2011/03/04(金)手作りのシュミカセ

 セレストロンのほかにアメリカにはもう1社、シュミカセの大手メーカーがあります。ミードです。ここの鏡筒はディープブルーです。フォーク式の架台とセットで売られています。

 フォーク式は、極軸を合わせるのにコツが必要ですが、コンピューター制御で天体の自動導入をするのには有利です。そのぶん価格的には高価です。セレストロンが買収劇でゴタゴタしている間に、世界最大の望遠鏡メーカーに成長しました。

 工場内の映像を見たことがあります。望遠鏡が組立ラインを流れていました。規格量産品です。天体望遠鏡は、手作りが普通ですが・・・
 アメリカでは、そこそこの需要があるみたいです。アポロで月まで行ったお国柄です。光害だらけの狭い日本と違って、自宅の扉を出たら天然プラネタリウム・・というところが多いのかも?

 日本でもシュミカセを作っていた会社がありました。日本特殊光学(JSO)です。写真撮影用のシュミットカメラまで作っていました。
 先代の山田社長から話を聞いたことがあります。望遠鏡はすべて手作りで、生産ラインで流せるほどたくさん売れるものではないそうです。とくにここの製品は上級者向けでした。

 それでも口径 10cm のシュミカセ「スペース 10」は、一般愛好家に人気がありました。1000mm クラスの反射式望遠レンズくらいの大きさです。ピント調節は、初期型がミラーシフト、後期型はヘリコイド式でした。
 カメラ用の三脚に直接取り付けできたから、1000mm レンズとして使っていた人もいると思います。価格は 10 万円もしなかった記憶があります。

 JSO は、先代が亡くなってからは後を継ぐ人がなくて、製造をやめています。手作りでは量産品のミードに価格的に太刀打ちできないだろうから、やめて正解だったかもしれませんね。

2011/03/03(木)大口径のシュミカセ

 セレストロンの C8 が登場したときは、ビックリしました。8インチのシュミットカセグレン式天体望遠鏡です。(略して「シュミカセ」)
 反射式でも口径が 20cm くらいになると、並みの架台ではもちません。経緯台ならまだしも、赤道儀となるとプロ仕様が必要です。
 C8 は、市販のアマチュア用ドイツ式赤道儀に載せられていました。当時としては珍しいオレンジ色の鏡筒も印象的でした。

 シュミカセは、球面反射鏡の光を副鏡で折り返す構造で、鏡筒の長さがニュートン式の半分以下にできます。
 主鏡の球面収差を前面の補正板(レンズ)で打ち消す方式をとっていました。補正板の中央に副鏡を付け、主鏡の中央に穴をあけて、そこから結像を引き出します。
 カメラ用の反射式レンズと同じ構造です。C8 は 2032mm F10 だから、2000mm F16 反射式望遠レンズを太くしたくらいの大きさでした。

 鏡筒が短いから、アマチュア用赤道儀でも何とか載せられます。写真撮影には不向きですが、眼視での使用ならどうにか耐えられたようです。
 モーターショーでは、キャンピングカーの周辺アイテムとして、よく展示されていました。筒が短いので持ち運びには便利です。

 筒の長さは短くても焦点距離が長いのがシュミカセの特徴です。20cm クラスだと焦点距離は 2000mm ほどあります。高倍率が得やすいので、惑星や星雲などの小天体向きです。
 焦点調節は、主鏡を動かす方式が主流です。本体背面にノブがあって、それを回転させて主鏡を動かします。高倍率ということもあり、ノブを回すたびに星像がビョンビョン動くのが欠点でした。

 C8 は大口径とはいえ、まだ扱いやすい大きさで、自分好みに調整して愛用しているひとは多いみたいです。一時は真剣に購入を考えた時期がありました。
 問題はやはり架台でした。写真撮影をするとなると、並みの赤道儀では不足です。目で見るだけならドブソニアンのほうが手軽で安あがりです。

2011/03/02(水)屈折のタカハシ、反射の…

 名古屋市立科学館には、天文クラブがあります。ここの会員は、定価販売が建前のタカハシ望遠鏡が、割引価格で買えました。これが目的で、にわか会員になった人も数多くいたみたいです。会費を払ってもお釣りがきました。

 当時は、科学館の近くに営業所がありましたが、離れた場所に移転して、その後は閉鎖されました。ニッチで特殊な製品だから、地方営業所まで維持するのは、大変だったでしょうね。
 撤退前の営業所に一度だけおじゃましたことがあります。主力機がズラリと展示してありました。世間話をして、カタログと資料をいただきました。未だに買えずにいますが・・・

 天体写真を撮り始めた頃(中学時代)は、「屈折の高橋、反射の西村」というのが、愛好家の間では定評でした。高橋製作所は、いまでも天体望遠鏡を製造していますが、西村製作所のほうは?
 どっこい、まだ望遠鏡を製作しています。観測ドームも含めた、天体観測機材の専門メーカーとして、学校や公共施設に納入しています。

 反射式に限らず屈折式望遠鏡も製作していますが、太陽望遠鏡を除けば、やはり反射式がオハコのようです。口径 60cm 以上、1メートル級の反射式なら、やはり「反射の西村」のままですね。一般ユーザーとは無縁の官公庁御用達ですが・・・

 光学機器メーカーの多くは、吸収合併されるか廃業して姿を消しました。一部上場企業がカメラ事業から撤退したり、吸収合併されたりする時代です。天体観測機材をいまだに作り続けている企業は、ある意味で立派だと思います。

 シュミットカセグレン式望遠鏡で名を馳せた米セレストロンは、タスコに買収された後、タスコの事業停止によって倒産同然まで追込まれましたが、ほかの企業に買収され生産を続けています。
 C8(8 インチ・シュミカセ)ヒットの実績が、身を助けたみたいです。
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