2011/11/14(月)フィルムの「裏面照射」

 デジカメの撮像センサーで裏面照射型が話題になっています。従来の方式では、上層にある回路部が邪魔して、センサーが受け取る光の量が減るのが欠点でした。裏面から光を受けることで、光のロスがなくなり実効感度が上げられます。

 仮に FOVEON のような三層構造のセンサーが、裏面から光を受ける方式に変わったとしても、単純な裏返しにはならないと思います。感色層が上から BGR の順は同じはずです。
 では、フィルムを裏返しにして露光したらどうなるのでしょう? この場合は、感色層は RGB の順に逆転します。どんな画になるなるんでしょうね。

 結論から言うと、赤感層だけで写真を撮ることになります。各感色層の間にはフィルター層があって、光は逆方向には透過しないからです。
 フィルムの裏面にはハレーション防止層があります。フィルムベースまで達した光が、反射して感光層に戻らないようにするためです。フィルムの裏が黒くなっているのがこれです。したがって、裏から露光する場合は、相当な光量を与えないと何も写らないことになります。

 そんな突飛もない実験を実際にやった人がいます。「酸化セリウム」の先生です。芸術学部の卒業制作だったと思います。パネル貼りされた作品は、オレンジ色の世界でした。
 完全に真っ赤でないのは、わずかに緑感層に光が漏れているからでしょう。三層構造のフィルムで、赤と緑の分離に紛れがあった証しです。

 主に赤感層だけで光を捉えるので、低感度のモノクロフィルムみたいに極めてシャープな画像でした。普段使っているカラーフィルムが、乳剤層に厚味があるため画像が甘くなっているのがよくわかります。

 三層構造の撮像センサーは、フィルム乳剤よりも薄いと言われています。それでも、モノクロの撮像センサーを使って、RGB 各色とグレースケールで4回露光する方式は、デジタル式で高画質を得る最善策として、当面プロユースでは残るでしょうね。
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