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2009年05月20日の記事

2009/05/20(水)原板の著作権と肖像権

 報道写真家が遺した膨大なフィルムには、ときの首相や著名人が大勢写っています。著作権は、撮影した写真家にあるとしても、写真に写っている人の肖像権はどうなるのでしょうか?

 写真家が無断で撮影したのなら、たとえ著作権があっても被写体の人物に無断で公表することはできません。肖像権は、あくまで被写体の人物にあるからです。

 これはアマチュア写真家のフォトコンテストでも、ときどき問題になります。風景のなかの点景や群集のなかの一人であれば、とくに問題はないのですが、その人物が主要被写体であれば、当然本人の承諾が必要です。コンテストの主催者は、この問題がクリアされている前提で、写真の応募を受け付けるのが建前になっています。
 祭りやイベントを演じているひとは、本人が撮影拒否の意思表示をしない限り、肖像権を放棄していると考えてもよいでしょう。
 また、政治家や公務執行中の公務員など「公人」には、肖像権がないと解釈するのが通説です。

 報道写真の場合、被写体の多くは「公人」です。公人なら肖像権の問題はありません。
 著名な文化人(私人)でも、使用目的が制限されていない場合は、撮影を承諾した時点で肖像権を放棄したと見なすのが妥当でしょう。
 問題は、写真家が亡くなって、原板が第三者の手に渡った時点で、この暗黙の了解がどうなるかです。例え法的な義務はないとしても、使用に際しては、本人や遺族の同意を得るのが、トラブルを回避する最善策です。不名誉な扱いでなければ、「使わせていただきます」という申し入れだけでもしておくといいでしょう。

 著作権者の写真家はすでに亡くなっています。本来なら遺族がその権利を引き継ぐのが普通ですが、ゴミとして廃棄された時点で権利を放棄したと見なすこともできます。
 お金が絡むと、何かとトラブルが発生するのが世の常です。歴史的な資料や文化遺産を後世に残すためには、金銭的な問題をクリアにしておくことも大事です。
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