2012/01/25(水)逃げるが勝ちの写真業界
早い話が、衰退傾向の銀塩写真からどうやってドロンするかで、明暗が分かれたとみるのが正解だと思います。「選択と集中」が悪い路線だったのではなく、衰退する分野を選択し、そこに集中させたのが運の尽きでした。
もし、デジタル分野を選択し、そこに集中していれば、もっと違った展開になっていたはずです。コダックは、その切り札を早々に手放してしまいました。
写真のデジタル化が本格化し始めたころは、カメラ事業から撤退するとか、銀塩材料の生産を打ち切るとかいう発表があるたびに、その企業の株価が上がったものです。写真業界人の憂いとは裏腹に、市場の反応は正直でした。
コニカは完全撤退、富士フィルムは銀塩部門の縮小と経営の多角化で凌ぐことになります。
コニカミノルタが、写真産業から完全撤退できたのは、シェアが低かったからだと思います。それまで後手を引いて辛酸を舐めていたのが、撤退するときには有利に働きます。収益性が低く、失うものが少ないから決断できたのでしょう。
一方、国内市場を牛耳っていた富士フイルムは、ソフトランディングを選択しました。バッサリ切るわけにはいかない事情があったからです。感材部門は、同社を支えるおいしい高収益事業でした。
製品を通した消費者とのつながりも意識していたはずです。単なる化学素材メーカーであれば、商売相手は企業だから、消費者の心証を考慮する必要はなかったでしょう。
結果として多角化したメーカーが、銀塩材料の供給を継続する形になりました。コダックがとった「選択と集中」路線では、残存者利益を握ることができなかったのは事実です。篭城戦法は負けと出ました。