2009/09/18(金)期限切れの印画紙

 輸入物の白黒印画紙は、銀塩市場の縮小によって、不安定な状況が続いています。製造メーカーが潰れてしまったり、需要の少ない品種が中止になったりして、入手できないことがあります。

 お気に入りの印画紙があったら、ある程度まとめ買いしておくくらいしか、防衛手段はありません。とはいっても、感光材料は有効期限があるので、ストックしておける量には限界があります。

 「酸化セリウム」の先生は、アグファのブロビラがお気に入りでした。さくらやだったかヨドバシだったか忘れましたが、期限切迫品が処分価格で売られていたのを見つけて、1箱購入したのがきっかけです。
 ブロビラ独特の仕上りが気に入って、すぐにまとめ買いしたそうです。期限切迫品をまとめ買い・・というのは、普通の人ならやらないと思います。

 この先生は、印画紙現像液に手を加えて、自分好みの仕上りにする方法を知っています。感度やコントラストの低下は、処方箋を変えることである程度対応できるから、有効期限が切れても使えるわけです。
 モノクロ印画紙の経年変化は、カラーに比べれば少ないし、黒のしまりをコントロールできれば、かなり長期にわたって保管することが可能です。

 大事にチビチビ使っていましたが、それでも とうとう在庫がなくなってしまい、残念がっていました。手に入れたのはずいぶん前だから、仕方ないですね。「いつまでもあると思うな、親とブロビラ」です。
 次の機会には、またまとめ買いをするつもりなのか、暗室に大きなワインセーラーが置いてありました。どこかで中古を見つけてきたようです。スタジオに置いてある冷蔵庫では、印画紙をストックする容量がないからでしょう。

 フィルム用の冷蔵庫は、店を畳んだカメラ屋から譲り受けたものです。FUJICROMEの看板がついた縦型のやつです。中には、期限切れのフィルムも保管されています。
 通常の撮影では、期限切れのフィルムを使うことはないそうです。カラーの場合は、感色層によって感度低下にバラつきが出るので、カラーバランスが崩れてしまうからです。

 期限切れのフィルムが活躍するのは、特殊な条件のときです。自然光に人工光源が混ざっているとか、特定の波長を強調(あるいは補正)したいときに使います。
 ひょっとすると使わずじまいになる可能性が大です。それでも、必要なときに期限切れのフィルムはすぐに入手できないので、なかなか捨てようとはしません。凡人にはゴミ同然でも、この先生にとっては宝物なんでしょうね。

2009/09/17(木)海外の白黒印画紙

 世界のトップメーカー Kodak は、すでにモノクロ印画紙の生産を打ち切っています。モノクロフィルムを供給しているのに、ずいぶん早い撤退でした。

 フィルムはコダックでも印画紙は他社・・というのが普通で、シェアが低かったからだと思います。「酸化セリウム」の先生も、「コダックの印画紙は使ってないから影響ない」とか言ってました。
 私もコダックの白黒印画紙は使ったことがありません。パナルアを試してみようと思いましたが、結局使わずじまいです。

 日本で馴染みの深い輸入印画紙は、イルフォードです。一時、会社再生法を申請するところまで業績が悪化しましたが、現在でも入手可能です。(イルフォード製品の扱いは、2008年7月16日のブログを参照)
 フィルターで諧調を調節できるマルチグレードタイプで、RCペーパーとバライタ紙が供給されています。1種類の印画紙で諧調が変えられるのは、号数別に揃える必要がないから便利です。

 もうひとつの名門、ドイツのアグファは、アグファ・ゲバルトから写真事業を引継いだアグファ・フォト社が会社を清算したため、2005年に一旦製造中止となりました。
 その後、ドイツのMACO社がアグファブランドの感光材料を復活させました。MACO(マコ)社は、モノクロ写真材料の老舗メーカーで、Rollei ブランドのフィルムは、ここが製造しているみたいです。

 アグファブランドを拝借したのではなく、旧アグファの工場で製造した原反をマコ社で裁断加工して供給しているとか・・・
 ヨーロッパには、こうしたモノクロ写真一筋の老舗メーカーが、何社もあります。日本では、フォルテ(ハンガリー)、ベルゲール(フランス)、フォマ(チェコ)などの製品が輸入されています。

 マコ社としては、アグファの灯を消すのは忍びなかったんでしょうね。
「マコ、甘えてばかりでごめんね」・・・青山和子の歌が聞こえてきそうです。(今回も古かった!) 

2009/09/16(水)銀塩材料の現状

 銀塩がいつまでもつか?なんて寂しい話をしていて、いま何が残っているか気になりました。FUJIFILMのサイトを覗いてみると・・・

 まだ結構 残ってますね。フィルムで最近中止になったのは、プロ用の NH と NL くらいです。「在庫終了次第、販売終了」となっています。
 NLは、ネガのタングステンタイプです。コマーシャルスタジオではなくて、主に写真館で使われていました。タングステン照明の写真館というのは、いまでは珍しい存在です。

 初代ベルビアは、今春発表の Velvia 50 に切り替えです。すでにブローニーとシートフィルムは切り替わり、135は「在庫がなくなり次第」となっています。
 コダクロームを駆逐したフィルムだけに、単純に製造中止とはいかなかったようです。いまでもリバーサル愛好家のなかには「ベルビア党」がいます。

 高コントラストチャートで 160本/mm、低コントラストで 80本/mmという解像力は、モノクロフィルムに近い数値です。(ネオパン100 ACROSは、それそぞれ 200本/mm・60本/mm)
 しかも色のりの濃いメリハリのある描写は、内式カプラーのリバーサルフィルムのなかでは特異な存在です。
 強いて欠点を挙げれば、ISO感度が低いことと、シャドー部にマゼンタがのることです。何の変哲もない被写体が「作品」ぽく見えてしまうのも「欠点」のひとつでしょうか?

 モノクロフィルムは、いまのところ健在です。ネオパンFが姿を消して以来、大きな変化はありません。印画紙の一部が終了になったくらいです。
 バライタ紙のレンブラントVFは、2号を残して3号は終了です。VGフィルターで諧調変更できるから、大きな影響はないと思います。

 コニカも三菱も白黒印画紙から撤退して、国内で残るのは FUJIFILMとORIENTALだけになりました。現在 「白黒印画紙」として売られている三菱の「月光」は、なんとインクジェット紙です。
 紛らわしい表現は、やめてもらいたいですね。
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