2011/06/30(木)フィルムとデジタルの照明

 お邪魔した写真スタジオでは、ドライプリンターを納入した業者の人と、何やらもめいている雰囲気でした。プリントの調子が良くないみたいです。

 社長が「ちょっとコレ見て」と、出力したばかりの六切サイズの写真を差し出しました。ひどいプリントです。コントラストも彩度もない眠い写真でした。
 業者の人に聞いたら、言われるままにコントラストと彩度をかなり下げたんだとか・・・

 フィルムで撮影していたライティングのままデジタルで撮影すると、急にコントラストが高くなったように見えます。ダイナミックレンジが狭いからです。場合によっては、ハイライトが白トビしてしまうこともあります。
 フィルムの撮影結果に近づけるために、コントラストを下げる・・それでもダメなら彩度を落とす・・とやっているうちに、ボロボロのプリントになってしまったみたいです。

 プリント作業を脇で見ていて、昇華型プリンターを制御するドライバソフトで補正するのは、あまり賢明な方法でないと直感しました。画像処理ソフトの Photoshop みたいなわけにはいかないようです。
 ライティング自体を変えない限り、事態の打開はできないと判断しました。デジタルの照明は、まず全体に光を回し、ベタベタの光線状態にしてから順次メリハリを付けていくのがセオリーです。

 使っていない 500Ws のモノブロックストロボがあったので、「これを天井にバウンスしてみたら・・」と提案しました。天井は白いクロス張りです。全体に光を回してフラットな照明で撮影し、プリンターは補正なしのノーマルで出力するよう進言しました。

 細かい点はともかく、見違えるほどの出来栄えです。納入業者の営業マンも技術者も、ライティングの知識はあまりないみたいで、「いやー助かりました」とお礼を言われてしまいました。(しっかりしてよ!)
 スタジオの社長は、「アンタちょうどいいところへ来たね」とニコニコ顔です。うまくいかないときは、心を鬼にしてプリンターを返品するつもりだったとか・・・

 八方うまく収まって、めでたしめでたしの結果となりました。でも、もし私が写真スタジオの経営者なら、このプリントシステムは採用しなかったと思います。ほかの出力形式と比べて利点が少ないような・・・

2011/06/29(水)310Wsのモノブロック

 写真館でよく見かけるモノブロックタイプのストロボで、昔から使われているのに COMET 55 があります。出力は 310Ws。フィルム用としては小光量です。
 なぜこんな中途半端な数字になったのでしょうか? 理由は当時の物品税です。

 消費税が導入される前は、カメラなどの「贅沢品」に掛けられる税金は物品税でした。ストロボは、300Ws まではアマチュア用になっていたようです。業務用途は一般的に非課税か低率でした。310Ws という数字は、プロ用の証しですね。

 業務用を謳っていただけに、いまだに現役で働いているスタジオがあります。光量が小さいので、主に証明写真用として使われています。フィルムのスタジオ撮影では力不足でしたが、デジタル時代になって利用価値が増しました。

 知り合いの写真スタジオでは、証明写真コーナーのほかに、メインスタジオのサブライトに使っています。いままでに相当な累計発光回数になると思います。予想以上に丈夫ですね。昔の業務用は、しっかり作られていたようです。
 そこはカラーメーターを持っていないので、色温度がどの程度落ちているかは、よくわからないみたいですが・・・

 久しぶりにふら~っと立寄ったら、納入業者の人がいて、何やら作業をしていました。フィルムからデジタルに切り替えるみたいです。
 いままでは別に経営していたプリントショップに、フィルム現像とプリントを任せていましたが、先月に閉店となりました。テナントとして入っていたスーパー自体が撤退してしまったからです。

 フィルム現像機と銀塩プリンターがなくなれば、フィルムで撮影する経営的なメリットはなくなります。デジタル化して、ドライ式のプリンターに切り替えるそうです。これも時代の流れですね。

2011/06/28(火)モノブロック型ストロボ

 プロがスタジオで使うストロボは、ジェネレーター(電源部)とヘッド(発光部)が別々になっているのが普通です。かつては 1200Ws から 2400Ws が主流でした。
 1つの電源部で2灯から4灯が使えます。均等配分と不均等配分があり、均等配分は2灯つなぐと各発光部の出力は半々になります。不均等配分は、2灯の出力に差をつけることができます。

 写真のデジタル化により、フォーマットサイズが小さくなったことで、レンズを絞り込む必要がなくなりました。被写界深度が深くなったからです。必要以上に絞ると、回折現象で画質低下を招きます。
 その結果、大光量のストロボが業務用途の必須条件ではなくなりました。小光量の電源部一体型でも十分実用できます。というか、いかに光量を絞れるかが、業務用ストロボに求められる機能のひとつに加わりました。

 いまでは 150~300Ws 程度のモノブロックタイプ(電源部一体型)がよく利用されています。普及品は、コンデンサー制御ではなく電圧制御で光量を調節しています。あまり光量を絞ると、色温度の低下をきたすので、なるべくフルパワーで使ったほうが発色が安定します。

 「酸化セリウム」の先生がレンタルで利用していた 10000Ws のジェネとヘッドは、いまではもう「伝説」ですね。
 貸したままになっている 300Ws のモノブロックは、そこそこ活躍しているみたいです。コンデンサー制御だから、光量を絞っても色温度は安定しているはずです。

 モノブロックタイプのいいところは、専用の延長ケーブルを必要としないことです。AC コードさえあれば、どこでもセットできます。
 それと、各発光部の光量を個別に調節できることです。1灯ごとの光量を細かく設定するのは、出写用のジェネでは無理です。大光量が必要なくなったいま、プロユースはモノブロックタイプに移行しているみたいです。
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