2011/08/31(水)フィルターのソフト効果

 専用レンズでなくても簡単にソフトフォーカス効果を楽しめるのが、フィルターワークです。口径さえ合わせれば、どのレンズでも使えるのと、価格が安いのが利点です。

 ソフトフィルターには、いろんな種類があります。それぞれ微妙にソフト効果が違います。目的に合ったものを選ぶのが大変でもあり、楽しみのひとつでもあります。
 何十年か前は、ソフトフィルターの主流は表面に凹凸をつけただけのものでした。平面性の悪いガラスみたいなもんです。ピントの定まらないボケた画像が特徴でした。

 平面ガラスに小さな凸レンズを散りばめたタイプが登場してからは、ソフトフィルターの主流はこちらに移ります。ミニ凸レンズの強さや散らすパターンを変えることで、ソフト効果の強弱が異なります。
 普及のきっかけは、ヤシカからコンタックス RTS が発売されたことでした。それまで高価だった輸入物のソフトフィルターが、アマチュアでも手の出せる価格で供給されるようになりました。

 CONTAX の「ソフター」は、ピントの芯があるのに滲みのある、独特のソフト効果が魅力でした。国内のフィルターメーカーもこちらのタイプにシフトしていきます。「ソフトフィルター」イコール「ピンボケ画像」というイメージが、次第に変わっていきました。
 現在では、スクエアタイプのものも一般向けに市販されています。昔はプロ機材の扱いでした。愛用しているジナーのは、かなり高かった記憶があります。

 ソフト効果のあるフィルターは、このほかにもいくつかあります。同心円状に切り傷をつけたデュートは、ハイライトだけ滲ませたいときに使います。
 同じ原理で、クロススクリーンにも滲み効果がありますが、画面内に光源があると、切り傷と同じスター状の光芒が出るのがデュートとの違いです。

2011/08/30(火)ソフトフォーカスのレンズ_2

 ベス単レンズを一眼レフボディーに装着して、ソフトフォーカスレンズとして使う方法は、前回紹介したように、30 年前の CAPA 創刊2号にも載っています。
 記事の中に、「ベリトなどもあるが・・」という一節がありました。ベリト?・・聞き慣れないレンズです。どうやらドイツ製の軟焦点レンズのようですが、詳しい情報は得られませんでした。クラシックカメラの部類に入るようです。

 当時、ソフトフォーカスのレンズと言えば、イマゴンが代表格でした。絞りに蓮根みたいな穴があいたレンズです。複数の穴が回折現象を起こし、独特の軟焦点画像が特徴です。
 普通の絞りが別についていて、ソフトフォーカスをコントロールするのにコツが要るレンズでした。当時、ローデンシュトックの国内代理店は PENTAX だった関係で、6x7 用にイマゴンアダプターが供給されていました。

 ベス単ブームにヒントを得たのか、PENTAX から球面収差を利用したソフトフォーカスレンズが発売されます。焦点距離は 85mm でした。ポートレート用ですね。
 絞りを開放付近で使えばソフトフォーカス、絞り込めば一般撮影に利用できます。ベス単と同じ原理です。

 ソフトフォーカスのレンズは、販売数が見込めないので割高です。球面収差を補正しきれていない、言ってみれば「欠陥」レンズなのに割高というのは、ちょっと抵抗があります。
 手っ取り早くソフトフォーカスレンズを手に入れたかったら、クローズアップレンズを流用する手があります。レンズの先端に付けるのではなく、クローズアップレンズだけで撮影します。焦点距離は度数によって変わります。

 一枚もののレンズだから球面収差が残っていて、ほどよいソフト効果が得られます。ただし、2枚合わせの AC クローズアップは不向きです。ソフトフォーカス効果は、安物のシングルレンズに限ります。

2011/08/29(月)ソフトフォーカスのレンズ

 CAPA 創刊2号には、「名機復活」と題して、ベス単のレンズを使ったソフトフォーカスの写真を紹介する記事が載っていました。
 ベス単とは、コダックのベスト判フィルムを使う、単玉レンズ付のカメラです。大正から昭和の初めころまで、普及機としてアマチュア写真家に愛用されました。

 単玉ということは、球面収差と色収差が補正されていない、撮影レンズとしてはかなり問題のある仕様です。絞り込んで撮らないと、ピンボケになってしまいます。
 この特性を逆手にとり、一眼レフに取り付けて、ソフトフォーカスレンズとして使う方法を紹介していました。

 ベス単といえば、地元の写真家・臼井薫氏を思い出します。ベス単レンズを使って、ソフトフォーカスの写真を専門に撮る「ベス単写真作家集団」を結成しました。
 発足はこの記事が掲載された翌年の 1982 年ですが、発案は臼井先生のほうが早かったと思います。先生がベス単を賞賛したことで、中古相場が1万円前後から2万円くらいに上がったそうです。CAPA によれば「2万円前後で手にはいる」とあるから、やはり先生のほうが先ですね。(そういえば、どこかの雑誌にも載って・・とか言ってたなぁ)

 一眼レフボディーにつけた理由は、ベスト判フィルムが手に入らないだけではありませんでした。シャッター速度が最高 1/50 秒では、絞り開放で高感度フィルムが使えないからです。シャッターは外して、レンズ部分だけを流用します。
 フランジバックとピント調整は、ヘリコイド接写リングが使える PENTAX が一番簡単です。記事ではスクリューマウントの SP-F を使って解説していました。

 臼井薫氏は、昨年暮れに 93 歳で逝去されました。いまごろは天国で、実弟の故・天地茂氏と仲よくやっていることでしょう。ご冥福をお祈りします。
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