2011/10/07(金)山のパノラマ写真

 もう何年も会っていませんが、知り合いに山岳写真を専門に撮っている写真家がいます。写真家というより登山家と言ったほうがいいかもしれません。登山家にしては、写真に精通しているタイプといったところでしょうか?
 でも、何冊か写真集を出しているから、やっぱり写真家ですかね。

 彼の作品の中に、西穂高から撮った 360°のパノラマ写真があります。西穂山荘で売っていました。彼のベースキャンプです。
 撮影するのに何日も泊り込んだそうです。山の天気は気まぐれだから、360°快晴でしかも遠くまで見通せる条件のいい日は一年に何日もないそうです。

 まだデジタルカメラの性能がいまほどよくなかった時代で、撮影は中判カメラを使っています。縦位置の原板を十数カットつないで、1枚のパノラマ写真に仕上げました。
 デジタル変換と画像処理にかなりの費用が掛かったと言います。最終的な仕上りは印刷物だから、画像処理は印刷屋の仕事です。自然な感じに仕上がっていました。

 山屋さんが買うお土産なので、山岳に見識のある写真家でないと、満足のいく画は得られません。水平に360°撮影するとしても、どこまでの範囲を写すかは、人それぞれです。観光土産を意識してか、上高地もちゃんと写っていました。西穂から上高地へ下りる人は結構います。

 彼の山岳写真の特徴は、あの山を撮るために隣の山の頂上に登って俯瞰で撮影する・・というものです。山の頂上から画面上部まで、空の比率は2割もないですね。高所から高い山を見下ろす構図です。
 本人は全然意識していない風ですが、これが非日常的な写真に仕上げる秘訣です。山は下から見上げるものじゃなかったんですね。

 デジタル時代のいまなら、気象条件さえ恵まれれば、もっと簡単にパノラマ写真ができると思います。ひょっとして彼もスイングパノラマ・・それはないでしょうね。

2011/10/06(木)パノラマ写真は基本が大切

 パノラマ撮影の回転軸をノーダルポイントに合わせる話をしていて、赤道儀の極軸合わせを連想しました。そんな苦労をしなくてもデジタルカメラなら、スイングパノラマ(SONY)もあれば、アストロトレーサー(PENTAX)もあります。
 もし、そうした機能がついたカメラを持っているなら、活用しないのはもったいないですね。

 不幸なことにどちらも手元にない場合は、セオリーどおりの方法で撮ることになります。パノラマ写真の場合は、パソコンソフトで自動的に合成するものがあります。カメラのオマケでついていることもあるようです。

 つなぎ目が自然に見えるパノラマ写真が欲しいなら、基本を忠実に守ったほうがキレイに仕上ります。大げさな装置を持ち歩くのは億劫だから、パノラマ写真を撮る機材の組み合わせを決めておくようお奨めします。
 使う機材がいつも同じであれば、ノーダルポイントは一定です。可動部分が少ないと、取付金具の構造が簡素化できます。それ専用の取付金具をカメラバッグの片隅に入れておけば、いつでも本格的なパノラマ写真が撮影できます。

 なるべく収差の少ないレンズを選びます。とくに歪曲収差と周辺光量低下が少ないレンズが向いています。一眼レフなら単焦点の標準レンズがいいでしょう。三脚に据えるし、ピントも露出もすべてマニュアルで固定だから、マウントアダプターを使うレンズでも構いません。
 周辺光量の低下は、絞りこんだほうが改善されます。F11 か F16 に固定して、シャッター速度も一定にします。各コマの露出を同じにしないと、つないだ跡がはっきりわかって見苦しくなるからです。

 専用ソフトで簡単に合成できるとはいえ、元のデータがきちんとしていないとよい結果は得られません。視差や歪みのないデータであれば、Photoshop など一般的な画像ソフトでも違和感のないパノラマ写真が得られます。
 「酸化セリウム」の先生じゃないけど、シャッターを押す前に解決すべきことは、すべてやっておくのが基本でしょうね。

2011/10/05(水)パノラマ撮影の光軸合わせ

 きちんとしたパノラマ写真を撮る場合は、カメラを縦位置にセットする話をしました。標準レンズで 360°を撮影するには、最低でも 14 カット必要です。実際には画面が重なるように撮るから、もう少し多いカット数になります。
 正確にパーンするために、角度目盛のついたパノラマヘッドを使います。しっかりしたものは、いいお値段です。

 縦位置にカメラをセットすると、三脚のセンターポールから光軸が外れます。これではパーンしたときに視差が生じます。レンズの光軸が絶えず三脚の中心にくるようにするには、可動式のL型のブラケットを使ってカメラの位置を調整します。雲台の縦位置機能は使わないので、パノラマヘッドの上にL型ブラケットを直接取り付けます。

 レンズがなければ、フィルムや撮像センサーの中央を回転軸の中心に据えれば、視差は出ないはずです。ところが実際にはレンズを通した光で撮影するので、それでは視差が生じます。標準レンズの場合は、レンズの前玉あたりに回転軸を持ってくるとズレが少ないようです。

 パララックス(視差)が出ない回転軸の位置をノーダルポイントと言います。見つけ方は、撮影位置から見て重なるように2本の棒を離して立て、カメラをパーンしたときにズレない位置を探します。
 2本の棒は、ある程度距離が離れていないと意味がないので、実際には、遠景の木や電柱と重なるように近い場所に棒を立てます。もし、画面の隅に持っていったときに棒が目標物からズレるようなら、ノーダルポイントから外れていることになります。

 ということは、L型ブラケットは、回転軸にレンズの光軸を合わせるだけでなく、光軸線状でカメラを前後に動かす機能が必要です。かなり複雑で大げさな装置になります。マンフロットなどから市販品が出ていますが、中判カメラ並みの重量で価格も高めです。
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