2009/08/09(日)レンズの当たり外れ
ひとつは、光学レンズの製造方法です。「るつぼ」に材料を入れ、熔解したあとに冷ましてから、レンズの基を取り出していました。
るつぼの中のガラスがすべて使えるわけではなかったようです。上質な光学レンズとして使えるのは、一部だけだったとか・・・
マグロの解体みたいなもんですね。熔かしたるつぼによって、出来不出来があったといいます。
均質なガラス材料を安定して取り出せるようになったのは、連続熔解炉が開発されてからになります。ニコンが稲川工場に設置したのが、1994年だから、まだ15年ほど前の話です。
それまでは、使ったるつぼによってガラスの特性が異なりました。すべてのレンズに同一のマルチコーティングを施しても、均一な品質になるとは限りません。ガラスによってコーティングを変えるのが、本当の技術だというメーカーもいましたね。コンビネーション・コーティングです。
多分にマルチコーティングで遅れをとった言い訳のようにも聞こえますが、それだけ微妙な世界だったのは間違いなさそうです。
組み立て技術のレベルによっても写りが変わります。交換レンズの製造工場を海外に持っていけなかったのは、この問題があったようです。
同じレンズでも何百本か何千本にひとつの割で、飛びぬけた性能のものが生まれたといいます。プロに提供したのは、こうした優等生のレンズでした。その反面、まったくダメなレンズもあったわけです。(そういうのは一般ユーザーの手に・・)
当時、コムラーの社長は、「コムラーというくらいだから、出来にムラがあるのは当然」と言っていたそうです。当たったら抜群の切れ味だ!と言いたかったみたいですが・・・
非球面レンズや高屈折率ガラスの登場で、組み立て精度は以前よりもシビアになっています。レンズの当たり外れは、いまでもあるかもしれませんね。