2010/12/22(水)1点物の写真

 「複製時代の芸術」と言われるように、写真は複製が可能です。ただし、苦労して焼き込みや覆い焼きをしたプリントが、同じように何枚もできるか?という問題はあります。

 デジタル写真の場合は、暗室処理と違って同じプリントが何枚も出力できます。新品のインクと切れかけのインクで、微妙に発色が違いますが、それは現像液でも同じことです。
 写真のデジタル化で、プリントの価値が軽くなった気がします。紙に出力しなくても観賞できるから、わざわざプリントしたことに価値があると言えなくもありませんが・・・

 複製可能な写真に、1点物というのはあるのでしょうか? インスタント写真はプリント自体が原板だから、1点物には違いありませんが、フィルムやデジカメで撮影した写真にも1点物が存在します。

 実物の紅葉をすきこんだ和紙があります。規格化された工業生産品ではないから、葉っぱの位置はランダムです。和紙をスキャナーで読取り、葉っぱとのバランスを考えて画像や文字をレイアウトします。下地のレイヤーを削除してプリントすれば、虚実入り混じった洒落た色紙が出来上がります。
 この紙を使ってプリントした作品は、印刷といえども1点物と言えるのでは?

 パノラマサイズの写真が普及し始めたころの話です。パノラマ写真は、横に広がったワイドビューというのが一般的な捉え方ですが、それを縦に使った人たちがいました。俳句や和歌が趣味のグループです。

 歌を詠んだ短冊と、縦位置の「パノラマ」写真とを並べて、額に入れて観賞するのが決まりでした。写真は複製可能ですが、短冊に書かれた歌は1点物です。額装された作品は、やはり1点物とみて差し支えないでしょう。
 ちなみに、額は円形が基本なんだとか・・・

2010/12/21(火)インクジェット用の和紙

 インクジェットプリンターは、給紙ユニットに通る紙なら何でも刷れそうですが、表面に凹凸のあるものは不向きです。安定した画像が得られないし、場合によっては印字ヘッドを傷めます。
 仮にユニークな画像が狙いだとしても、大量にプリントするのはやめておいたほうがよさそうです。

 市販品で、インクジェット用と銘打った和紙があります。慶弔の挨拶文などで需要があるからでしょう。水彩画や版画などの印刷も想定しているようです。
 写真の印刷に適しているかどうかは、実際に刷ってみないとわかりませんが、発売元で「写真に適合」としているものもあります。入手先は画材屋や文具店のほかに、ヨドバシやビックも取扱店リストに載っていました。

 市販品の和紙には加工処理がしてあって、表面が平滑で紙紛が出ないように配慮されています。片面しか処理されていないものは、両面印刷には不向きです。
 表面加工された和紙は、顔料・染料インク兼用のものが多いようです。顔料系はインクが表面に載る形ですが、染料系は紙にインクが染み込みます。未加工の和紙だと滲む可能性があります。

 結婚式の招待状を自作する際に、文章だけでなく写真も入れると親近感が増すと思います。とくに是非来てほしいゲストには、顔写真入りがお奨めです。
 和紙を使う場合は、紙質によってはカラー写真だときれいに発色しないことがあります。モノクロームのほうが無難かもしれません。カラー写真では品位に欠ける気もするし・・・

2010/12/20(月)モノクロのデジタル写真3

 フィルムに比べて後処理に融通性のあるのが、デジタル写真の特徴です。プリント仕上げが重要なのは銀塩と同じですが、ここでも用紙の選択肢が広くなっています。
 選択肢が広いということは、ミスマッチの可能性が高いことの裏返しでもあります。プリンターと用紙の組み合わせによって、印刷モードの設定を変える必要があります。これがやっかいです。

 フィルムの場合は、印画紙しか使えません。現像処理で多少の変化は出せますが、基本的に選択肢はひとつです。アートエマルジョンでも使わない限り、印画紙以外にプリントするのは不可能です。
 インクジェットプリンターは、和紙などに写真を印刷することができます。プリンターメーカーから供給されていない紙の場合、どのモードで印刷するかは、自分でテストして判断することになります。

 「酸化セリウム」の御曹司がコンテストで入賞した作品には、用紙に下地加工が施されていました。市販品ではなく自分で加工したオリジナル・ペーパーです。
 納得できる仕上りにするまでには、ずいぶん苦労したと思います。テスト刷りの紙が何枚も積んでありました。

 小型のプリンターでテストして、大型プリンターで本番・・という方法が使えないのが辛いところです。プリンターが変われば発色も変わります。インクとソフトが違うからです。
 愛用のプリンターが壊れて新型に買い換えた場合は、色出しテストを初めからやり直すことになります。

 モノクロはカラーと違って簡単では?と思う人もいるでしょうが、黒の発色とトーンはモノクロ写真の命です。
 昔から、「黒の締まりと白の抜け」と言われるように、シンプルなだけにシビアなのがモノクロ写真の難しいところです。
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