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2008年04月12日の記事

2008/04/12(土)AE-1の功績と功罪

 「連写一眼」でトップに躍り出たキヤノンAE-1には、功績と功罪の両面がありました。シャッター速度優先か絞り優先か、という論争は、プログラムオートの出現で鳴りをひそめましたが、シャッター速度と絞りの関係を知らしめる、よいきっかけにはなりました。

 もうひとつ功績(功罪?)があります。
 それまで、一眼レフが踏襲してきたダイカストボディーと金属外装の撤廃です。精度を命題とする一眼レフには、ダイカストをくりぬいた堅牢なボディーと金属の外装が常識でした。
 キヤノンAE-1は、鉄板を「コ」の字型に折り曲げた部品にパーツを組み付け、プラスチックの外装をかぶせた「紛い物」でした。一見必要ない?と思われる電子シャッターを組み込んでも低価格を実現できたのは、こうした型破りの発想でした。

 当時、他のカメラメーカーの技術者は、「あんなのはカメラじゃない!」と揶揄していましたが、トップシェアを取ったことで、「ま、それでもいいか・・」という空気に一変します。
 「勝てば官軍」ですね。

 それからしばらく経って、ミノルタの豊川工場を見学させてもらったことがあります。帯状の鉄板をプレスして「コ」の字型に折り曲げる機械がありました。
 「今ではこれが一眼レフの骨格です」と、工場の技術者が皮肉まじりに説明していました。すぐ横に、ダイカストボディーをくりぬく機械が展示してありました。「いまは使っていませんが・・」といいつつ、捨て難いという強い姿勢を感じました。
 自動車のボディーから頑丈なシャーシが消えたのと同じですね。堅牢性は落ちたかもしれませんが、軽量化と低コスト化には貢献しました。

 電子化でプリント基板を絶縁するのに、プラスチックの外装はうってつけでした。PENTAXもMEまでは金属製の外装でしたが、そのあとはプラスチック製に変更しています。
 それまで、ブラックボディーのほうが高く表示されていた価格は、シルバーと同じになりました。本当は、シルバー仕上げのプラボディーのほうが割高だったそうですが、過去の習慣から逆にすることはできなかったようです。

 近頃は、高級一眼レフで、ダイカストボディーや金属カバーをウリにしている機種があります。「本造り」というわけです。
 昭和40年代までの一眼レフなら、AE-1を除いて、普及機でもダイカストボディーで外装は金属でした。(ジャンク品をバラしてみればわかります)

 一眼レフカメラが「ステータス」ではなく、「消費財」に転落したのは、キヤノンAE-1の功罪かもしれませんね。
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