2012/12/09(日)フラッグシップ機はエレファントマン

 Nikon F は、各社フラッグシップ機のベースになりました。本体はメカニズムの塊で、露出計など電気的な機能はファインダー部分が請け負いました。プリズムファインダーが外れるのが高級機のステータスでした。
 フラッグシップ機が 10 年サイクルだった時代です。電子制御式シャッターユニットが開発されても、それを搭載したのはミドルレンジの別の機種でした。自動露出が素人向きと思われていた事情もあったようです。

 ニコンはニコマート EL、キヤノンは EF、ミノルタは XE、ペンタックスは ES2 が自動露出でした。フラッグシップ機が自動露出に対応してないのは、ユーザー心理としては物足りなさがあります。後発のミノルタ X-1 は、AE ファインダーを装着すると自動露出になりました。ニコンのフォトミックファインダーみたいに頭でっかちのファインダーです。
 キヤノン F-1 はサーボ EE ファインダーで実現しました。これまた巨大なファインダーユニットでした。TTL 露出計を内蔵しながら、すっきりスマートにまとまったペンタ部がウリだったのに、これでは台無しです。

 ご本家のニコンはというと、やはり F2 フォトミック S に DS-1 というパーツを装着して、シャッター優先 AE を実現しています。フォトミックファインダーの露出計と連動して絞りリングを回す方式です。カニ爪のメーターカプラーを利用して動かすというおぞましいものでした。
 こうしたやり方が通用したのは、Nikon F のフォトミックファインダーが起源だと思います。カメラに露出計を内臓するためにファインダー部が大きくなりました。頭でっかちが高級機の証し・・・みたいな変なイメージが定着していました。

 映画作品に、奇形で頭が肥大化したエレファントマンというのがありました。その姿から見世物小屋に売られるなど不幸な人生を送った人間の物語です。横になって寝ると頭の重みで死んでしまうと言います。最期は人としての尊厳を取り戻すために横になって死を選びます。
 フラッグシップ機は、さながらエレファントマンでした。

 露出計内臓のニコン F シリーズが頭でっかちでなくなるのは、1980 年発売の F3 からです。ニコンのフラッグシップ機はメカニカルシャッターから電子制御式シャッターに変わりました。これでファインダーの肥大化は終わったかに見えましたが・・・
 オートフォーカスに対応するため 1983 年に F3 AF が登場します。オートフォーカスファインダー DX-1 を搭載したモデルです。横から見た姿は、まさしくエレファントマンでした。(それともエイリアン?)
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