリントをスキャナにかけて取り込み、デジタルデータ化するのが一番簡単な方法です。スキャナの性能にもよりますが、元のプリントより落ちるので、あまりお奨めできない方法です。
 フラットベッドスキャナーに透過原稿ユニットをつけてスキャニングし、デジタルデータからプリントアウト・・という手もあります。ただし元の原稿がアナログ原板である意味は薄れます。

 先生の御曹司は、モノクロのデジタル写真がメインテーマだから、きっとスキャナで読み込んで・・ということでしょうね。多分、透過原稿ユニットを使うと思います。
 大型プリンターを買ったそうだから、プリントサイズは何とでもなります。8x10に興味を持っているというところをみると、このプリンターを活かしたいのでしょう。135フルサイズのデジタル一眼レフでは、まだ力不足を感じるはずです。

 高画質が低コストで手に入るのがアナログの強みです。その利点とデジタル技術を併用すれば、低コストで高画質のデジタル写真が楽しめます。若い世代の発想は、「バイテンはこうあるべき・・」という固定観念に凝り固まったアナログ世代を越えていきます。
 8x10が手に入ったら、どういう作品ができるか楽しみです。
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