2010/05/04(火)人物写真と年齢

 写真は人物に始まり人物に終わる・・と言われます。最初は家族の写真から始まり、途中で風景や事物に被写体が変わっても、最後は人物写真に戻ってくるという例えです。

 人物写真というのは、奥が深いですね。相手が誰でも撮れるとは限りません。なにせ被写体が生身の人間だから、よい表情を引き出すためには、撮影者との関係が影響します。
 被写体が年配者や社会的地位のある人だと、撮影者もそこそこのキャリアがないと気後れしてしまいます。「この若造が・・」と思われては、よい結果は無理ですね。

 「酸化セリウム」の先生は、人物写真はオハコです。相手が例え誰であろうと、臆することはないでしょう。
 現役時代には、流通の仕事はその辺のスタジオを使っている企業でも、俳優を使ったここ一番の撮影は、この先生に依頼していました。役所さんやフォークルの加藤和彦氏のロケ原板を見せてもらったことがあります。

 苦労したのはラクダだそうです。銀行のポスターで、著名な大学教授が探検隊スタイルでラクダに乗るシーンです。
 気にいらないと、言うことを聞かなかったり、餌を吐き散らしたりして暴れます。こいつは甘いとなめられては、撮影が思うように進みません。

 ラクダに話しても言葉が通じないので、一芝居うってアシスタントを大声で怒鳴りつけます。驚いたラクダは、それからは大人しくなったとか・・・
 ラクダ心に、こいつに逆らったらヤバイと思ったんでしょうね。動物も人間と同じです。

2010/05/03(月)一生残る写真とは?

 人生で一番輝いているときの写真を撮りたい・・というのが「酸化セリウム」の先生の想いです。葬式のときには、ありきたりの遺影写真ではなく、そういう写真を飾るのが理想だと言います。
 だからといって、「葬式写真」という言い方を嫌います。要するに、一生に残る写真を手にするということですね。

 芸能人は、撮影された写真の数が膨大だから、1枚や2枚はコレッ!というカットがあります。ドリフターズの いかりや長介の葬儀がそうでした。その人柄を偲ばせる写真が、参列者の心に響きます。

 それに比べると、一般人の遺影写真は平凡です。慌てて探し出した結婚式の集合写真から顔首だけ切り抜いて・・というのが普通です。
 死期が近い年寄りの場合は、事前に用意しておくことがあります。まだ元気だったころの写真が選ばれるようです。例え10年以上前の写真でも、葬式に参列する人の印象に残っているころの姿がいいように思います。

 自分を象徴するような写真と言われると、なかなか見つからないのが普通です。写真スタジオで撮影された写真は、家族と同伴で写っているから価値があるわけで、顔首だけ切り抜いてもサマになりません。
 自分の独りのためにスタジオ撮影することは、まずないのが実状です。写真好きの人ほど、自分が写った写真が少ないみたいですね。

 「酸化セリウム」の先生のプライベートスタジオができたときに、関係した建築家や職人さんのポートレートを先生自ら撮りました。お礼のしるしです。
 「お前もそこに座れ」というので、ついでに撮ってもらいました。少しは協力したことだし・・・
 いま死んだら、遺影写真はそれですね。モノクロですが・・・

2010/05/02(日)若手写真家のデビュー

 「酸化セリウム」の先生のところに、珍しくアマチュア向けのカメラ雑誌が置いてありました。奥さんに聞いたら、「うちの息子が載っている」と言います。
 写真コンテストで入賞でもしたのかと見てみると、なんと!プロ作家の特集コーナーで紹介されていました。

 デジタルプリントの特集です。写真のプリントといえば、この人は外せません。大御所の森山大道です。デジタル時代でも第一線で活躍しています。若いころはいろいろ批判の声も聞かれましたが、やはり本物でしたね。
 この人と同じ特集で紹介されるようになるとは、御曹司も大したもんです。

 掲載されていたのは、出力前に紙を下地加工した写真です。初めのころはスプレーで吹き付けていたようですが、いまはニカワを塗ってから金粉をまぶしています。
 後加工ではなく、前加工することで、ハイライトに金粉が浮き出ます。デジタル出力とはいえ、ずいぶん手間の掛かる技法です。手作りのアナログっぽさがミソですね。

 プリント技法がユニークであるだけでなく、写真自体も評価されています。すでにビッグタイトルを2つ獲得したとか・・・
 プロデビューしたものの、すぐに写真でメシが食えるわけではありません。写真作家として成功するには田んぼの3枚は売らないと・・と言われる世界です。(実家は大地主だったらいいか・・)

 母親は親バカから、息子が写真で身を立てれるようにしてやりたいと言います。メシを食うための写真と、作家としての写真は、相容れないものがあります。
 若手作家に撮影を依頼するようなジャンルに絞らないといけないでしょうね。若い人相手のウェディングアルバムなんかはいいかもしれません。勉強になることだし・・・
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