2010/12/23(木)一点物の着物

 呉服の世界では、よく「一点物」という言葉を耳にします。文字どおり1点しかない着物という売り文句ですが、本当に1枚しかこの世に存在しないかというと、はなはだ怪しい話です。

 染物の和服は、一柄を何枚かまとめて作ります。振袖なら一染め 10 枚、二尺袖(小袖)は確か 12 枚だったと思います。この時点ですでに一点物ではないはずですが…
 これにはカラクリがあって、同じエリアで2着ダブらないように、卸元が「交通整理」を行なっています。その商圏では他店で入手できないから一点物で通るわけです。

 懇意にしている呉服屋の社長は、「あなたが 10 着全部を受ければ、その着物のメーカーだと名乗ってもいい」と言ってました。そんなに買っても売る先がないから例え話ですが、その社長はまとめ買いをしているみたいです。
 業者向けの展示会で、積んである着物を「オール!、オール!」と指差しながら、とことん叩くんだとか・・・

 一度の商談で全部売れれば、製造元も折れて安くします。それを仲間に「交通整理」しながら卸し、利ざやを稼ぐビジネスです。お金の要る商売ですね。
 柄違いで1着ずつ買っていたのでは安くなりません。資金力のあるところが頭になってまとめ買いし、仲間で分けるやり方が定着しました。呉服業界には、こうしたグループがいくつもあります。

 不況感からか、大量に見込み生産するところが減っているそうです。売れる分しか作らないのが最近の風潮なんだとか・・・
 「オール!」と叫んでも乗ってくるメーカーがなくなって、商売がやりづらくなったと、そこの奥さんはボヤいてました。きっとダンナの元気がなくなったんでしょうね。
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