2010/08/30(月)フィルムの水素増感

 フィルムの感度を上げる方法は、いくつかあります。露光中のフィルムをマイナス数十度に冷却する方法は、天文台クラスの天体撮影では、昔から行なわれていました。露光中は、温度が低いほど感度が高くなります。

 露光後に増感現像するのが一番簡単な方法ですが、粒状性が悪くなるのと、カラーバランスが崩れたり、コントラストが高くなりすぎたりして、画質の劣化が悩みの種でした。
 現像処理で感度を上げるのではなく、前処理でフィルム自体の実効感度を上げる方法に、水素増感というのがあります。

 ホーミングガス(水素)に一定時間さらすと、実効感度が飛躍的に上がります。液体窒素で冷却するよりかは、簡単な方法です。
 簡単といっても、かなりの手間が掛かります。真空ポンプで密閉容器の空気を抜いてから、窒素ガスを注入し 45~50℃で数十時間、前処理をします。次に、水素と窒素の混合ガスを注入し、45~50℃で数十時間(3日以上)水素にさらします。

 天体写真では、モノクロフィルムは Kodak のテクニカルパンが定番でしたが、カラーフィルムでも有効な技法です。一般撮影に使うことも可能ですが・・・
 前処理とフォーミングガスにさらす時間が長いので、最低でも4日間ほど掛かります。処理後のフィルムは、窒素ガスで満たした密閉容器に入れ、冷凍保存が原則です。ここまで面倒だと、一般撮影のために水素増感する人は、まずいないでしょう。

 水素増感をするための機材は、天体観測機材を扱っている専門店で入手可能でした。水素増感処理したフィルムを売っている店もありましたが、最近はどちらも目にしなくなりました。
 デジタル化も一因ですが、テクニカルパンが製造中止になったからだと思います。
OK キャンセル 確認 その他