2012/12/05(水)魚眼レンズはニコンの十八番

 写真工業別冊の「ニコンのシステムとメカニズム」(1971)にニッコールレンズのラインナップが紹介されています。フィッシュアイニッコールが4本載っていますが、前に紹介した「ニッコールレンズ読本・第3集」とは顔ぶれが違います。
 掲載されているのは、6mm F5.6、7.5mm F5.6、8mm F2.8、10mm F5.6 の4本で、前の2本が「旧タイプ」のようです。8mm F2.8 以外はミラーアップして使うタイプで、専用ファインダーとセットになっています。

 画角 220°の 6mm は、後のタイプが F2.8 と明るくなり、ミラーアップせずに使えるようになりました。レンズの直径 236mm、重量 5.2kg と、化け物みたいに大きな魚眼です。以前ネットオークションで千数百万円で落札されたとかで、一時話題になりました。
 その前身がこの 6mm F5.6 です。画角が 220°もあると、2台並べたバイクの間の地面にカメラを仰向きにして置くと左右にバイクが道路ごと写ります。カメラ雑誌に載った写真を見て感心したものです。

 1974 年 2 月 1 日現在の価格表では、F5.6 が 24 万円、F2.8 はナント! 70 万円となっています。この価格表で 20mm から 300mm までの単焦点で 10 万円を超えるレンズは1本もありません。いちばん高いのが 180mm F2.8 の 85,000 円、安いのは GN 45mm F2.8 の 19,000 円です。そんな時代の 70 万円は、「車より高い」と話題になりました。ちなみに一番高かったのは、反射式 2000mm F11 で 80 万円です。

 全円周タイプの魚眼レンズは、気象観測や天体観測などの学術研究用で、一般ユーザーが購入することはありませんでしたが、憧れの対象ではありました。ズームレンズが特殊レンズ扱いで最後のほうに載っていたのに、魚眼レンズは一番初めに紹介されています。ニッコールの看板みたいなもんですね。他社からはキヤノンの 7.5mm F5.6 が供給されていた程度です。

 フィッシュアイレンズを使ってみたいユーザーの声を反映して、ケンコーから魚眼のフロントコンバージョンレンズが登場しました。50mm クラスの標準レンズに取り付ければ全円周魚眼に、100mm クラスの望遠レンズだと対角線魚眼になります。画質はともかく、手軽に魚眼レンズの効果を楽しめました。

 現在では、全円周タイプを供給している国内メーカーはシグマくらいでしょうか? あとはほとんどが対角線魚眼です。キヤノンの 8-15mm F4L は、フルサイズなら 8mm 側で円くなります。
 DX フォーマット用のフィッシュアイ・ニッコール 10mm F2.8G を FX フォーマットで撮れば、全円周になりそうな気がしますが、メーカーサイトにはその記述はありませんでした。単焦点の全円周魚眼は、新規の需要があまりないみたいです。
OK キャンセル 確認 その他