メッセージ

2009年05月24日の記事

2009/05/24(日)定点観測写真

 写真の本質的な価値は、その記録性にあります。何の変哲もない写真でも長い年月が経てば、記録としての価値が生まれます。私的なものから公のものへと変わるわけです。

 以前に撮影した風景を年月が経ってから、同じ位置で撮影することを定点観測式撮影法といいます。写真の記録性を最も活かした方法です。
 年月が経ってから・・といっても、3年や5年ではありません。時間の差が大きいほど景色の変化も大きいのが常だから、何十年という開きが必要です。自分ひとりの一生では、捉えきれないかもしれません。

 この定点観測写真をライフワークにした写真家がいます。三重県出身の富岡畦草(とみおかけいそう)です。
 知り合いに富岡畦草の甥っ子がいて、おじさんが帰郷したときには、いつも助手として手伝いをしていました。以前撮影した場所で、もう一度定点写真を撮るためです。
 同じ場所で撮ればいい・・というのではなく、まったく同じ画面にしなければならないので、大変な撮影だそうです。定点観測写真は、新旧2枚が揃わないと価値がありません。もっともシンプルな「組写真」です。

 何十年も経つと、前に撮影した場所にカメラをセットできないことがあります。当時空き地だったポジションに建物が建っていたり、橋や道路がなくなっていたりで、なかなか思うようにはいきません。
 崖崩れで撮影位置が空中・・ということもあるようです。近い位置から撮るしかないでしょうね。

 幕末から明治にかけて撮影された写真と同じ場所で、定点写真が撮れたら面白い結果になると思います。問題は、その場所が特定できるかどうかです。当時を知るひとは、すでにこの世にいないから、誰かに聞くわけにもいきません。
 時代が下がるほど写真が残されている可能性が高くなります。途中をつなぐ写真が運よく見つかれば、場所を特定することは可能だと思います。地道で根気のいる作業です。
OK キャンセル 確認 その他