2011/11/08(火)デジカメのダイナミックレンジ

 写真の主流がフィルムからデジタル式に替わったときに、よく言われたのがダイナミックレンジの狭さです。デジカメの画像は、白トビ、黒潰れしやすいのが難点でした。

 実際には、画像情報をそのまま記録した RAW データのダイナミックレンジは、言うほど狭くなかったのですが、現像ソフトの出来具合もあったようです。
 とくにカメラ側で現像処理した JPEG 画像は、リバーサルフィルムと比べてもダイナミックレンジがかなり狭い印象を受けました。

 FUJIFILM が開発したスーパー CCD ハニカム SR Ⅱは、2つの素子を1素子とすることで、ダイナミックレンジを拡大できました。その代わり、画素数は半分になります。
 この CCD を搭載した FinePix S3 Pro の発表会で聞いた話では、感材部の連中は「デジタルもここまできたか」と驚いたそうです。プロ部(リバーサル部門)の人は、「それでもアスティアどまりだね」と言っていたから、ネガの広さにはまだかなわないとの評価でした。

 この技術は特許だそうで、他社は画素数を落として D レンジを広げる方法は採りませんでした。代わりに登場したのが、露出の違うコマを合成して D レンジを広げる「ハイダイナミックレンジ」(HDR)です。画素数を落とさずに広げられるのが利点です。
 難点は、時間差が生じるため動く被写体に不向きなことですが、連写速度の向上で、動きの激しい被写体でなければ、使えるようになりました。

 HDR 技術は RAW 現像するときにも威力を発揮します。Photoshop CS5 では、1コマの RAW データから白トビ・黒潰れのない画像を引き出す HDR トーンと、複数の RAW データを合成する HDR Pro が選べます。
 印刷段階でマスキングフィルムを駆使して行なっていた作業が、パソコンを使って個人レベルでできるのは、デジタル写真の利点のひとつです。

 デジタル写真はダイナミックレンジが狭い・・というのは、もう過去の話になりつつあります。解像度、高感度、連写速度と、フィルム時代を凌ぐ性能を獲得してきたデジタル写真が、ダイナミックレンジの次に超えるのは何でしょうか?
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